121 魔物除け薬
俺は御者台に座っているが、もちろん馬車の運転なんかできない。ジョージさんが雇った御者が運転している。クックとエミュは馬に乗って馬車の両脇を並走している。リンカーンとレストンの間には町や村はないらしく、2回野営をして、3日目の夕方に到着の予定だそうだ。
1日目は何事もなく目的予定地にたどり着いた。見晴らしのいい平原でモンスターや盗賊が襲ってきてもすぐに発見することができる。反面、こちらも発見されやすいのだが。
「なあ、D。この辺によく出没するモンスターってなんだ?」
「・・・ワーウルフです。ランクEの狼系モンスターです。」
あいつ等なら魔物除け薬が良く効いたはずだよな。俺は魔法のカバンから魔物除け薬を取り出す。いつもはアンと二人なので1本だが、今日は依頼主がいるので2本と使うことにした。この薬は周囲を囲うように撒いておくとモンスターが近づきづらくなるそうだ。
「なあ、何してんだ。」
魔物除け薬を撒いていると、クックが聞いてきた。
「えっ。魔物除け薬を撒いてるだけだけど?」
「魔物除け薬?どうしたんだ。ジョージさんから支給されたのか?」
「いや、持ってたのを使っただけだけど?」
俺が答えるとクックは絶句している。何かまずかったのだろうか?
「千波矢。それがどういうものか知ってるのか?」
「ああ、周りに撒くと魔物がよってこなくなる薬だろ。」
魔物除け薬についてはアンから教えてもらっていた。二人で旅をしているとき、「作れないか」と相談されたからだ。アンによると教会で販売しているらしく、教会にいるときによく耳にしたらしい。
「確かにそうだが・・・」
「あれ?この薬は別に珍しくはないよな?」
俺が不思議がっているとクックが呆れた顔で言った。
「その薬、もしかしてお前の自作か?」
「ああ、そうだけど?」
「その薬を教会で買ったら、1本5000ゴールドだぞ。」
1本5000ゴールド?まじか。値段までは知らなかった。だとすると、2本で10000ゴールド。今回の報酬は10000ゴールド。確かに、この薬を使うのは普通なら割りに合わないな。
実際、この薬の材料費はそんなに掛かっていない。材料は聖水とルーン草だけである。後は触媒として聖石が必要とする。
聖水はアンが半日で大量に作ってくれた。水に祈りを捧げるとつくれるそうだ。ルーン草はその辺に結構生えていたりする。聖石は触媒なので1つ持っていると、ずっと使える。したがって、俺の中では魔物除け薬は高価なものってイメージはなかったりした。




