150 ギルの修業2
最近はアンデッド退治だけでなく、シルビアさんに剣術の手ほどきも受けている。シルビアさんの剣術は四神御剣流といい、俺の知らない流派だった。シルビアさん曰く、1000年前にもっともメジャーな流派だったそうだ。そして、シルビアさんはその流派の免許皆伝だそうだ。午前中、シルビアさんに技を習って、午後アンデッドで試してみる、という生活がしばらく続いている。こうなってくると自分の実力が上がっていくのを感じることができる。
更にしばらくすると、俺もシルビアさんに技を教え始めた。教えるといっても見せるだけだが・・・。俺の使う流派はシュレック流といい、現在最もポピュラーなものだ。800年程前、剣聖シュレックが起こした流派だ。シルビアさんは一度見ただけで、技を覚えていく。これが才能の差というものなのだろうか。自信が失われていく。
「どうやら、四神御剣流はシュレック流の源流のようですね。基本の型がほぼ同じですね。この1000年の間に無駄だ動きがそぎ落とされて洗練されたものになってますね。その分、力強さや粗野さといった部分がなくなっていますが。」
言われてみると、確かに似たような技がいくつかある気がする。しかし、良く気付いたものだ。技から受けるイメージが正反対なのだ。普通、同じものと考えることはないはずだ。
いや、まてよ。以前捕らえた山賊がシルビアさんと似た技を使っていた気がする。その男は元騎士だったはずだ。もしかしたら、彼もシュレック流を習っていたのかもしれない。そして、山賊になって型が乱れて四神御剣流に似た技になったのかもしれない。
「シルビアさん。もしかして四神御剣流には奥義と呼ばれる4つがありますか?」
実はシュレック流には奥義と呼ばれる技が4つあるらしい。「スザク」「セイリュウ」「ビャッコ」「ゲンブ」だ。現在は失伝し名称のみが伝わっている。もし、四神御剣流が源流ならその技があるはずだ。
「4つの奥義?もしかして、「朱雀」「青龍」「白虎」「玄武」のことですか。もちろん修得しています。その技を修得して初めて免許皆伝となるのです。」
どうやら、四神御剣流はシュレック流の源流で間違いないようだ。そして、失われた奥義を知っている人物が俺の前にいる。俺は興奮せずにいられなかった。
「ギルさん。もしかして奥義に興味がおありですか?」
シルビアさんの質問に俺は首を縦に振る。これが地獄の特訓への第一歩だと知らずに・・・。
「そうですか。それでは修業のゴール地点を奥義修得に変更しましょう。ギルさんならたぶん修得できると思います。ただ、一つだけ約束してください。」
シルビアさんはそう言うと神妙な面持ちになった。
「なんですか?」
「えっと、修業は辛いかもしれませんが死なないでくださいね。」
彼女は真顔でそう言い切った。




