106 千波矢、目を覚ます。
俺は目を覚ますとベッドに横たわっていた。
「ここはどこだろう?」
見知らぬ天井を眺めながら、少しずつ状況を思い出していく。
・・・
・・・・・・
「そうだ。俺は・・・」
俺は神の領域に落ちたこと。アポカリプスという世界に転移したこと。そして、その世界で生活していることを思い出す。ここは現在、世話になっている部屋だ。確か、アンの両親が経営する宿の3階の部屋だ。
「夢の世界じゃなかったか。」
俺はポツリと呟き、体を起こそうとする。その時、俺は隣のイスに座って眠っている少女に気づく。
「アン?」
どうしてこんなところで寝ているんだ?まだ、頭の中に靄がかかっていて、はっきりと思い出せない。しばらくして少しだけ思い出した。確か南の平原から帰ってきて、マーサさんに出迎えられたんだ。そして・・・。しかし、どうしてもその先が思い出せなかった。
なぜ、アンがイスで寝ているのかは分からないが、このままではかわいそうだ。俺はアンをベッドに寝かせようとベッドから起き上がろうと体を動かす。しかし、思ったように体が動かせなかった。そして、その物音でアンが目を覚ます。
「千波矢さん。目が覚めたんですね。もう、3日も意識を失ってたんですよ。」
アンは泣きながら俺に抱きついてくる。俺はせっかく体を起こせたのにアンに押し倒される。アンは抱きついたまま泣き続けた。どうやら相当心配をかけたようだ。俺はアンの頭を撫でながら、アンが落ち着くのを待った。
「取り乱して、申し訳ありません。」
アンは顔を真っ赤にしながら謝ってきた。冷静になって、自分の状況に気づいたようだ。なにしろ、俺に抱きついてベッドに押し倒して10分以上泣いていたのだ。今はベッドの端にちょこんと座って真っ赤になっている。かわいい。
よく見るとアンもかなり疲れた感じだ。俺は3日、意識がなかったらしい。ということは、アンは3日間看病してくれていたのだろうか。
「どうやら、ずっと看病してくれていたみたいだね。ありがとう。」
俺がお礼を言うと、アンは更に真っ赤になって首を横に振っている。何か言っているが、もはや言葉になっていない。
「彼女として、当然です。」
アンの口から最後に出た言葉はそれだった。それを口にして、更にアンの顔が真っ赤になったのは言うまでもない。
「ところで、俺はどうして気を失ったのかな?」
俺の質問にアンの顔色が変わった。そして恐る恐る聞き返してきた。
「覚えていないんですか?」
「ああ、マーサさんに出迎えられたのまでは覚えてるんだけど、そこから思い出せないんだ。」
「え、えっと、私もよくわかりません。」
アンは戸惑いの表情を浮かべて答えた。




