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「えっと、会ったことあったっけ?」
ラインハットには会った記憶がないらしくリリアさんを不思議そうに見ている。本当に記憶にないのだろうが、その仕草がリリアさんの怒りに油を注いだ。
「しらばっくれないで。お母さんに何をしたの?」
「お母さん?」
「そうよ。5年前、あなたの神託を受けた後、何も言わずに旅に出て、行方知れずなのよ。しかも、母を探そうにも、【神託】持ちの母のことを教会の誰も覚えてない。普通じゃ考えられないわ。神の力以外考えられないわ。」
「もしかして、※※※の娘さん?そっか、それで僕のことを知ってるんだ。」
ラインハットは一人で納得しているが、リリアさん、アン、アシアナは不思議そうな顔をしている。
「ラインハット様、やっぱりご存じだったんですか?」
「うん。あったことはないけど※※※の娘さんのリリアちゃんだね。」
「誰の娘です?」
「え、だから※※※、って、そうか。名前は消されたんだった。」
どうやら、3人には名前が聞こえていないようだ。だが、俺には聞こえている。リルィと。どういうこと?
「なあ、ラインハット。リルィってのがリリアさんのお母さんの名前か?」
「なんで聞こえてるの!」
どうやら、普通は聞こえないようだ。まあ、そんなことはどうでもいいか。さあ、ラインット。すべてを話してもらおうか。リリアさんは一応、恩人だ。俺とアンは彼女の味方だからな。俺とアンとリリアさんがラインハットを取り囲む。アシアナは少し離れたところで待機している。俺達のプレッシャーについにはラインハットが落ちた。
ラインハットの要望により、俺たちは教会の一室に通された。盗聴対策のされた秘密の話をするにはうってつけの部屋だ。ラインハットが外で話すのは問題がある、ということで、この部屋を用意してもらった。
「えっと。最後にもう一度確認するけど、この話をしちゃうとみんなにもいろいろと問題が起こるけど大丈夫?」
全員が頷く。皆、真剣な目でラインハットを見ている。
「わかったよ。説明するけど。どうなっても知らないからね。」
ラインハットはぶつくさ言いながら、説明を始めた。
「えっと、確認だけど、リリアちゃんのお母さんの名前が聞こえているのは千波矢君だけだよね。それは、リリアちゃんのお母さんが名前を捨てたからなんだ。」
「すみませんが、リリアちゃんは止めてもらえませんか。」
リリアさんが顔を真っ赤にしてラインハットに迫る。
「え、なんで?僕、※※※にリリアちゃんもよろしく、って紹介されたんだけど。」
「それでも、リリアでお願いします。」
リリアさんの説得?にラインハットはしぶしぶ応じてリリアと呼ぶことになった。リリアさんはさん付けで呼んでもらいたかったようだが、これはリリアさんが折れたようだった。
そして、俺たちはラインハットの口から衝撃の事実を聞くことになる。




