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進化論~レベル式進化説  作者: ツタンカーメン
1章 始まりの迷宮編
8/65

8決戦、しようぜ

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レイジ

リトルベビーバジリスク

Lv.1

HP45/45

MP10400/10400


skills

=normal:[頭痛耐性][疲労耐性]

=rare:[鑑定][収納]

=legend:[世界の声][スケープゴート]


魔法適性:無


称号:転生者 ネームドモンスター 魔素の王

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蛾のストックが尽きた。

収納内の非常食は無くなり、このままは死を待つしかない。

あれ以来、虚ろな目で全く同時にゴキュッと振り返るゴブリンがトラウマになっても休憩所から出られなかった。


怖いというか、生理的な嫌悪感である。


話は変わるが。


ゴキブリは人体に有害な物質は持っているわけではない。

下水道やトイレ、排水溝など非常に不衛生な場所を通っていることが多く、様々な雑菌、微生物が付着しているが、非常に栄養価が高い。

一部の地域では実際に食卓の上に現れることもあるというし、実際、1週間ほどの絶食と加熱処理を施せば食べられるらしい。

古来から薬用としても広く利用されており、害虫なのか益虫なのかよく分からない。


ところで、皆さん(日本人を想定)は、『栄養価が高』く、『薬用』にも利用されている『動物性蛋白質』と聞けば食べようと思うだろうか?


深く考えなければ、食べてもいいと思うかもしれない。


だが、それがゴキブリだったら?

食べようと思うだろうか。


雄でも雌でも、幼虫でも成虫でも、小さくても大きくても殺す。

黒でも茶でも、隠れるようなら見つけるまで探す。殺すまで探す。

非人道的な罠を平気で使用し、根絶を願う。

毒餌。毒ガス。集合フェロモンを利用して釣る。

何度でも叩く。念入りに殺す。

彼等より遥かに大きい我々が。


それが、生理的な嫌悪感というものだろう。


蜥蜴などの爬虫類を飼う人は、餌として接する機会が多いが、例えばその中の一匹、たった一匹が逃げ出したらどうするだろうか。

家の中で繁殖してくれれば餌代が浮いてラッキー、とでも思うだろうか。


例えそう思う猛者がいたとして、


『この昆虫は、栄養価が高く、適切な処理を施せば食べることが可能です。今日の夕飯のおかずにしますね。ほら、あなたのトカゲもあんなに美味しそうに食べているじゃありませんか』


さあ、どうしよう?

料理番組よろしく『ここに1週間絶食させたゴキブリを用意しました』なんて言われれば、いつも見ているゴキブリが少し違う風に見えるのではないだろうか。


(あ、おれ今蜥蜴だったわ…え?食べれるの?アレ(ゴキブリ))


流石に遠慮させて頂こう。蜥蜴になっても頭脳は同じ。迷宮にいる転生者!!

さて、お巫山戯はここまでにして、今後どうするか考えよう。


(正直あの軍団に勝てる気がしないけど……)


HPが少し上がった。これは部屋を走り回っていたからだろう。

MPはかなり上がった。しかし、現状唯一の魔力の使い道である身体強化が、この身体ではろくな威力を発揮しない。筋力が上がっても、蜥蜴の体では不意打ちが精々だ。

尻尾を打ちつければ吸魔結晶を砕くほどの威力があるが、尻尾が痛い上にわざわざ背中を向ける必要がある。

短い手足で重い攻撃が出来るはずもなく、牙も無い噛みつきではろくなダメージにならないだろう。


とはいえとっくに食料が尽き、これ以上粘って空腹状態で闘うことになるよりは、今出た方がいいだろう。

進化して20センチ程度になったので、かつてのような隠密行動は出来ないだろうが、ゴブリンに会わないように入口を探して脱出する。

見つかれば闘う。

そういう方針で行こう。


おれは部屋を出て、そろりそろりと壁を走る。

通路の長さと傾斜、曲がり角の角度、通路の幅を目測し、脳内で地図に変換していく。

1つ目の曲がり角だ。

角度はだいたい80~85度といったところか。

PRGのダンジョンのように、通路が全て直交している訳では無いので脳内マッピングではいずれ限界が来るだろう。


まずは頭だけ出して様子を伺う。

いきなり矢が飛んできたりはしないだろう。


「グギャァ」


(ファッ!?)


一匹のゴブリンと目が合った。

ゴブリンの公用語で『餌ゴブ』とでも言ったのだろうか、彼の連れが一斉に振り向いた。

操られた感じではない。むしろ指をさした友達に『あっ、UFO!』と言われて、(あーはいはい、わかってるって。でも振り向いてあげるよ)な感じの振り返りに近い。

数は6、装備は古びたものばかり。

収納から石を取り出し、尻尾のフルスイングで弾き飛ばす。


(痛った!?)


HP42/45


尻尾がじんじんと熱を発する。威力はそこそこ高く、一匹の頭蓋骨を陥没させ、後ろの2体を巻き込んで吹き飛ばした。

痛みに思わず手が離れ、ベチャッと床に落下した。


「キュロォ!!」


投げるのでは無く打つということは、力積が同じだかは触時間の短さに反比例して(尻尾が石に加えた力)=(石が尻尾に加えた抗力)が大きくなる。

というかつまり、尻尾を振るった速さで飛んできたか石にぶつかったようなものだ。多分。


普通に考えて石を手で殴り飛ばすようなものじゃないか。


痛すぎるので、一旦退避。


【経験値を30獲得しました】


経験値30。本来は半分で15だ。

前に倒したゴブリンから得られた経験値は、10だったり5だったり、かなりバラけていた。

『記憶』には無かったが、人間が知らない経験値分配法則があるのだろう。

そもそも彼らは、魔物がレベルを持つことやレベル上限のことを知らない。

同じ種類の魔物の普通種でも強いものから弱いものまでいる、という事と、種族内で強い魔物や長く生きた魔物が進化することがある、という事は知っているようだ。

それはつまり魔物のレベルに関することなのだが。

鑑定では名前、種族名、残存HPとHP最大値、職業と称号しか表示されない。

ちなみに魔物に職業やそれによる補正は無い。

自分で開示するしかレベルや魔力、スキルの情報を他者が知る術はない。

そして、[世界の声]を持たない人間達に経験値の具体的な数字、そしてそれから測れるレベルアップ迄の必要経験値を知ることは出来ない。


恐らくだが、経験値、経験の度合いとは文字通り経験の度合い、濃さを数値化したものだ。

ならば、死闘の末倒したゴブリンと、いきなり大声を出されてびっくりして転けたら石で頭を打って死んだゴブリン、どちらも貢献度でいえば100%だろうが、どちらの経験が濃いだろうか?

当然前者だ。

毒や罠等のトラップや偶然の産物で倒したものは経験値が下がってもおかしくない。

石を落として10、投げて15なら、普通に戦えば20か25くらいだろうか。


そしてそれから気になることが1つ。


レベルが上がらなかった。


進化による必要経験値の増加は予想していたが、ゴブリン1匹でLv.2に上がらなかったのは予想外だ。


それはさて置き尻尾の痛みが引いてきたので探索を再開しよう。

戦闘中にこんな事にならないよう、痛みに慣れる必要があるかもしれない。

頭痛耐性がついたのだが。


レベル上げもしたいが安全第一という事で、収納していた吸魔結晶を通路に置きながら歩いていく。これで背後からの奇襲はないだろう。

退路を確保するという意味でも良い手だろう。

小さなものではなく、そこそこ大きな塊なので、どうやら魔力を込めなければ一瞬で効力を失うようだ。

バカみたいに魔力をを吸うが、魔力増強時に放出して無駄になる魔力の使い道として用いたこともあり、フル充電のものがかなりの数発生した。

この前のような小さいものなら、効果がかなり悪い代わりに、魔力を込めなくても元々篭っていた魔力で2、3時間は持つ。

しかし、今使っているもの――おれの体の半分くらいのもの――は魔力を3000程込めてようやく2時間強、と言った所だ。


大きさが大きくなれば指数関数的に効果があがり、ついでに消費魔力も爆発的に増加するという性質がある。


いくつかの角を曲がったところで、単独行動のゴブリンに出会ったので狩ることにする。

背後からカサカサ這って奇襲を仕掛けようとしたが、あと少しのところで気づかれる。

振り向いて棍棒を構えたゴブリンの足の甲に石を出し、それを踏んで全力でジャンプする。


「ギャァァォォオァ!!」


足の甲って、黒板消しとか落ちてきたら痛いよね。

身体の構造的に似通っていそうな"亜人種"のゴブリンなら急所も似たようなものだろう。


足、腰、腹と走って首元まで到達した。こいつ臭いな。

初めのうちはおれを棍棒で叩こうとして自分のHPを減らしていたゴブリンは、棍棒を捨てて素手で掴みかかってくる。首回りを回って回避しながら首筋に噛み付く。


(そろそろ牙生えないかな〜.....正直攻撃手段が無さすぎるんだが)


牙が生えていない為、全力で噛み付いてもダメージは微々たるものだ。

10数回噛み付いてようやく倒しきる。


(もしかしなくても一噛みでHP1削れてなくない?)


【経験値を38獲得しました】


まだレベルは上がらないか…

探索を続けよう。レベルはそのうち上がるだろう。

さらに歩くと、ヒポクテ草が群生している壁があった。

薬草にヒポ~という名前が多いのは"ヒットポイント"が語源だろうか。


苔むした岩壁で、辺り一面に緑草が生えている。

取れるものは時間や保存、運搬方法の許す限りで取れるだけとるというのが信条なので、かなり時間をかけてプチプチちぎって収納しておく。

時間停止効果もあるようだし、品質低下はないだろう。


そして。


「グガァ」


ゴブリン達の住処に辿り着いた。


「ゲガ、ゴガァ!!」


ゴキュッ!!!



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