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神の悪戯に翻弄される冒険者  作者: 佐神大地
第4章
199/330

199 旧魔王の動向

「えっとね。僕が監視していたのは先ほど話題に出ていた新魔王じゃなくて旧魔王の方だけど、師匠が半年ほど前に復活したのを探知して、修業のついでに監視しろってこの国に派遣されたんだよ。」


 そういえば、以前考えたラインハットの設定で修業中とかあったな。俺は忘れてたが、ラインハットは覚えていたみたいだ。周りの人は未だに信じられない様子でラインハットを見ている。

 突然、ラインハットは何かに気づいたのか、窓に近づくと窓を開けた。「ピュイー」鋭い鳴き声と共に白い鷹が上空から飛来してラインハットの左腕にとまった。そしてもうひと一声鳴くとラインハットから肉片をひとかけら貰い、飛び立っていってしまった。


「ラインハット殿。今の鷹は一体?」


 リンドットが尋ねてくる。


「ん?今のは僕の使い魔だよ。新たな情報を持ってきてくれたんだ。」


 その言葉にリンドットは絶句する。


「そんな、この城には結界が敷かれているのに・・・」


「結界?ああ、ごめん。それなら、さっきの子が突き破っちゃった。後で治しておくよ。」


 ラインハットは事も無げにそう言っている。リンドットからすると、使い魔ごときに結界を破られたことに驚いていたんだろうが、ラインハットは分っていなかった。周りで話を聞いている魔術師や将軍たちの表情が歪む。王都の防衛を根本から考え直さねばならないのだろう。


「結界の話は後だ。ラインハット、続きを頼む。」


 クリス王子はラインハットに魔王の情報を言うように急かした。


「ああ、そうだね。最初の報告では『山の中でバカンスを楽しむようにくつろいでた魔王が急に旅の準備を始めた』だったんだけど、今の報告では『魔王は王国の西の方に飛び立った。見失ったから、現在探索中。』ってなっちゃった。」


 ラインハットは相変わらず、いつも通りである。クリス王子が文句を言わないせいもあるが、本来なら不敬罪で捕まってもおかしくない口の利き方である。まあ、ここで捕らえようとしてもラインハットなら事も無げに逃げだせるだろうが。


「すみませんが、魔王について何か情報とかはないのでしょうか。特徴とかどんな魔法を使っていたとか。」


 一人の若い将校が恐る恐るラインハットに尋ねた。ラインハットの腕がちょっと動いただけで「ひぃー」と小さな悲鳴を上げている。よほど、ラインハットに恐怖心を抱いているのだろう。


「そういうことは僕よりシルビアさんの方がくわしいはずなんだけど。」


 ラインハットはそう言ってシルビアの方をみる。皆の視線がシルビアに集まる。シルビアのことは王子からギルの剣の師匠として公表されていた。もちろん、2年前のアンデッド島討伐に行ったメンバーなら知っているかもしれないが情報統制はされているようだ。ここに集まったほとんどの人には謎の人物である。唯一分かっていることは王国最強の騎士を圧倒した剣の実力だけだろう。



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