116 二つの問題
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ギルドに着くとリナさんは暇そうにしていた。どうやら、朝の依頼手続きラッシュが終わって、ひと段落したばかりのようだ。俺が来たのに気づくと笑顔で話しかけてきた。
「今日は遅かったわね。依頼はどうします?」
「今日はちょっとお聞きしたいことがあってきたんです。」
「どうしたの、急にあらたまって。何かあったの?」
「実はお店を出したくて」
俺が用件を言いかけると、リナさんが慌てて聞いてきた。
「嘘。冒険者を止めちゃうの。せっかく、ギルド内での評判も良くなってきてるのに。冒険者の何が不満なの。誰かにいじめられたりしたの」
「ちょっと、落ち着いてください。まずは話を最後まで聞いてください。」
まくし立ててくるリナさんを落ち着かせて、俺は薬屋を開きたいこととを伝えた。
「つまり、生活を安定させるために薬屋を開きたいと。・・・。」
リナさんは少し考えこんでいる。
「えっとね。個人的には応援したいんだけど、二つ問題があるわ。」
「問題が二つですか。」
「ええ、これはギルド職員としては言うべきではないかもしれないけど、アンの親友として言わせてもらうわ。」
リナさんの顔は物凄く真剣だ。
「いい。薬屋がこの町に無い理由はとても簡単よ。薬の需要が少ないからよ。ほとんどが魔法で代用できるため、薬を使う人は少ないの。それと、材料を手に入れるのが大変なの。今、市場に出回っているのは冒険者が依頼のついでに採取したものがほとんどなの。」
なるほど、どうやらこの世界では調剤の地位が確立していないようだ。そのため、細々とやっているのだろう。ということは、薬屋を成功させるためには調剤の地位を向上させる必要があるということだ。
「もう一つの問題も深刻よ。普通なら、お店の申請は結構簡単に受理されるんだけど、あなたは受理されないかもしれないわ。」
「えっ。どういうことですか。」
「えっとね。先日の依頼で領主の息子のビルを助けたでしょ。」
「ええ、それなら領主の覚えもいいのでは?」
「ええ、領主の覚えはいいはずよ。クラウスさんもあなたに好印象を持っていたし。」
ならなぜ申請が受理されないんだ?やっぱり、よそ者には難しいのか?
「あのね。言いにくいんだけど、ビルがああなった原因を知ってる?」
「いいえ。半年ぐらい前に倒れたとしか聞いていませんが。」
「さすがにクラウスさんも話してないみたいね。あのね。9ヶ月前にアンが王都の教会に行く前にビルがアンに告白したの。それで見事に振られて、家に引きこもったの。その結果、ああなったの。ビルの性格からして絶対反対するわ。そうしたら、部下が忖度して不受理にする可能性が高いわ。」
・・・どうすれば、いいんだろう。




