30 毒の瘴気
毒の瘴気は黒い核から漏れ出ている。この瘴気は強力で触れたものを一瞬のうちに殺した。現在は、周りの神官が張った結界により止められているが、結界が破られるのは時間の問題だった。
「なあ、D。この毒の瘴気について教えてくれ。」
「・・・。触れたものに猛毒のステータス異常を与え、命を奪うガスです。非常に強力な毒です。」
「対処法は?」
「・・・発生源の破壊です。このガスは魔法を拡散させますので、物理的な攻撃をお勧めします。」
ということは、黒い核を叩き壊すだけか。問題はどうやって核に近づくかだが、俺のスキル【ステータス変化無効】なら問題なくないか。
結界を見るとカタカタ震えている。今にも崩壊しようとしているように見える。考えている時間はない。俺は決意した。
「リリアさん、アンを捕まえておいてもらっていいですか。」
俺はリリアさんにアンを頼む。アンなら俺の後をついてきそうだ。俺はカバンから棍棒を取り出し、核に向かって走り出す。
「おい、お嬢さん。近づいちゃだめだ。」
俺はにっこり微笑むと無視して結界の中に入っていく。俺を追おうとしたアンをリリアさんが抑え込む。リリアさん、ナイスです。
予想通りだ。中に入っても全く問題ない。ラインハットが状態異常だけならランクSのスキルといっていたもんな。毒の瘴気は俺には無害だった。俺は核の前に立つと思いっきり棍棒を振り下ろした。黒い核は見事に砕け散った。
「すぐに浄化しろ。」
神官の浄化魔法により毒の瘴気はあっという間に浄化される。俺は浄化されるのを大人しく待つ。
「よし、もういいぞ。」という言葉が聞こえるとすぐにアンが飛び込んできた。
「大丈夫ですか。」
アンは俺に抱き着くと泣きながら聞いてきた。
「大丈夫。俺にはスキルがあるから状態異常にはならないんだ。」
「それならそうと言ってから行動してくださいよ。心配したんですよ。」
「いや、時間がなかったし。」
おそらく事前に行っても、アンは引き留めていただろう。
アンは俺の胸で泣きじゃくっている。そして俺は呆気にとられた神官たちに周りを囲まれている。これは俺の正体がバレるのは時間の問題だな。観念するか。
俺達に二人の人物が近づいてきた。大神官とリリアさんだ。二人が俺たちに話しかけようとした時、天から光が差してきて、俺たちを包み込んだ。そして、周囲は尊厳な空気に支配された。




