200 法螺吹き
「魔王の情報ですか?そうですね。彼女自体はそれほど強くなかったですね。少々、闇の魔法が使える程度です。厄介なのは周りにいた魔人たちです。特に四天王と呼ばれた魔人は強かったです。そのうちの3体の魔人は前回討伐できませんでしたので、いまだに生きている可能性があります。こんなところでよろしいでしょうか?」
シルビアさんのことを知らない人は全員呆れたような顔で見ている。「この女、何を言ってるんだ」というかんじだ。結構、気まずい雰囲気だ。しかし、シルビアさんは我関せずで澄まして座っている。この状況に業を煮やしたのか一人の若い将軍がシルビアさんに食って掛かった。
「女、法螺を吹くのも大概にしろ。」
その瞬間、凄まじい殺気がその将軍を襲った。彼は耐えることができず、気絶してその場に崩れ落ちてしまう。
「失礼しました。それにしても、最近の将兵はだらしないみたいですね。この程度の殺気にも耐えられないんですね。」
シルビアさんの言葉に気絶した将軍の隣にいた将軍が剣に手を掛ける。一触即発の状態だ。王子も止めようとしているのだが、シルビアさんの正体をばらしてよいのか思案しているようだ。たぶん、言っても信じてもらえないだろうしな。
「私は1000年前、勇者アベルとともに魔王を討ち取ったものの一人です。魔王について詳しいのは当然です。」
なんとシルビアさんは自分で正体をばらしてしまう。さらにヤジが飛んでくる。更に法螺を吹いたと思われたようだ。クリス王子が頭を抱えている。そうだよな。
「静まれ。彼女の言っていることは本当だ。私が保証する。」
クリス王子の言葉にほとんどの者は納得したが、一部の者は納得しなかった。
「しかし殿下。間違った情報で行動するのは問題があります。我々としては彼女の素性を調べ上げてからでないと信じられません。」
「私の言葉が信じられんというのか?」
王子の言葉に一瞬怯むが、すぐに反論してきた。
「魔王に関する資料は一切残っていないというのが通説です。いきなり言われても、疑うのは当たり前でしょう。」
確かに最もな意見だった。王子も困惑している。
「私の素性を確認したいなら、エクセスに聞けばいいのではないですか?」
シルビアさんの言葉は至極まっとうなものだった。同じ1000年生きていて貴族に叙されているフミヤを保証人にするというのは。ただし、フミヤが嫌われていなければだ。この言葉は逆に彼女の疑いを濃いものにしてしまった。
「エクセス?ああ、北のエルフのことか。1000年生きているとか訳の分からないことを言っている奴だな。そんな法螺吹きの名がでてくるとは余計怪しいですぞ。」
今まで黙っていた、文官までも騒ぎ出した。このままでは対策会議に支障がでる、と思われた時、一人の人物によってこの騒ぎは収束することになった。
「静まれ。彼女は嘘を言っていない。私の【直感】信じろ。」
そうランクAのスキル【直感】を持つフィル王子だった。




