13 冒険者ギルド2
訓練所ではいかついおっさんが待っていた。そういえば、アンの姿が見えない。ギルドのロビーで待ってるのだろうか。
「来たか。新入り。こっちだ。俺が実技試験の担当官だ。」
「新入りって、もう合格が決まってるんですか。」
「なんだ、知らないのか。余程のことがない限り、冒険者になれないことはない。
この実技試験はお前の実力を知るためのものだ。」
「実力を知るためのもの?」
「ああ、若いやつは無茶な依頼を受けて死ぬ奴がいるから実力に合った依頼を受けさせるようにギルドである程度冒険者の実力を把握しとく必要があるんだ。だから、安心してかかってこい。」
実力試験で俺は担当官にコテンパンに負けた。趣味で剣道をやっていたが、そんなものでどうにかなるレベルではなかった。
そして、【蛮族の英雄】の効果が少しわかった。
剣道、つまり剣術の動きをすると体の動かし方がおかしくなった。おそらくスキルによるマイナス補正だろう。
逆にそれを無視して力づくに棒を叩きつけると、いつも以上に力が出ていた。これはスキルのプラス補正だろう。
試験後の反省会でも「スキルに合った戦い方を見つけるといい」と言われた。おそらく、漠然とではあろうが、スキルの内容がわかったのだろう。
俺の冒険者のランクはGとなった。いわゆる駆けだし冒険者だ。まあ、当然の結果だ。
ちなみにランクはGが最低で最高位がSSSの10段階に分かれているそうだ。最もSSSとSSランクの冒険者は現在いないそうだ。Sが世界に数人、Aが国内に数人といったところのようだ。
ギルドのロビーに戻って、受付で冒険者カードと冒険者の心得という冊子を受け取った。冒険者カード、これが身分証となるそうだ。そして「冊子は暇なら読むように」と言われた。
冒険者カード
名 千波矢
二つ名 なし
種族 人間
ランク G
実にシンプルなカードだ。だが、他人使用不可、偽造防止の処理が施された高度な身分証らしい。
俺はいくつかの手続きを行う。
そういえば、アンはどこに行った?姿が見えないな。俺は辺りを見渡した時、奥の方からアンの声が聞こえた。
「いい加減にしてください。」
そしてすぐに何かが壊れる音がした。
アンの身に何かあった?俺が急いで駆け付けるとそこには仁王立ちするアンと気を失っている冒険者、そして壊れた机があった。
「千波矢さん。やっと終わったんですね。帰りますよ。」
アンはそういうと俺の手を引っ張り外に出ようとする。そうとう嫌なことがあったんだろう。
しかし、このままここを離れていいのか?と思っていると受付の女性が
「こいつに弁償させるから行っていいわよ。」
と冒険者を指さす。
俺はアンに引っ張られ、ギルドを後にした。
この日、アンに『赤い鬼神』という二つ名が付けられたが、本人は知ることがなかった。




