191 ギルの父親
ギルの家に世話になって2日経つ。まだ、リリアさんから連絡がない。暇を持て余した俺たちは優雅にお茶を楽しんでいた。ラインハットは相変わらずアシアナとイチャついているが、その様子をシルビアさんが時々睨みつけている気がする。二人の間には何かあるのだろうか?できれば面倒事でないことを祈る。などと考えていると面倒事はギルが持ってきた。
「千波矢、まずいことになった。もうすぐ父上が帰ってくる。」
父上。そういえば、ギルの母親にはあったが、父親にはあってないな。それどころか話題にも上らなかったなかったな。
「仲が悪いのか?」
「いや、そういう訳ではないんだが、ちょっと厳格な人で苦手なんだ。しかも、勝手にシルビアさんに弟子入りして、2年も家を空けてからちょっとな。」
ギルがあたふたしていると屋敷中がざわつきだした。しばらくして、使用人の一人が部屋の扉を開け、ギルの元にやってきた。
「ギル様。旦那様がお戻りになられました。それで、」
「えっ。もう帰って来たの。」
ギルはつい本音を溢す。それを聞いた使用人の顔は無言で扉の方に向き直る。皆が、扉の方を向くと、一人の男が立っている。
「久しぶりだな、ギル。私が帰ってくるとまずかったか。」
「お、お久しぶりです。父上。」
「それで2年間、家を勝手に空けていたことについて弁明はあるか?」
ギルの父親が鋭い眼光でギルを睨みつけている。すごい威圧感だ。ギルの表情がみるみる厳しくなる。これはいつもの光景が見れそうだ。
「すみませんでしたー。」
ギルはそう言うといつもの土下座で謝る。相変わらず、滑らかな動作だ。ある意味完成されている。それを見たギルの父親とシルビアさんがため息をつく。
「お前は相変わらずだな。この2年で少しは成長しているかと期待していたんだがなあ。」
ギルの父親は周りを見渡して咳ばらいをすると自己紹介を始めた。
「私はギルの父親でリオン・アルフォンスだ。こんな情けない息子だが皆さん宜しく頼みます。」
「ちょっと、なんだよその挨拶。」
ギルは文句を言っているが、気にせず俺たちも自己紹介をしていった。俺、アン、ラインハット、アシアナと続き、最後にシルビアさんの番となった。
「初めまして。シルビアといいます。訳あって息子さんの指導をさせていただいています。事情があり、島をあまり離れられなかったためご挨拶することができませんでした。申し訳ありません。」
「いえ、大雑把ではありますが、クリス殿下より事情は聞いております。このような情けない息子を鍛えていただきありがとうございます。それで、息子は勇者になれたのでしょうか。」
あっ!そういえば、聞いていなかった。




