22 戦闘訓練
朝、目が覚める。隣のベットにはアンが寝ている。俺は今日もよく眠れなかった。「いい加減なれろよ」とツッコまれそうだが今のところ慣れる気配はない。
「千波矢さん、おはようございます。昨夜は暗殺者は来なかったですね。良かったです。」
アンは眠たそうに眼を擦りながら起き上がる。どうやら今日はアンも寝不足の様だ。
それにしても、アンはどうしてこう極端な思考なんだろう。なぜ、暗殺者?
「そうだな。それで今日からどうする?」
「千波矢さんの安全を考えると、王都を離れるのが一番いいと思うんですが、私、リリアさんが心配なんです。できたら、手助けしてあげたいんです。」
アンは複雑な表情を浮かべる。一晩考えて、答えがでなかったんだろう。
「それなら、答えは簡単だ。王都に残ろう。」
「いいんですか?」
「リリアさんの手助けをしたいんだろ。」
「でも、千波矢さんに危険が。」
「どこにいても危険はあるよ。それより、これからどうするかを考えよう。」
「ありがとうございます。」
アンは頻りに感謝をしてきた。
俺は武器屋で棍棒を購入するとギルドに来ていた。ギルドでは新人のための戦闘訓練も行ってくれる。俺はそれを受ける予定だ。
アンは別行動で街にいる教会と関わりのある人に話を聞きに行ってもらっている。情報収取だ。
最初は「俺が危ない」と渋っていたが、「明るいうちは大丈夫」と説得すると、渋々納得した。
「日が暮れる前にギルドに迎えに行きますね。」
アンは別れ際にそう言っていた。
「おはようございます。千波矢さん。あれ、今日は一人なんですね。」
受付嬢は残念そうにしている。まだ、アンを狙っているのだろうか。昨日きっぱり断らていたのに。
「ええ、今日は戦闘訓練を受けたくて。急なんですが、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。武器は・・・棍棒に代えたんですね。」
「ええ、流石に木の棒じゃまずいかと思いまして。」
某有名RPGなら最弱の武器「ひのきのぼう」からその次に弱い「こんぼう」に代わっただけなのだが、現実では棍棒はかなり有用な武器だ。
「それでは、訓練場にどうぞ。」
「おう、お前か。確か千波矢だったな。」
そこにいたのは実技試験の担当官だった。確か名前はヴァンスだ。
「ヴァンスさんが指導してくれるんですか?」
「ああ、それが俺の仕事だからな。ところで、武器を棍棒に代えたんだって。また、マイナーな武器に代えたな。やっぱりスキルか。」
「俺のスキルだと打撃系の武器は相性かいいんですよ。」
「そうか。で、訓練の目的は対オオトカゲでいいのか?」
・・・昨日のことは広く知れ渡っているようだ。いつか払しょくしなくては。
「いえ、今回は対人戦の訓練がしたいんです。急いでいるので2,3日でお願いします」
「対人戦?しかも2,3日か。・・・余計な詮索はしないでおこう。よし。かかってこい」
俺は棍棒を握りしめるとヴァンスさんに立ち向かっていった。




