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神の悪戯に翻弄される冒険者  作者: 佐神大地
第3章
112/330

112 運動不足と食べ過ぎ

「千波矢さん。申し訳ありません。」


 急にクラウスさんが謝ってきた。何について誤っているのだろう?


「本来なら、面接で採用を決めてから、治療法を伺うべきところを先に聞いてしまいました。」


 あっ。そういうことか。


「いえ、気になさらないでください。俺が先走っていっただけですから。」


「そう言ってもらうと助かります。」


「えっと、面接の結果は合格でいいんですよね。」


「もちろんです。坊ちゃんをよろしくお願いします。」


 執事はそういうと深々と頭を下げた。





 その後、クラウスさんに連れられて領主様の館に行き、問題の息子にあった。転移前、高校生であった俺はもちろん医学に詳しくなかったが、坊ちゃんを見た瞬間、一つの病名が頭をよぎった。これは確認しなくては。


「はじめまして。冒険者で薬剤師の千波矢と申します。」


「ああ、僕はこの町の領主の息子、ビル・クリケットだ。すまんが、きついので手短に頼むぞ。」


 ビルはそういうと従者からコップを受け取り水を飲む。額にはすごく汗をかいている。


「まずは確認したいんですが、いつも熱があり疲れやすいということですが、具体的にどのような感じですか?」


「ああ、見てのとおり、暑くてすぐに汗がでるんだ。それによく喉も渇く。少し動くとすぐに疲れて息が切れるから、最近はベッドで横になっていることが多いな。」


 そういうと、また水を飲んでいる。


「クラウスさんによると痛みもあるそうですが、今も痛いですか。」


「痛み?・・・ああ、動くと節々が痛いんだ。で、原因は分かったか?」


 ビルは誤魔化すように答える。もしかして、痛みは嘘か?そうなると、俺の予想で間違いないが最後に1つ聞くことがある。


「最後に、申し訳ありませんが、現在の体重と1年ほど前の体重をお聞かせいただいてもよろしいですか?」


 その言葉で従者の人の顔色が青くなる。おそらく体重の事はタブーなのだろう。ビルの顔色は真っ赤になっている。


「なぜ、そんなことをお前に言わないといけない。」


 ビルは怒鳴ってきた。まあ、仕方ないか。見た感じ、現在の体重は100キロを超えていそうだ。他人に知られたくないのも無理はない。


「ビル様の体重は現在90キロでございます。半年前、倒れられた時は70キロ、1年前の健康なときは58キロでございます。」


 クラウスさんは顔色一つ変えず、淡々とビルの秘密を喋っていく。


「クラウス。貴様、主人の秘密をよくも他人にばらしたな。」


 ビルがクラウスさんを非難しているが、クラウスさんは表情一つ変えない。


「ビル様。私の雇用主はあなたの御父上です。そして、御父上の御命令は『ビル様の病を治すために手を尽くせ』です。」


 そう言われると、ビルは何も言い返せなかった。


 それにしても、1年間で30キロ近く増えたんだ・・・。これはおそらく間違いないな。一応、D(ディー)に確認を取るか、この部屋にいる全員に向かって言った。


「病の原因は運動不足と食べ過ぎです。」



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