26 姉妹と迷子の少年
集会の開始にはまだ時間があるが、俺は今、アンと手をつないで街を歩いている。アン曰く、「これは練習」だそうだ。俺は、恥ずかしさのあまり気が狂いそうだ。
「お姉ちゃん、そこのお店でクレープ食べよ。」
アンが話しかけてくる。とれも嬉しそうだ。俺の返事も聞かず、グイグイ引っ張って店に入る。仕方ない。ここで休憩するか。
俺はカバンからお金を取り出すと、クレープを注文する。現在、二人の荷物はすべて俺のカバンの中に入っている。ラインハットから貰った例の魔法のカバンだ。最悪、逃亡生活になる可能性もある。宿に荷物を置いておくわけにはいかない。
「おいしいね。お姉ちゃん」
「そうね。」
アンはおいしそうにクレープを食べている。間違いない。これは練習じゃないな。たんに楽しんでいるだけだ。
「お姉ちゃん。ごめんね。昔、こういうのに憧れてたんだ。」
アンが小声で謝ってくる。そういわれると怒ることもできない。
ふと店の入り口の方を見ると、小さな少年がキョロキョロと周りを見ていた。まわりに保護者らしき人はいない。迷子だろうか?
アンも気づいたようだ。席を立つと少年に近づく。俺も後に続く。
「ボク、どうしたの?迷子?」
アンは優しい声で尋ねる。
「違うよ。ちょっと護衛とはぐれただけだよ。」
それを迷子というんだが・・・。それにしても、護衛か。いいところの坊ちゃんなんだろう。
「それじゃ、一緒に護衛さんを探してあげようか?」
「必要ない。ここで待っていれば、すぐに向こうが見つけるはずだ。」
「それじゃ、クレープでも食べながら待ってようか。お姉ちゃん、一緒に待ってあげるよ。」
「・・・お金を持ってない。」
小さな声で少年が答える。
「いいわよ。奢ってあげるわ。」
俺はそういうとクレープを1つ買いに行く。
「施しは受けない。・・・護衛が来たら、金は返す。」
しばらくすると、少年の護衛が血相を変えてやってきた。
「申し訳ありません。ご無事ですか。」
護衛は少年に向かって頭を下げる。
「いい。気にするな。それより、この二人にクレープ代を払ってくれ。」
護衛は俺とアンに何度も頭を下げるとクレープ代といってお金を渡す。ちょっと多い気がする。断ろうとしたが、「是非に」と押し付けられた。
「お姉ちゃんたちありがとう。」
少年はそう言うと護衛とともに去っていった。
「お姉ちゃんたちか。」
俺はポツリと呟いた。




