194 御前試合2
「ギル、今の技はなんだ?俺の一撃は間違いなくお前を捉えたと思ったんだが、気がついたら剣を弾き飛ばされていた。」
リオンさんは息を切らしながらギルに尋ねる。一方のギルはまだまだ余裕があるようだ。息切れもしていない。当然か。ブレイブルクから走って帰ってくるほどの体力だ。
「シルビアさんに習った技です。彼女は玄武と呼んでいます。」
「ゲンブだと。まさか奥義か・・・。」
リオンさんの顔色が変わる。失われた奥義が目の前に現れたのだ。
「彼女は自分の流派を四神御剣流と言っていましたが、おそらくシュレック流の源流だと思います。そして彼女は、朱雀、青龍、白虎、玄武のすべてをマスターしています。」
「ま、まさか幻の奥義の使い手が存在していたとわ。」
リオンさんはシルビアさんの方を向くと羨望の眼差しで見つめていた。
4試合目。シルビアさんの相手は龍王騎士団の団長だった。王国最強の騎士団の団長、つまり最強の男だ。周囲の予想では団長の勝利一択だったが、試合が始まるとそれが間違いであると皆気づかされた。最初の数合は両者が軽く打ち合い互いの実力を確認し合ったようだった。その後は互いに技を披露するかのごとくに掛け合っていたが、見るものが見ると両者の間にかなりの実力差があるのは一目瞭然だった。
「そろそろ終わらせるか」とシルビアさんが呟くと、突然彼女の姿が消えた。いや、消えるぐらい素早い移動からの攻撃だった。龍王騎士団団長は何とか受けることができたが、態勢を崩し尻餅を付いてしまう。しかも、手に持った剣は根元でポッキリ折れていた。
「今の瞬歩、高速移動からの一撃が白虎です。」
彼女がそう言うと、団長の前身から力が抜ける。
「参った。俺の負けだ。シルビア殿。もしかして、他の技も使えるのですか?」
「他のとは朱雀と青龍のことですか?」
「はい」
「我が流派では4つの奥義すべてを使えて、免許皆伝となります。当然、私も全て修めています。」
「もしよろしかったら、残りの2つの奥義も見せて頂くことは可能でしょうか。」
「・・・ええ、構いませんよ。」
シルビアさんは少し考えた後、その依頼を快諾した。それを聞いた団長の目は少年のように輝いていた。まるで宝物を発見した子供の目ようだ。周りを見渡すと観戦していた他の騎士、そしてクリス王子までも同じだった。それほど、幻の奥義は騎士にとって魅力的なものだったのだ。その後、シルビアが奥義を披露すると盛大な拍手が巻き起こった。もちろん、奥義の受け役はギルが務めた。朱雀、青龍の奥義を受けたギルは二度、盛大に吹き飛ばされた。先ほどの白虎と比べて、朱雀、青龍の威力が少し割増だったきがするのだが、きっと気のせいだろう。




