192 ノエル様の許可
リオンさんの質問にギルとシルビアさんの表情が曇った。何があったのだろうか。
「実は問題が起こりまして・・・。」
ギルがおずおずと答える。表情も暗い。
「問題?」
「はい、一度勇者アベルの元に行き試してみたんですが・・・。」
何とも歯切れが悪い。勇者に認められなかったのだろうか?ギルがなかなかはっきり言わないため、リオンさんの表情がどんどん険しくなっていく。
「勇者に認められなかったのか?」
「いえ、勇者には認められましたが・・・、勇者のスキルを受け継ぐことができなかったのです。」
「どういうことだ。」
「それが勇者アベルにも分からないと。彼によると継承の条件は満たしているはずだ、と。なのに継承できないのは何か別の因子が働いている可能性が高いのでは、と。」
そういうと、ギルがラインハットの方をチラリと見た。なるほど、八方塞がりなわけか。それでその原因を知っていないかと、ラインハットに聞こうと思っていたわけだ。
「わかった。その件については私からクリス殿下にご報告しておこう。それと、お前がどれだけ強くなったのか知りたい。明日にでもその力、見せてもらうぞ。できれば、師匠であるシルビア殿もぜひ。」
「えー」
ギルは物凄く嫌そうにしているが、リオンさんは無視している。シルビアさんは一言「わかりました。」と答えていた。その答えを聞いて、リオンさんは満足そうに部屋を出ていくのだった。
「なあ、ギル。お前の親父さんって強いのか?」
「ああ、俺が知っている限りこの国で5本の指に入るぐらい強い。明日が憂鬱になってきた。」
ギルは完全にうつ状態だ。シルビアさんを放って、ラインハットに向き直った。
「ラインハット、お久しぶりです。聞いての通り、ギルは条件を満たしたにも関わらず、勇者のスキルを継承できませんでした。心当たりはないですか?」
「そうだね。僕も詳しくは知らないんだよね。考えられるとしたら、ノエル様の許可が下りていないってぐらいかな。」
「ノエル様!なぜノエル様なのです?」
シルビアさんが驚いている。
「だって、勇者のスキルはノエル様の加護だもん。当然じゃん。」
その言葉を聞いて、ギルとシルビアさんが驚いている。そりゃ驚くよな。俺たちも聞いたときは驚いた。
「そ、それでは、神殿でお祈りをしてお伺いを立てるとよいのでしょうか。」
「ううん。この世界にある神殿で祈ってもよくてリンガル様までしか声は届かないね。まっ、気長に待つしかないんじゃない。」
ラインハットは安定のお気楽状態だった。ギルとシルビアはその話を聞いてひどく落胆していた。このまま、許可が下りなければ、2年間が無駄になるんだもんな。
「なあ、ラインハット。何とかならないのか?」
「うーん。ノエル様には俺達もあまり会えなかったからなー。
・・・
・・・
・・・
そうだ。古の大迷宮の最下層100階の祭壇で祈れば、間違いなくノエル様を呼び出せるよ。」
「100階!それは無理なんじゃないか?」
「そうだね。80階くらいから神獣、魔獣クラスのモンスターであふれかえっているからね。ヒトにも無理だね。まあ、50階の祭壇で祈っても、もしかしたらノエル様を呼び出せるかもしれないよ。」
ラインハットの言葉にギルとシルビアさんはわずかな希望を見出すのだった。




