27 集会始まる
「そろそろ集会の開始時刻ですね。」
アンはそう言うと席を立つ。もうそんな時間か。
集会は教会の大聖堂で行われるそうだ。この大聖堂は3千人を収容できるそうだ。この王都の人口が約10万人らしいので、かなりの大きさだ。
大聖堂に着くとかなりの人々が詰め掛けていた。やはりほかの人も気になっていたようだ。照明替わりなのだろうか、いたるところにかがり火が設置されている。これは危なくないか?
しばらくすると、集会が始まった。この集会の発起人である神官長の一人が祭壇の前に立つ。
「ゼロス神官長」
アンがポツリと呟く。
「知っている人?」
「はい、私を追放した人です。」
アンは消え入るような声で答える。
「皆様方。今回お集りいただいたのは今後の教会の方針について話し合いたいからです。現在、教会では神の神託を得ることを目的に活動しておりますが、このところ神は我々に神託を与えてくださいません。これはどういう意味なのでしょうか。私は、我々ヒトは神の手を離れ、独り立ちする時が来たからだ、と考えております。皆様はどうお考えでしょうか。」
いきなり教会の方針を否定してきた。周囲に動揺が走る。このようなやり方で上手くいくはずがない。続いて、賛成意見の神官が祭壇にあがる。同じようなことを言っている。次も賛成意見の神官だ。
ちょっと様子がおかしくなってきている。普通、賛成と反対を交互に意見を言わせるはずだが、今のところ賛成ばかりだ。しかも周りの民衆の反応もおかしい。先ほどまでは動揺していたが、今はほとんどの人が賛成にまわっている。アンを見ると目が虚ろになっている。何かがおかしい。
「アン、大丈夫?」
声を掛けるが反応がない。・・・仕方ない。俺はアンの頬を軽くたたく。
「痛い、なにするんですか。」
アンが叫ぶ。アンは正気にもどったようだ。周りの人は全く気にしない。やはりあきらかに異常だ。アンも周りの状況に気づいたようだ。
「千波矢さん。どうなってるんですか?」
アンは動揺しているようだ。俺を名前で呼んでるぞ。
俺はふと甘ったるい匂いに気づく。発生源は露骨にたくさんあるかがり火だ。もしかして。
「なあ、D。この匂いはなんの匂いだ。」
「・・・サモン草を燃やした匂いです。」
「サモン草?」
「・・・サモン草は幻惑作用のある草です。服用もしくはもやして煙を吸わせることで相手を幻惑状態にすることができます。この国では危険薬物に分類され、使用を禁止されています。対処方は万能薬、もしくは状態回復魔法です。」
なるほど、敵が書いたシナリオが見えてきた。




