163 緊急会議
俺は店にラインハットを連れて行くと緊急会議を開いた。
「不味いことになった。借金が400000ゴールドできた。」
俺の言葉にアンの表情が変わる。
「千波矢さん。何に使ったんですか?」
アンは何を勘違いしているのだろうか。
「昨日の宴会の代金だ。酒代が凄く掛かったようだ。」
その言葉でアンはすべてを察したようだ。一方、ラインハットは状況を飲み込めてないようだ。
「400000ゴールドって、そんなに大金なんですか?」
殴りたくなってくる。我慢だ。我慢だ。俺が必死に自制しているとアンが一つの疑問を呈した。
「それにしても400000ゴールドってすごい金額ですよね。どうしてそんな金額になったんですかね。」
もっともな疑問だ。俺も思った。そしてマーサさんに尋ねた。返ってきた答えは、店の秘蔵の酒を誰かが全部飲んだかららしい。
「秘蔵のお酒ってもしかして、バッカスの泉ですか。」
「バッカスの泉?」
「ドワーフ族産の最高級酒で確か1樽100000ゴールドはするって言ってました。お父さんが大絶賛していたお酒ですね。たしか、2樽ほどあったはずですけど・・・。ただ、そのお酒は地下の倉庫の一番奥にしまってたんで違いますよね。」
「地下の一番奥のお酒?もしかして、黒い樽のお酒かな?」
ラインハットが話に割り込んできた。まだ、少し酔っている。
「ええ、そうですけど、よくご存じですね。」
「ああ、マスクデスさんに地下の酒を持ってきてくれって言われて、2樽ほど奥にあるお酒を運んだんだ。確か黒い樽だったよ。いやー、あのお酒は美味しかったなー。」
400000ゴールドの原因が分かった。その2樽で200000ゴールド、半分か。原因の大半はラインハットのようだ。
「アン、試作品の酔い覚め薬があったよな。あれを持ってきてくれないか。」
俺がそういうと、アンの表情が陰る。この薬は効果重視で作ったら、ものすごく不味いものができたのだ。現在、味を改良中だが上手くいっていない。というか、ここまで強力な酔い覚ましの薬は必要ないため、開発を中止していたのだった。アンは渋々薬を持ってきたが、使用を快く思ってないようだ。
「アン、心配するな。不味くても死ぬことはない。それにこいつはこれでも神だ。大丈夫だろう。」
俺は適当な理由を付けてラインハットに薬を飲ませる。ラインハットの断末魔が聞こえる。アンは耳を塞いでいる。
「ラインハット、酔いは醒めたか?」
俺が冷たい目で見下しながらラインハットに尋ねる。
「もう、醒めたよ。ところで、この薬、飲ませる必要あったの?」
ラインハットの質問を俺は無視した。飲ませる必要があったかだって?これは憂さ晴らしに決まっているだろう。




