132 持ち込み情報
俺はセリナさんに見送られてファニー宝飾店を後にする。セリナさんは俺の姿が見えなくなるまで手を振っていた。お店のおもてなしの一環なのだろうが、やられる方としてはちょっとはずかしかった。後は、ギルドのランクを上げつつ、指輪ができるのを待つだけだ。
次はギルドに行きリナさんに挨拶をする。
「リナさん。こんにちは。」
「あら、千波矢さん。帰ってくるの遅かったですね。てっきりまっすぐ帰ってくると思ってたのに。」
「すみません。ちょっと指輪の材料集めをしてまして。」
「指輪?」
あっ。そういえば、指輪の事は話していなかったな。俺は婚約指輪のことをリナさんに説明する。
「素敵な風習ね。私もそんなものをプレゼントしてくれる人に巡り合いたいわ。」
「あの、アンにはまだ秘密にしといてくださいね。」
「わかってるわ。それより、ジョージさんとは上手くいった?」
「ええ、店ができたら知らせてくれ、と言われました。」
「・・・本当に!ジョージさんはパリストン商会の前会長で、彼は会長の時にパリストン商会は大きくなったんで、凄腕として有名なんですよ。」
やはり彼は只者ではなかったようだ。あの威圧感、普通の商人に出せるものじゃないよな。
「後は、ランクDまで上げて、領主の許可を得るだけですね。」
「それと、店を開く場所の確保も必要ですよ。」
・・・そういえば、そうだった。忘れていた。俺の様子を見たリナさんが笑いながら言ってきた。
「どうします?不動産屋を紹介してもいいですが。」
そういえば、道具屋のマルゲリータさんとの話し合いでもその話が出たな。
「いえ、1週間後にアンの正式にプロポーズした後、マーサさんに紹介してもらうことにします。」
「そうね。マーサさんも結構顔が広いからそれがいいかもね。
ということで、今日の依頼はどうします?できれば、討伐依頼の方がいいんですが。」
「そうですね。しばらくは、薬草を採取に行きます。ちょっとリール草の在庫が減ってきたんで。」
「リール草?」
「ええ、毒の平原付近の冒険者に高解毒薬を結構な数を配って回ったんです。」
「高解毒薬ですか。気前がいいですね。結構珍しい薬ですよ。」
「そうみたいですね。毒の平原で毒の瘴気に侵された冒険者を治療した時に周りのヒトがびっくりしていました。」
「えっ。高解毒薬で治療できたんですか。」
「はい、解毒薬でダメだったと聞いたので、高解毒薬を試しました。それでだめなら万能薬を試そうと思ってたんですが、高解毒薬で十分効果がありました。」
「いい情報ありがとうございます。千波矢さん。よろしければ、高解毒薬を5つほど分けてもらえませんか?」
「何に使うんですか?」
「ギルドに持ち込まれた有力な情報はギルドで検証するんです。正しさが認められたら冒険者に告知されるんです。この情報、千波矢さんからの持ち込み情報にしてよろしいですよね。」
どうやら、情報が正しいと持ち込んだ冒険者の評価が上がるそうだ。逆にデマ情報だと評価が下がるそうだ。もちろん俺は持ち込みにして高解毒薬を提供した。




