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神の悪戯に翻弄される冒険者  作者: 佐神大地
第3章
100/330

100 この世界で薬は・・・

ついに100話目です。いつも読んでいただきありがとうございます。

「千波矢さん、そろそろ出発します?」


 アンが聞いてきたが、まだ準備ができていない。


「いや、出発は明日にしようか。後、道具屋と薬屋を見ておきたいんだ。」


「この町に薬の専門店はないです。薬は道具屋に売られています。それじゃあ、道具屋に案内しますね。」


 そういって、アンは道具屋に案内してくれる。



「こんにちは。」


 アンは元気よく道具屋の扉を開けて中に入る。


「いらっしゃい。あら、アンちゃんじゃない。昨日はたくさん飲まされてたみたいだけど、大丈夫?」


 カウンターに座っていた女性がアンに声を掛けてくる。どうやら昨日の歓迎会に出席していたようだ。


「はい、千波矢さんにお薬を作ってもらったので大丈夫です。マルゲリータおばさん。」


「そうなの。そういえば、調剤が得意って言ってたわね。余ってたらうちに卸してもらってもいいかしら。」


「ええ、構いませんよ。いくつぐらいいりますか。10個までなら大丈夫ですよ。」


「それじゃあ、全部もらっていいかしら。」


 俺は魔法のカバンから高解毒薬を10個取り出す。


「えっ」


 それを見たマルゲリータさんが声を上げる。

 ・・・しまった。魔法のカバンはレアだったんだ。見られたのはまずかったのか。どうやって誤魔化そう。

 マルゲリータさん震える指で俺の手元を指差している。


「千波矢さん。それ・・・高解毒薬よね。酔い止め薬じゃなくて。」


「・・・はいそうですが?」


「自分で調剤したの?」


「そうですが。」


 どうやら魔法のカバンではなく、高解毒薬に驚いたようだ。たしかD(ディー)によると高解毒薬はランクFの調剤レシピだったはずだ。


「高解毒薬は珍しいんですか?」


 俺が尋ねるとマルゲリータさんは首を縦に振る。


「市場に出回っているのは回復薬や解毒薬だけよ。酔い止め薬も滅多に出回らないわ。騎士団や高ランクの冒険者は高解毒薬や万能薬とかも使ってるみたいだけど・・・。」


 どうやらこの世界では薬をはあまり広まっていないようだ。


「栄養剤や気つけ薬はどうなんですか?」


「気つけ薬も時々仕入れるわね。けど、栄養剤って何?」


 栄養剤に至ってはマルゲリータさんは知らなかった。


「栄養剤は・・・」


 俺が栄養剤の説明をするとマルゲリータさんは思い当たるものがあったのだろう、手を叩いて頷く。


「あの薬、栄養剤っていうのね。あれは災害等の時にギルドや国から配られるだけよ。」


 その後、しばらく話をした後、いくつかの道具を購入して俺たちは宿に帰った。高解毒薬は需要が少ない、ということから買い取ってもらえなかった。



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