119 素直に申告するか
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「千波矢さん。準備は終わりました。」
「ええ、なんとか。」
「他の皆さんはすでに集まっていますので、こちらにどうぞ。」
リナさんは俺を奥の個室に案内してくれる。
「彼が依頼を受けた冒険者の最後の一人です。」
リナさんはそういうと部屋の外に出ていく。そういえば、こういう依頼は初めてだ。アンもいない。ものすごく緊張するな。アンが横にいるだけで今までどれだけ安心していたかが分かる。
部屋の中にを見渡すと実に質素な部屋だ。机と椅子が置いてあるだけだ。椅子には初老の男が座っている。この男が依頼主だろう。そして、その前に鎧を来た若い男女が立っている。間違いなく冒険者だな。
「遅くなってすみません。ランクEの冒険者の千波矢といいます。近接戦闘もできますが、調剤師としての支援が得意です。」
俺は自己紹介をしたが、こんなもんで良かったんだろうか?リナさんが「調剤師として後衛をすればよい」と言っていたからこの挨拶で問題ないと思うんだが・・・。
「いえいえ、時間は大丈夫ですよ。私が今回の依頼主、ジョージ・パリストンです。」
初老の男が挨拶を返してきた。どうやら挨拶の仕方は間違ってなかったようだ。
「俺はクック。ランクはDだ。剣士だ。よろしくな。」
「私はエミュ。私もランクはDで剣士よ。よろしくね。」
二人が手を差し出してきたので、握手をする。
「皆さん、今回は急な依頼にも関わらず、お受けいただいてありがとうございます。身元はギルドが保証してくれるということで問題ないんですが、実力を聞かせてもらってよろしいです?」
ジョージさんは主に俺の方を向いて喋っている。当然か。普段、ランクC以上を雇っているのに緊急依頼とはいえ、ランクEが来たら疑うよな。
「俺たちは二人でパーティーを組んでいる。二人でオークを狩ったこともあるぜ。」
クックは自信満々に言っているがオークってあのオークだよな。確か俺は、タイマンで倒したことがあるような・・・。それどころかオークマジシャンって上位種も倒した気がするぞ。3人の視線が俺に注視している。・・・素直に申告するか。
「あっ。俺もオークは倒したことがあります。後、オークマジシャンも・・・」
「おい、パーティーを組んでやったんだろう。何人で戦ったんだ?」
クックが聞いてくる。「それじゃ、実力が分からないだろ」と言いたそうな顔だ。
「えっと、3人パーティーを組んでいたんですが、倒したときは一対一でした。」
俺が正直に言うと、クックが呆れた顔で言ってきた。
「おい、千波矢。嘘はいけないぞ。いくら仕事にありつきたいからと言って、ランクEがオークマジシャンを一人でって無理にも程があるだろ。」
実際にはランクFの時に倒したんだが、これは言わない方がいいだろう。それにしても、ランクFでオークとタイマンってやっぱりおかしかったんだ。あの時、死ななくてよかった。・・・というかアンとギル、止めろよ。
さて、問題はどうやってこの疑いを晴らすかだが、ジョージさんの方を見ると顔が驚きの表情で固まっている。どうしたんだ?
「クック君。千波矢君が言ったことは真実のようだよ」
ジョージさんはそういうと机の上に水晶玉を机の上に置く。
「あのジョージさん、それはもしかして、嘘鑑定球。」
エミュが水晶玉を指差しながら震える声で言う。
「ああ、ギルドから借りておいた。わかったろ。彼の言っていることは真実だ。」




