151 ギルの修業3
俺のうっかり発言から2週間が経つ。俺の修業の内容は完全に変わっていた。あの日からいきなりハードになったのだ。「死なないでくださいね」は冗談ではなかったようだ。俺のアンデッド退治の主戦場は島西部から島中央部に変わった。はっきり言って、今の俺ではかなりきついレベルだ。数が多いとおそらく死んでしまうレベルだ。今のところ少数としか対峙していないが、いつ大勢のアンデッドに囲まれるかわかったものではない。俺は必死に強くなっていく。
島西部のアンデッドと違い、この辺りのアンデッドはかなり複雑な動きをするものもいる。ちょっとした判断ミスですぐに窮地に陥ることも珍しくなかった。そのため、俺の第一目標は「アンデッド退治」から「生き残る」に変わってきていた。いまではあれほど基本に忠実だった俺の戦い方はかなり粗暴になってきていた。死にそうになれば鞘で相手を殴ることもあるし、蹴りを入れることもある。こんなことでいいのだろうか。
そして、シルビアさんから教わる技のレベルが一気に上がった。今までは使えそうな技を教えてくれていたが、今の自分では使えるかわからない技になっている。
「ギルさん。とりあえず、技の型だけでも覚えてください。そのうち使えるようになります。死ななければですが。」
シルビアさんはにっこり笑うとそう言っていた。最近はすっかりSである。どうやら四神御剣流は実戦を旨とする流派だったようだ。「どんどん強いやつと戦えば自分も強くなる」というどこかの戦闘民族のような考え方のようだ。最初は「無茶な話だ」と思ったが、実際に俺は急激に強くなっている。後一か月もすれば、島中央部のアンデッドも問題なく倒せるようになるはずだ。
更に1週間が経った。俺は認識を改めることになる。島中央部のアンデッドを甘く見ていた。いや、シルビアさんの指導を甘く見ていた。実力は上がってきているはずなのに、一向に島中央部のアンデッドに苦戦している。理由は簡単だ。出現するアンデッドの種類と数が増えているのだ。どうやらシルビアさんが俺の見えないところで、アンデッドを間引きしてくれていたようだ。そして、俺の実力が上がるにつれて、間引く数を的確に減らしていたのだった。昨日、シルビアさんがミスをして大量のアンデッドが襲い掛かってきて、初めてそのことに気づいたのだった。シルビアさんが駆け付けるのが後5分遅かったら、俺の命はなかっただろう。駆け付けたシルビアさんの言葉が俺を震撼させた。
「すみません。アンデッドの間引く量を間違えました。
・・・どうやら怪我はないようですね。それなら、もう少しハードにしても大丈夫そうですね。」
どうやら明日からさらにハードになるようだ。俺は生き残れるのだろうか?




