139 結婚のお許し
俺はマスクデスさんとマーサさんの前に座っていた。結婚のお許しを得るためだ。すごく緊張する。マスクデスさんは感づいているのだろうか、俺を睨み続けている。胃が痛くなる。
「マスクデスさん、マーサさん。アンさんと結婚させてください。」
俺は二人にそう言うと頭を下げる。マーサさんは今さらというかんじで俺をにこやかに見ているが、マクスデスさんの圧は強くなる。アンは隣でニコニコしながら座っている。俺との結婚が現実味を帯びて気いるのが嬉しいのだろう。
「一つ聞きたい。お前はこの世界に来て日が浅い。アンと結婚してやっていけるのか。言っておくが宿を継がせるつもりわないぞ。」
予想通りの質問が飛んできた。
「冒険者稼業と並行して薬屋を開く予定です。すでにその準備はしています。」
「薬屋。そんなので食っていけるのか?」
マクスデスさんは懐疑的だ。当然だろう。この世界では薬はメジャーではない。
「そういえば、マルゲリータに聞いたんだけど、この前1日で80000ゴールド稼いだんだって?」
マーサさんが渡し船を出してくれる。おそらくマーサさんはマルゲリータさんと連絡を取っているのだろう。
「80000ゴールド!」
マスクデスさんが絶句している。アンは当然とばかりの顔をしている。
「そういえば、アン。その指輪どうしたんだ?」
マスクデスさんが話題を変えてきた。
「プロポーズされた時に千波矢さんからの貰いました。千波矢さんが生まれた世界ではそういう風習があるんですって。」
マスクデスさんは目を丸くしている。
「アン、良かったわね。すてきな指輪をプレゼントしてもらって。」
マーサさんは感心した表情で言う。アンはとても嬉しそうに頷く。マーサさんは指輪をマジマジと見て首を傾げている。
「ねえ、千波矢くん。この指輪、結構値段がしたんじゃないの?」
マーサさんが俺に聞いてきた。
「ええ、まあ。それなりに。」
俺は言葉を濁す。支払ったお金は80000ゴールドだが、幸運の石を二つ納品しているので、実質500000ゴールドだ。
「千波矢さん。別に安物でも私は気にしないですよ。」
アンは気を使ってかそのようなことを言ってくれる。実際は逆なんだが・・・。だが、アンに黙っておくわけにもいかないな。
「いや、アン。その指輪、500000ゴールドだ。」
「「「500000ゴールド」」」
3人の目が点になる。もはやマスクデスさんは何も言えなかった。とは言え、全く反対していた訳ではなく、アンを心配しているだけだったので、不安の種がないのなら何も言うことはないのだ。
マスクデスさんは無言で立ち上がると部屋を出て行った。しばらくして部屋に戻ってくると手に酒を持っていた。
「千波矢。飲むぞ。」
マスクデスさんは俺に酒を突き出す。
「ほどほどにしておきなさいよ。」
マーサさんはあきれ顔でそういうとアンと一緒に部屋を出て行った。どうやら、結婚を認められたようだ。俺はその日倒れるまでマスクデスさんと酒を飲み続けることになった。




