158 対ドラゴン戦2
「麻酔玉改を使用するぞ。前線のやつらは注意しろ。」
ウォーロッドさんが大声を上げる。そして、合図とともに麻酔玉改を持っていた冒険者が一斉に麻酔玉改を投げつける。ドラゴンは咆哮を上げると麻酔玉改のいくつかを跳ね返してきた。跳ね返されたいくつかは冒険者に当たる。もちろん冒険者は痺れて倒れれてします。一瞬で倒れたな。なかなかの威力だな。隣の奴は痺れていない。効果範囲も十分絞れているな。俺は麻酔玉改の性能に満足しつつ、それでも痺れていないドラゴンに驚きを感じていた。少なくとも2個は当たったはずだ。俺は急いでその冒険者の元に向かい万能薬を飲ませる。痺れがすぐに取れる。こちらも問題ないな。これで麻酔玉改の性能テストとしては十分だろう。問題はドラゴンをいかにして倒すかだ。
ドラゴンは再び咆哮をあげると俺たちに襲い掛かってくる。どうやら、全く効かなかったわけではないようだ。少し動きが鈍い気がする。全く聞いてない訳ではないようだ。だが、そのせいで怒ったドラゴンが怒りに任せて暴れているのだ。先ほどよりもまずい状況だ。ここで撤退したら間違いなくドラゴンは町までついてき暴れるだろう。皆、それが分かっているので、決死の抵抗をしているのだ。だが、このままでは時間の問題だろう。
「ギルド長。魔術師殿と連絡が取れました。今から極大魔法を唱えるので、ドラゴンを引きつけてほしいとのことです。」
魔術師と接触を試みた冒険者が慌てて帰って来た。
「どうして、そんな流れになった。」
「はい、魔術師殿の魔法でもドラゴンを倒せる魔法はほとんどなく、しかも魔力の消耗がかなり激しいため、極大魔法で仕留めるのが一番効率が良いと」
冒険者も苦悩の表情である。極大魔法でドラゴンは倒せるかもしれないが、足止めをしている冒険者も巻き添えを食らうのは火を見るより明らかだ。それでもそれしか手段がないと判断して、子の冒険者はこの話を持ち帰ったのだろう。そしてウォーロッドさんは苦渋の選択を強いられている。自分の部下でもある冒険者に死ねと命令を下すか、このままずるずると戦い続けるかを選択しなければならないからだ。
「ギルド長。麻酔玉をもう少し試してみませんか?見た感じ効果は少しはあるみたいです。旧型と改良型を合わせて後20近くありますのでとりあえず使ってみませんか?」
迷っているウォーロッドさんに俺は一つ提案をした。ダメならば、その時次の手を打てばいい。
「よし。それでいこう。」
ウォーロッドさんの決断は早かった。俺は麻酔玉と麻酔玉改を周りの冒険者に配る。そして、ウォーロッドさんはドラゴンの近くで戦っている冒険者を一旦引かせる。
「千波矢。お前の合図で頼む。」
ウォーロッドさんが俺に合図をするように言う。失敗したら、俺に責任を押し付けるつもりじゃないよな。俺はドラゴンを注視し、タイミングを伺う。他の冒険者が遠距離攻撃を続けている。早くしないと彼らが全滅するかもしれない。ドラゴンが冒険者に向かって、三度目の咆哮をあげる。そしてドラゴンは一息つくように顔を下に向けた。チャンスだ。
「いまだ。」
俺の号令により麻酔玉と麻酔玉改が一斉に投げられる。ドラゴンの周囲が麻酔薬で充満する。ドラゴンが羽を羽ばたかせて麻酔薬を吹き散らすが、明らかに動きが鈍くなっている。俺たちはドラゴンから距離を取り、ドラゴンの動きを牽制する。後は例の魔術師の極大呪文を待つだけだ。そして数分後、上空から一筋の光がドラゴンに落ちた。




