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神の悪戯に翻弄される冒険者  作者: 佐神大地
第1章
20/330

20 心をへし折られる

「なあ、D(ディー)。オオトカゲについて教えてくれ。」


「・・・オオトカゲは全長1メートルぐらいのトカゲです。防御力があり、特に打撃に対する耐性が高いです。攻撃力は低く、攻撃方法は噛みつきがメインです。」


 打撃耐性があるのか。俺の攻撃は通じるのだろうか。


「大丈夫ですよ。オオトカゲなら討伐経験があります。あれなら、私一人でも楽勝ですよ。」


 アンは頼もしいことを言っていたが、男の俺としては女性に戦いを任せて、自分は戦わないというのは複雑な気分だ。武器を買っておけば良かった。・・・後悔先に立たず、というやつか。

 アンはとても張り切っている。俺はだんだん不安になってきた。


 砂地に着くとすぐにオオトカゲを発見した。俺は離れていた一匹に棒を力いっぱい振り下ろす。手にすごい衝撃が走る。オオトカゲは怒って俺いに向かってくる。「ヤバイ」と思った瞬間、アンが大剣を振り下ろし、一撃で仕留める。・・・オオトカゲ討伐に俺は必要ないな。


 話し合いの結果、オオトカゲ討伐はアンが担当し、俺は薬草採取をすることになった。D(ディー)によると、この辺りにもライム草やリール草は生えているそうだ。俺としては不本意だったが、俺はオオトカゲ討伐には全く役に立たないのでしかたない。


 2時間後、俺たちは一時休憩して昼食を食べていた。アンは美味しそうにサンドイッチを食べている。


「千波矢さん。このサンドイッチ美味しいですね。」


「そうだな。宿屋の主人に作ってもらって良かったな。」


「そうですね。」


「ところで、だいぶオオトカゲを狩ったよね。疲れてない?」


「いえ、全然大丈夫ですよ。まだたったの12匹ですよ。まだまだいけますよ。」


 もう12匹!5匹で1500ゴールドだから、すでに3000ゴールドか。昨日の俺を超えている。頼む。どうかもうやめてくれ。

 俺の祈りは空しく、昼食後にオオトカゲの乱獲は続いた。アンがさらに8匹のオオトカゲを倒してから、街に戻ることになった。



ギルドでギルドカードと採取した薬草を提出する。それを見た受付嬢が興奮する。


「大量ですね。オオトカゲ20匹ですか。ついでにライム草が30本とリール草20本ですね。」


 薬草はついでになっている。俺、がんばったんだが・・・。


「頑張りました。」


 アンは自信満々に言う。


「そうですか。アンさんは何匹倒したんですか。」


「えっ。20匹全部私ですよ。」


 さも当然のようにアンは言う。受付嬢は驚いて俺の方を向く。俺は苦笑いを浮かべながら頷く。

 受付嬢がダメ男を見るような目で俺を見ている気がする。


「アンさん、すごいですね。で、千波矢さんが薬草採取ですか。」


「はい」


 俺は力なく答える。後ろから「それでも男か。」「もっと頑張れよ。だらしないぞ」「ヒモか。」など冷やかしの声が聞こえる。ヒモは言い過ぎだろ。

アンが後ろを振り向くとその声は一斉に止んだ。


「千波矢さん。気にしないでください。危険なときは私が守りますから。」


 アンは使命感に燃えてそう言ってくれるが、その言葉は俺の心をへし折った。


 どうせ俺は・・・弱いですよ。



「それでは精算しますね。全部で7000ゴールドですね。」


 受付嬢は慌てて精算を済ませる。俺が負のオーラを出しまくっているのに気づいたのだろう。俺を哀れみの目で見ている。

 どうか俺をそんな目で見ないでくれ。



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