157 対ドラゴン戦1
出発して3時間ほどでドラゴンと遭遇した。非常に美しいドラゴンだった。真っ白で少し透明感のある鱗、少し小型だがシャープなフォルム、威風堂々としたたたずまいなど、すべてが神々しくも見えた。
そしてそのドラゴンの後ろに広がる光景がそのドラゴンの実力を示していた。この辺は小さな森が広がっていたはずだが、今見えるのは焼け野原だけである。ギルド長の「こいつは化け物だ。ランクAと思って戦え。」と言う罵声が聞こえる。
「なあ、D。このドラゴンについて教えてくれ。」
俺がDにドラゴンについて聞くと予想外の答えが返ってきた。
「このドラゴンについては情報がありません。」
これはこのドラゴンが全くの新種であることを意味する。Dの情報源はヒトが残した文章すべてだからだ。一度でも文章として残されれば、現存してなくてもDから情報を聞くことができるからだ。
突然、ドラゴンの頭部に凄まじい爆発が起こった。まだ、こちらの魔術師たちは攻撃を開始していないはずだ。ドラゴンと戦っていた魔術師がまだ戦っているのか!それが本当なら、一人で10時間以上ドラゴンと戦い続けていることになる。周りの冒険者もざわついている。
よく見ると、ドラゴンが少しふらついている。先ほどの魔法が聞いているようだ。
「いまだ。攻撃しろ。」
ウォーロッドさんの号令の下、冒険者達が一斉に攻撃を開始する。ランクAの冒険者を中心にドラゴンに攻撃を開始する。俺の攻撃力は皆無なので回復とサポートに専念している。こういう時のために俺のカバンの中にも大量の薬がストックされている。
戦闘を開始して1時間が経つがドラゴンが弱ってきているようには見えない。どうやら俺たちの攻撃はあまり聞いていないようだ。謎の魔術師の攻撃も単発で起こっているが、頻度は減ってきている。やはり戦い続けていて披露してきているのだろう。俺は魔術師を探すことにした。彼の魔法以外に決定打がないように思えたからだ。彼に共闘をお願いするためだ。
俺は戦場を駆け巡り傷ついた冒険者を治療しながら魔術師を探し続けた。どうやら魔術師はドラゴンの南側から攻撃をしているようだ。流石に勝手に戦場から離れるわけにはいけないので、俺はウォーロッドさんをから許可を取ることにした。
「話は分かった。確かにお前の言う通りだ。だが、それは他のやつに行かせる。お前はこれから行う作戦のサポートをしてくれ。」
「これから行う作戦?」
「麻酔玉改を使う。必要によってはお前さんの未完成の薬とかも出してもらうからな。何かあるだろう。」
ウォーロッドさんは必死だった。どうやら未完成の薬を出せと言っているのだろう。確かにあるが、秘密にしているのはかなり危険があるためなのだが・・・。ウォーロッドさんの表情を見ると鬼気迫るものがある。確かにこのドラゴンが町に突入したら町は全滅だろう。すでに町に避難指示と、周辺都市と王都に救援要請も出しているようだ。俺に断るという選択肢はなかった。こうして、ドラゴン戦は佳境を迎えることになった。




