187 口添えの件
「僕は構わないけど、この先を話すと大変なことになるよ。それでも知りたい?」
ラインハットは意味深に聞いてくる。さも聞いてくれ、という顔だ。たぶん、俺に聞かせて面倒ごとに巻き込みたいんだろう。
「ならいい。」
俺は即座に答えた。リスクを負ってまで聞きたいことではない。
「即決だね。意外だよ。」
「当たり前だろ。厄介ごとにこれ以上巻き込まれたくない。」
「いやいや、千波矢君。もう手遅れだよ。すでにどっぷり浸かってるよ。」
「・・・やっぱりそうか。でも、いいや。必要と思ったらまた聞くよ。」
俺がそう言うと、ラインハットは残念そうな顔をする。そんな顔をしても無駄だ。
俺はアンとリリアさんの方を向くと二人は何とか衝撃から回復していた。話が逸れていたが、俺たちは古の大迷宮に入る許可を貰うん為に来たんだった。
「リリアさん。で、口添えの件なんですけど、どうでしょうか?」
俺の言葉に他の全員がハッとしている。全員忘れていたな。
「千波矢さん、その話なんだけど、口添えはできるけど、最終的には冒険者ギルドが判断するのよ。だから、このままだと難しいと思うわ。千波矢君がランクDでアンがランクCでしょう。この評価は覆らないと思うわ。ラインハットは実力的には問題ないけど、それを裏付けるものがないのよね。そうなると、教会がいくら口添えをしても難しいと思うわ。アシアナさんも戦闘はそれなりでしょう?」
確かにそうだった。後はギル達だが、ギルのランクもEで止まっているはずだし、どうしよう。王子に頼むという裏技をするしかないのだろうか。
「千波矢さん。ギルさんが来るまでもう少し時間があるんでしょう?それだったら、教会からの依頼を受けてくれないかしら?」
悩んでいる俺にリリアさんが一つの提案をしてきた。
「依頼ですか」
「ええ。千波矢君にぴったりの依頼よ。王家の墓の害虫駆除よ。ギルドだとランクC相当の依頼よ。それをクリアすれば、ランクCの実力があると証明できるわ。さらに、過去の実績を強調すれば何とかなるかもしれないわ。」
「過去の実績ってなんですか?」
「何って、王都での魔人討伐に関わったでしょ。後、レントでは二人が魔人を討伐したって報告が来ているわよ。後は、アンデッド島討伐に従軍していたことよ。どれも冒険者ギルドは関知してないでしょう。」
「確かに・・・。ただ、それだと黒髪の聖女が俺ってバレません?」
一番のネックはそこだ。女装していたことがバレる。それはいやだ。
「・・・確かにバレるわね。まあ、ばれたとしても冒険者ギルド内部だけよ?」
「俺としてはできれば、バレない方がいいんですけど・・・。」
俺がどうしようか悩んでいると、横からラインハットが口を出した。
「それだったら、ボクが先日リンカーン郊外でSランクの神龍に止めの魔法を使用したって言えばいいんじゃない?」
そういえば、そうだった。これで実力的にはなんとかなるな。問題が解決した。
「それはそうと、黒髪の聖女って何?」
ラインハットが喰いついてきた。やっぱり気になるか。その後、ラインハットの追及を逃れるために俺は苦労をすることになった。




