195 新たなる魔王
シルビアさんが奥義を披露した後、王子との会談となった。
「シルビア殿、奥義の披露、礼を言うぞ。」
「いえ、大したことではありません。」
「できれば、ギルだけでなく、他のものにも剣を教えてもらいたいのだが。」
「申し訳ありませんが、その件についてはお断りさせていただきます。」
シルビアさんがそういうとちょっとクリス王子は残念そうだった。
「そうか、わかった。無理を言って済まなかった。その方には何か褒美を与えねばならないな。何か欲しいものがあるなら言ってくれ。」
クリス王子の言葉にシルビアさんが何かを考えていると俺の隣に立っていたアンの体が光りだした。
「アン?」
「これは、もしかして・・・」
アンは何かに気づいたのか跪くと目を瞑り、祈りを捧げだした。この状況は・・・神託を受けたのか?アンの周囲を覆っていた光がだんだん消えていく。そして、完全に光が消えるとアンは目を開いた。
「たった今、リンガル様からの神託がありました。新たな魔王が出現したとのことです。」
アンは呆然としていた。
「ついに魔王が復活したのか。すぐに対策をしないといけないな。」
クリス王子がそう宣言したのだが、アンがすぐに訂正した。
「王子、違います。復活したのではないんです。リンガル様によると新たな魔王が誕生したそうです。」
「新たな魔王!」
「はい、リンガル様によると1000年前に現れた魔王はもうすでに復活しているそうです。今回、新たな魔王が誕生したために我々にお知らせになってくださったそうです。」
「ということは、我々は魔王2人と戦わないといけないということが。」
クリス王子の表情が曇る。最悪の事態だ。対応が浮かばないのだろう。
「いいか。新たな魔王が現れたことは一切他言するな。対策の無いまま民衆に知られるとパニックになりかねん。すぐに、対策会議を開く。関係各所を集めろ。悪いがお前たちにも参加してもらうからな。」
王子はそういうと大慌てで席を離れた。呆然としている俺たちにリオンさんが話しかけてきた。
「大変なことになったな。すまんが会議には出席してもらうぞ。ギル、フィル王子が会いたがっておられたので会議の前に顔を見せに行っておけ。」
「はい、分かりました。」
ギルはそう言うとフィル王子の元に行く。俺も一度ラインハットに事情を説明しておきたいのだが、たぶん城から出してもらえないよな。どうしようか、と考えていると、門の方から衛兵がやってきた。
「リオン様。ラインハットと名乗る人物が千波矢殿に会いたいと城門前に来ているのですが、どうしましょうか。」
ラインハットにも知らせがいったのだろうか、ナイスタイミングだ。リオンさんは箝口令が敷かれているので俺がラインハットに会うのを渋ったが、無理やり合わせてもらうことにした。




