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神の悪戯に翻弄される冒険者  作者: 佐神大地
第6章
301/330

301 民事裁判

 ラインハットではないが、非常に面倒なことになった。リンカーンで王国初の宗教審議が行われることになった。クリス国王に報告したところ全て任せる、という返事が返ってきたからだ。

 ラインハットはいつもの仕返しとばかりに俺を冷かしている。


 信仰に関する法律では宗教についてはかなりの自由が認められていた。ただ、明らかに犯罪職の強い宗教などについては規制するとされている。

 ただ、具体的にどのような宗教がダメかという基準やそれを判定する手順などは決められていなかった。そのうえで、クリス国王は「全て任せる」と言ったのだ。つまり、「俺が決めろ」ということだ。


 まずは規制するラインだ。

 1 教義に反社会的なものがあること

 2 犯罪を犯した集団

 3 その他、明らかに問題があると認められた時


 こんなところだろうか。1は当然だ。2は宗教の名を借りた犯罪集団のができるのを防ぐためだ。3は何か問題が起こった時のための保険だ。もっとも、3のせいで揉める可能性もあるのだが・・・。

 次にそれを見極める手順だが、国も調査をする必要があるかもしれないが、訴えがあるたびに国が調査をしているとたまったものではない。

 今回のように、個人が訴えたのだから、そいつに証明させればいいか。日本における民事裁判みたいなものだ。残念ながら、この世界ではそのようなものはないそうだ。

 俺は、クラリス教の神官に大地母神の教団が邪教である証拠を提示するように指示した。期日は1週間後とし、その時、公の場で審議を行うとした。そして、大地母神の教団にも同じ旨を伝えた。こうして、この世界で初めての民事裁判が開かれることになった。



「いやー、聞いたよ。千波矢君、裁判を開くんだって。よくそんなに働きたくなるよね。僕なら絶対にしないよ。」


「なんでだ?」


「だって、この問題は両社に話を聞いて、千波矢君が判断すれば終わりだった問題だよ。わざわざ民事裁判なんて面倒なことをする必要ないじゃん」


「それだと公平性が保てないだろう」


「あのね。この世界・・・いや、この国か、は王制なんだよ。それが普通なんだよ。それに王国初の民事裁判でしょう。いやー、信仰に関する法律だけでなく民事裁判の仕組みまで作るなんて、僕なら絶対しないよ」


 ラインハットに言われて、俺は気づいた。自分の愚かさに。

 そうだった。民事裁判を開くなら、民事裁判の仕組みを作らないといけないんだ。

 しかも面倒だからと、開催を1週間後としてしまった。つまり、1週間以内に仕組みを作らないといけない。

 それから1週間、俺は寝る間も惜しんで働かなければならなかった。もちろん、ラインハットは手伝ってくれなかった。



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