196 魔王がいなくなった
「千波矢君、大変だよ。」
ラインハットは血相を変えて走ってきた。ラインハットは用件を言おうとしたが、リオンさんの顔を見て口を噤む。どうやら、他の人に聞かれたらまずい内容らしい。リオンさんも察したらしい。その場から離れてくれた。
「どうしたんだ。ラインハット。」
「実はね。従魔から連絡があって、監視していた魔王がいなくなったんだよ。」
どうやらこちらでも事件が起こっていたようだ。それにしても魔王がいなくなった?新たな魔王が誕生したこの時期にか。偶然だろうか。
「行き先に心当たりはないのか?」
俺の問いにラインハットは首を横に振る。それでラインハットは困って俺のところに来たようだ。
「なあ、ラインハット。一つ確認するがお前が監視していた魔王はずいぶん前に復活していたんだよな。」
「???ずいぶん前っていうか1年ぐらい前だね。復活したのは。それから全然活動していなかったんだよね。なんで今なんだろうね?」
どうやらラインハットにはリンガル様から情報は言ってないようだ。クリス王子から箝口令は敷かれているが、新魔王の誕生はラインハットにとっても重要な情報なはずだ。そして、ヒトにとっても魔王が活動を開始したのは大問題のはずだ。
「なあ、ラインハット。お前の事や魔王の情報を他の人に話すのは問題あるのか?」
「んー、そうだね。僕のことを話すと面倒ごとになるからいやだけど、魔王の情報は構わないよ。」
えっ。いいのか。それならクリス王子に紹介するか。また何か設定を考えないといけないな。とりあえず、ラインハットには新魔王の事を伝えておくか。
「えっ、新魔王!それで魔王が動き出したのか。納得だよ。それにしても、リンガル様も水臭いよね。僕にも情報くれればいいのにね。」
「俺たちから貰えるからいいと思ったんじゃないか?リンガル様はいそがしいんだろ?」
「そりゃそうなんだけど・・・。」
ラインハットはなんだか納得いかない風だった。ちょっとふてくされている。よっぽど、リンガル様から情報を貰えなかったのがショックだったようだ。
「それにしても新魔王か。今度は誰の差し金かな?」
「ん?どういうことだ。」
「前に言ったでしょう。魔王も異分子の一人だって。つまり、魔王は神の加護を持ったヒトってことだよ。僕が監視していた魔王は闇の神の加護を持った元ヒトだよ。リンガル様が新たな魔王って言ったんなら、おそらくノエル様に反する神が誰かに加護を与えたんだと思うよ。」
魔王ってそういうものだったんだ。知らなかった。てっきりこの世界にも魔族とかがいて、その王様なんだろうな、ぐらいにしか思っていなかった。それにしても、こんなに神の世界の情報を流してもいいのか?
「あ、加護云々のところは秘密にしといてね。」




