25 そう、これは変装だ
「ちょっと出かけてきます。待っていてくださいね。」
アンはそういうと外出してしまう。変装の道具を買いに行くのだろうか。偉く張り切っているな。俺は何もすることがなかった。困ったな。何か趣味でもつくろうかな・・・。
しばらくすると、アンは大きな袋を抱えて帰って来た。
「お待たせしました。変装用の道具を持ってきました。」
そういうと、アンは紙袋から物を取り出す。
ロングの黒髪のカツラ。
女性もののワンピース。
化粧道具。
これはアン用だろうか。
「千波矢さん、使い方はわかりますか?」
「えっ?これ、俺用なの?」
「はい、そうですよ。」
「もしかして、変装じゃなくて女装しろと・・・。」
「貸衣装屋の友達から借りてきたんです。千波矢さんの特徴を伝えたら、女性ものが似合う、という結論に達して。」
都合のいい友達がいたもんだ。
「で、どう伝えたんだ。」
「えっと、黒髪の短。色が白い。ほっそりした体型。身長は私より15センチほど高い。
ですかね。」
うん。特徴を捉えているな。良く観察している。って、感心してどうする。
「千波矢さんの声は少し高いのできっと大丈夫です。ギルドに行ったらモテモテですよ。」
いや、それは勘弁願いたい。あんな暑苦しい男どもに言い寄られたくない。
「ちなみに、私のカツラも黒髪にしました。姉妹ってことでお願いします。さあ、時間がないです。着替えてください。」
「・・・・・・。
渋々着替える。人生初のワンピース、いやスカートだ。スースーする。とても変な感じだ。
「わあ、綺麗ですよ。お姉ちゃん。」
「誰がお姉ちゃんだ。」
アンの方を見るとカツラを装着し、いつもと違う服を着ている。ちょっと新鮮な感じだ。つい、見惚れてしまう。
「どうしたんですか?それより、口調、気を付けてください。後、私たちは姉妹の設定です。」
「はいはい、わかりました。アンちゃん。」
「そうですよ。お姉ちゃん。」
そういうと、アンは嬉しそうに俺の方をジロジロ見る。
「何か顔についてます?」
「いえ、小さい時にお姉ちゃんがほしかったので、夢が叶ったかな、と」
そうですか。それは良かったですね。
「後は化粧ですね。」
ソウダッタ。マダソンナモノガノコッテイタ。
30分後、化粧が終わり変装は完了した。そう、これは変装だ。断じて女装ではない。