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進化論~レベル式進化説  作者: ツタンカーメン
4章 帝都
65/65

65 幕間 勇者

「さて……勇者諸君。今日まででこの世界の一般常識や王国の歴史まで学んだと聞いている。訓練の傍ら、大変だっただろう。お祝い……に、なるか分からぬが、今日から諸君らに自由外出権を与える。いつ出ていってもいいし、いつ帰ってきてもいい。王城にいる間は衣食住は保証しよう。城に留まるもよし、別の国に行くもよし。ただし……王国に敵対しないでくれよ?」


召喚されて半月程。

何も知らないまま外に出るのは問題だという至極最もな意見に、勇者達は城に留まることを半ば強制されていた。

ここでの生活は快適だったが、未だ見ぬ異世界への興味が勝ったのだろう。

クラスメイトの大半が、その顔に驚きと喜びを浮かべていた。


「陛下、城にいる間は引き続き騎士の方々や宮廷魔道士の方々に訓練をつけて頂きたいのですが、可能でしょうか?」

「勿論だ。存分に励め」

「ありがとうございます」


いくらか問答を続けて、その日の昼食の時間は終わった。


「由香!由香!外出自由だって!どうする!?」

「うーん、私はまだ残るかなぁ。いずれは外に行ってみたいけど、もっともっと強くなってからだね。日本に比べれば治安も悪いし危険がいっぱいみたいだし」

「えー、でも……いや、そうね。浮かれてたわ〜……他の子たちは大丈夫かな?まあ何人かは出ていきそうだけど」



何人かは出ていくだろう。

そして、大半は今夜までに帰りまた翌日出ていく。

何も無ければ徐々に出ていく人は増えるだろうが、誰かが死んだという報告が入ればどうだろうか。

それでも、『自由』の持つ魔力に負けて、いずれは大半が外で生活を始めるだろう。



「せめて自衛できる力くらいは付けないとね」

「んー、そうね!」



私は武器を扱うのがあまり得意ではないので、魔法を高める事にした。

まあ、武術に凄い適性があってもそうしただろうけど。

部屋に戻って鍵を掛け、魔力操作の練習を始める。


魔法を使うには魔力量と魔力操作が最も大事となる。


魔力操作は練習あるのみ、魔力量はレベル上げや魔力の消費と回復を繰り返すなどの方法で増加する。


ただし、魔力の使いすぎには要注意。

MPが0になれば死ぬほど辛い頭痛や腹痛、吐き気、倦怠感等が1度に襲ってくるらしく、更に使い続ければHPが減っていく。


魔力とは不思議なモノだ。


触れる事は出来ず、しかし確かにそこにある。

操ることは出来ても触れられない謎のエネルギーが様々な現象を引き起こす。

魔法を使えば魔力の残滓は魔素となって空中に散らばり、生物に吸収され魔力となる。


魔素の濃すぎるものを食べれば体調を崩し、最悪の場合死に至る。


つまり私達の身体には魔力、あるいは魔素に関連するなんらかの器官があるのだろう。

それは地球にいた頃もあったのだろうか。


「……っと、いけない。そろそろ訓練の時間ね……たしか今日は、レベル上げも兼ねた魔物との実戦経験、だっけ?」


強制ではないため行かない人も居るようだけど、騎士達のおかげでなんの心配もなくレベル上げができると言うことなら、行かない訳にはいかない。

強制ではなかったが、行かないと言った人たちには引くほど念入りな説得を重ねその大半を意見を変えるに至った。


初の実戦。これは王様が外出許可を出すための条件だったかのように語った『この世界の一般常識』、その卒業試験のようなものだろう。


日本が平和な国だったということや、ほぼ全員が食べ物に困ったことも死にかけた事も動物を殺したことも無い、──この世界から見れば──過度な温室育ちである事は初日の質問タイムで彼を大いに驚かせたことの一つ。


これを乗り越えれば、クラスの皆の浮かれた感じもマシになると思う。


正直、あの王様を信用していいのかわからない。

彼はあまりに私達に甘すぎる。

単純に良い人なのかもしれないし、懐柔目的かもしれないけど……


どうもそうは思えない。

かれは私達が世界の希望、人類の切り札であるかのように話していたが……


実際、それほどの期待は感じられない。


どうでもいいから放置する。

餌代もかかるが大した負担ではないから好きにさせる。


きっと王様の中で私達は、そういった『もしもの時の保険』ですらないナニカに位置付けられている。

少なくとも彼の態度からはそう感じる。



なら──────勇者を超える切り札とは?



「ここらで出る魔物は弱い!今のお前達なら負けることは無いだろう!とりあえず、試合と死合いの違いを感じてみろ……以上だ!」


ルール。

森の一角、紐で区切られた範囲を出ない事。

非常用の信号は、本当に非常の時しかうたない事。

非常の時には躊躇わず使う事。

鐘が鳴れば帰ってくる事。


「さぁ……行ってこい!」


早く自分の実力を試したくてしょうがなかったのだろう。

数人の男子が、我先にと森へ入っていった。


護衛の騎士は狩場の境界と森の中を巡回するらしい。


さて……


この数キロ四方の小さな狩場にどのくらい魔物がいるかは分からない。

狩り尽くされる前に、私もさっさと行動しよう。



森に入って、クラスメイト達の声、魔法の音、剣戟の音を避けて進む。


「……ん。居た……"ポイズンクロウ"」


魔法で足止め、ダメージを与えて短剣でトドメ。


「フォレストウルフ……初っ端から運がいい」


ウルフ種は意外な事にゴブリンやオークなどの低級の亜人種よりも高い知能を持つ。

魔物であること、知能が高いこと。

これが後々重要な要素になる。


「ええっと、確か……こうで、こう?絵心無いから魔法陣はキツいわね……っと、出来た。下級不死族生成(クリエイトアンデッド)……戻り来るもの(レヴァナント)


狼の血で描かれた魔法陣。

その上に横たわった狼の死体に毒々しい紫が浸透し、浸透し……


「臭ぁ……」


起き上がる。

レヴァナント。

その力は弱いが、殺したものを同じくレヴァナントに変化させる厄介な性質を持つ。

が、その力は非常に弱いため非常に珍しい種族である。



「あと、せめて1頭……」



捜しに行こうと歩き始めるが、その必要はなかったようだ。

血の匂いに釣られたのか、2体のフォレストウルフがやってくる。


「狼ってもっとでかい群れ作るんじゃ……?」


疑問ではあるが目の前の戦いに集中しよう。


「ダークバレット、ヴェノムクロウ」


闇の弾丸と毒の爪に倒れたフォレストウルフにレヴァナントが駆け寄る。


「ステイ。"待て"よ。この2匹はあなたの護衛」


短剣でトドメを刺し──Lv.2に上がった──血を指に着けて魔方陣を描き始める。

今度の魔法陣はレヴァナントのものよりだいぶ簡単だ。


下級不死族生成(クリエイトアンデッド)……骨兵(ボーンナイト)


紫に光る魔法陣。

その上の死体がどろりと崩れる。

肉が爛れ皮が落ち……狼のスケルトンが起き上がる。


「命令。生き物を殺しなさい。あなた達はトドメを刺さないように。襲われた場合以外は勝てる相手とだけ戦うこと」


できるだけ簡単な命令にしたけど、この命令をどのくらい理解しているかは分からない。


「名前、付けとこうかしら。あなたはサリー」


1体目のボーンナイトにサリーと名付ける。

魔力が足りないかもしれない、と思い2体一気に名付けることはしなかったが。


「変ね……魔力が吸われない?」


そのまま30秒ほど待つが、何も起こらなかった。おかしいとは思いつつも、誰かが来る前に終わらせたいので2体目に移る。


「あなたは、そうね……オリヴィアね」


こんどは凄い勢いで魔力が吸われていった。

──あ、これ……足りない、かも


「名付けが終わったら、直ぐに向こうへ行きなさい。ロープよりこちら側に、戻って、こない、こと……」


おぞましい程の頭痛、吐き気に寒気、目眩に襲われ、意識が落ちた。



「──か!──で──か!」



「大丈夫ですか!」


巡回の騎士、かな?

多分……鎧がそうだし。

何とか上体を起こして、なんともないと告げる。


「魔力量の調整に……失敗、して」

「なるほど、そうでしたか。初めての実戦ですからね。気をつけてください」

「ええ。有難うございます」


レベルが3に上がっていることを確認し、満面の笑みを浮かべた。




「……で、良かったのか?アレは」

「ふん。分かっているだろう?我々に他者の助けなど必要ない」

「……ふふ、もちろんだ。俺たちは……」

「俺達人間は、何にでもなれる。それだけの力を手に入れた」

「ああ。神話の戯言だったな……いや、もう戯言とは呼べんな」

「で、あとどのくらいかかる?」

「さあな。2週間かひと月か……ふた月かもしれん」

「そうか。もう少しだな……もう20年待ったんだ。今更2ヶ月くらいなんて事ないさ」

「何を言ってる。こっちは200年だぞ」

「ああ、そうだったな…………」



薄暗い部屋に、二人分の笑い声が木霊する。



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[一言] 続きがきになる。ブクマしたぜ
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