125 宝飾品店
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護衛依頼は無事に終了した。2日目はランバードに襲われたが、3日目は何事もなく一日平穏だった。あまりにも暇だったため、俺は御者の人に馬車の運転の仕方をコッソリ教わっていた。機会があれば練習してみようと思う。クックとエミュとも仲が良くなり、店ができたら、贔屓にしてくれるそうだ。
レストンは南部最大の街と言うだけあって、非常に大きな町で、いろいろなお店がある。俺はギルド職員に紹介してもらった店を探している。
「たぶん、このあたりなんだが・・・。」
だんだん街の中心から離れていく。そして、一軒の小さな店にたどりら着いた。小さな看板がかろうじて出ているだけで、「商売する気があるのだろうか?」と思えるぐらい地味で質素なつくりだ。もちろん、掃除は行き届いていて清潔感はある。店の名前がギルドで聞いたものと同じなのでこの店で間違いないのだろうが、一見すると目的の店には見えない。だが、せっかく紹介してもらったので、無下にもできない。俺は意を決して店に入った。
「いらっしゃいませ。何をお探しでしょうか。」
店内には女性の店員が一人いた。店員は入ってきた俺に丁寧に挨拶してくれた。ショーケースの中には指輪、ネックレス、ブレスレットなどが数点展示されている。そう、俺が来た店は宝飾品店だ。
「えっと、女性への贈答用の指輪が欲しいんですが。」
「贈答用の指輪ですね。どのようなものをお望みでしょうか。」
「えっと、結婚を申し込む時に記念の品として送りたいんですけど。」
俺がそういうと店員は一瞬訳が分からないような顔をした。どうやら、この世界では婚約指輪という習慣はないようだ。店員はハッとするとすぐに笑顔に戻った。
「素敵なプレゼントですね。お相手の方がうらやましいです。それではご予算はいかほどでしょうか。」
「えっと。100000ゴールドまででお願いしたいんですが。」
俺は前回の領主からの報酬を全額つぎ込むことにした。カバンの中にはまだまだゴールドは入っている。開店資金もなんとなかるはずだ。問題は100000ゴールドで指輪が2個帰るかだが・・・。なにしろ、こちらの物価をおれはよく知らない。
店員の顔を見ると、非常に困惑した表情だ。やっぱり、予算が低すぎるのだろうか。頑張れば、もう100000ゴールド出せなくもないが。
「あの・・・。お客様は平民ですよね。」
「はい、そうですが?」
「すみません。貴族や大商人の方なら500000ゴールド以上の物をご注文されることが多く、平民で少しお金に余裕のあるかたなら10000ゴールドも出せばいい方なので、100000ゴールドという価格帯のものは置いていないんですよ。」
なるほど、そういうことか。俺はとりあえず、低価格帯の中で一番良いものを見せてもらったが・・・いまいちだった。どうしよう。




