17 勧誘
「そうだ。千波矢さん。昨日の赤毛の女の子なんですが」
アンのことか。昨日のことやっぱり問題になったのか?
「ああ、昨日のことは大丈夫ですよ。ちゃんとあのバカにはしっかり反省してもらってます。机の代金の請求もあのバカになってますよ。」
「良かったです。」
「で、あの子なんですけど、冒険者登録はしてないですよね。あの子なら即戦力になるんで是非説得してくれませんか。」
「え。」
どうやら、勧誘のようだ。
「あの子が倒した冒険者。一応ランクEなんです。それを1発で倒したとなると相当の実力です。
知ってます。彼女、昨日の騒ぎで「赤い鬼神」って呼ばれ始めてるんですよ。二つ名がついたんですよ。」
受付嬢はすごく興奮しながら力説する。赤い鬼神か。
「ねえ、興奮しているところ悪いけど、女の子が『赤い鬼神』って呼ばれて嬉しいの?」
「・・・あまり嬉しくないですね。」
「ですよね。本人の前では絶対言わないでくださいね。」
俺はそういうとギルドを後にした。
・・・おそらくその二つ名は、いずれアンの耳にも届くだろう。その時はきっと・・・。
うん。この話は聞かなかったことにしよう。
俺は服屋で替えの服を購入すると部屋に戻った。
「あれ、千波矢さん。大丈夫ですか。怪我をしてますし、泥だらけですよ。」
俺の姿を見たアンが心配して駆け寄ってくる。
「回復魔法」
見る見るうちに傷が治っていく。まあ、擦り傷と切り傷ぐらいだが。そう言えば、【回復魔法 良】を持っているといっていたな。
「ありがとう。助かったよ。で、どうだった。」
「今日も会えませんでした。なんか教会内で何かが起こっているらしくごたごたしているみたいです。」
「しかたない。その先輩から連絡がくるのを待とう。
馬を返したのなら、アンが帰ってきてるのはわかってるはずだから、きっと連絡があるよ。」
「そうですよね。
ところで、千波矢さんの方はどうでした?」
「2200ゴールドかな。」
「すごいですね。1日で2200ゴールドですか。
・・・そうだ、明日は私も手伝いますね。」
「ありがとう。そうだ、夕食食べておくといいよ。」
俺はアンに夕食代を渡すと、服を着替えて食堂に向かった。もちろん、バイトだ。




