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神の悪戯に翻弄される冒険者  作者: 佐神大地
第3章
135/330

135 ピンクダイヤ

 薬の代金として、110個は最初の約束通り300ゴールドで、マルゲリータさんが用意した材料で作った残りの202個は250ゴールドで買い取ってくれた。合計83500ゴールドだ。1日の売り上げで考えるとかなりのものだ。


「心配しなくても、うちもちゃんと利益が出ているわよ。商人は損になることはしないわよ。」


 とマルゲリータさんは言っていた。あの様子だとかなり稼いだようだ。そして後で聞いた話だが、高解毒薬を買いに来た冒険者に俺が薬屋を開くから、次は俺の店で買ってくれ、と言って薬を渡していたそうだ。ありがたいことだ。


 一つ問題があった。アンが俺の行動を不信がっているのだ。そのため、俺は大人しくしておくことにした。せっかくここまで黙っていたのだから、できれば最後まで秘密にしておいて、驚かせたい。俺は薬草採取と簡単な討伐をメインにギルドの依頼を受けて過ごした。そしてとうとう指輪完成の日が来た。


 俺はアンにばれないようにギルドに依頼を受けに行った。そして、簡単な討伐依頼を受けると薬草採取に向かった。いつも通りの一日だ。夕方前に依頼を終わらせ、ギルドに報告するとファニー宝飾店に向かった。


「千波矢さん、お待ちしておりました。」


 対応してくれたのはマチルダさんだった。わざわざ、またレストンから来たのだろうか。


「マチルダさん、こんにちは。今日もこちらに来られていたんですね。」


「当然です。今回、千波矢さんは高額の商品をお買い上げ頂いたので、私自ら対応するのはとうぜんです。」


 やっぱりこの金額は高額商品になるのか。

 すぐにセリナさんが店の奥から指輪のケースを持ってくる。指輪のケースは銀色のトレイに乗せられて仰々しく運ばれてくる。こんな光景テレビでは見たことがあったが、まさか実際に見ることになるとは思わなかった。


「どうぞ、ご確認ください。」


 マチルダさんはそう言って銀のトレイの上に置いてあった指輪ケースを俺に手渡す。俺は指輪ケースを受け取り中の指輪を確認する。


 俺は指輪を見て息を呑んだ。幸運の石は薄いピンク色で透き通っている。石はきれいにカットされていて、原石の時よりも輝いて見える。まるでピンクダイヤのようだ。俺の婚約指輪のイメージにぴったりだ。


「すごいですね。原石の時のまるで違いますね。」


 俺が素直に感想を述べると、マチルダさんはとても嬉しそうに答えた。


「そう言っていただけると、頑張った甲斐があります。指輪のサイズの手直しなどはいつでもお持ちください。」


 後は、これをアンに渡すだけだ。どこで渡すかはまだ決めてないが、近日中に実行しよう。俺とアンとの仲なら、きっと大丈夫なはずだ。

 俺はいろいろと考えを巡らせながら出口に向かう。


「本日はお買い上げありがとうございました。」


 セリナさんがそう言い、店の扉を開けると・・・、そこにアンが立っていた。



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