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進化論~レベル式進化説  作者: ツタンカーメン
3章 迷宮都市
63/65

63 出立

「よし、集まったな」


翌朝。

おれ達は冒険者ギルドに集まっていた。


「ではレイジさん、こちらの荷物をお願いしても?」

「お父さん来るって言ってたっけ?」

「ちょうど帝都に用事が出来たし」

「ふふ、帝都に着く頃にはここにいる全員、アタシの料理無しじゃ生きていけない体ね。お得意様が増えるわ」

「久しぶりに帝都の鍛冶師ギルドに顔を出そうと思ってのう」

「レイジさんの戦いが見れるかと思うと感激っす!」

「B以下の冒険者は餌付けしても大した収入は見込めないから1食限定ね」

「ちょっとレイジ、帝都に行くって急すぎない?用意に手間取ったわ全く」

「諸々の報告をしないといかんからなぁ」

「道中の防御は『鉄壁』の──」

「どんな魔物が出ても『氷爆』──」

「俺──」

「私──」


普段通りのラッセル、なぜか姿を見せたヒュウガ、黒い部分が明らかになっていくキャサリン。

名前は忘れたけど鍛冶師のドワーフ、冒険者達(Sランク2名含む)、公爵とその騎士。


「ふっ、酒を造っていて遅れたぜ……レイジ旅団の待ち合わせ場所はここか?」


"酒"のジン。

ついに二つ名が飲料になってしまったようだ。


「ミレー商会の──」


なぜ来た。

城下もしれっとした顔で御者のふりをしている。

部下も50人くらい居るし、多過ぎだろ。

流石に裏部署担当の部下は来ていない。



なんか多くなったけどじゃあ行きますか、そうですな等と会話をしていると……



「待ってェェェェエ!!」



鬼の形相で泣きそうになっているスレンダが降りてきた。



「待て待て待て!多すぎるよな?Sランクゥゥゥゥ!お前達まで!」

「いいじゃん別に帝都行くぐらい」

「いっぺんに行き過ぎだ!!はーい注目、今この都市は紙防御だからちょっとしたことで滅びます!」


こら、周りの奴らに聞かせるな。


「マジで?」

「ヤバくない?」

「チョベリバ」

「つか、ウチらも着いてった方が良くない?」

「確かに……帝都といえば死の山脈に近く麓の樹海にも、それこそここ周辺に比べても劣らない程の強さと数の魔物が居ます。中堅以上の冒険者なら仕事にあぶれることも無いでしょう」

「じゃあ行く?」

「……一考の余地あり……!」



それを聞いて、ふらつくスレンダ。


「くっ、仕方ない……"アレ"を使うしか……ッ!」


大きく息を吸い込み。


「お前らよく聞け!新しいダンジョンが見つかった!」


そんなことを言った。

が。


「いや、オレらは元々帝都に用事があって、せっかくだし他の帝都に行くっつー連中と一緒に行こうって話を」

「だから、新しい迷宮はちょっとの間お預けね」


再び崩れ落ちたスレンダ。


「なんてことだ……冒険者ギルド、ここまで腐敗が進んでいたのか。もはや頭を取り替えるしか……」

「レイジ……真面目な話、今日がこの街の歴史の転換点かもしれん」


力なく横たわったスレンダが呟く。

さすがに可愛そうになったので、収納から通信石つきの首飾りを出す。


「ラッセル、ギルドマスターが通信石を買うそうだ……これで連絡してくれたら、何時でも戻る。おれには1箇所までマーキングした場所に瞬間移動するスキルがある。まぁ劣化版転移能力だな……」


普通に転移持ってますと言うと、俺の魔力量がスゴい事はバレてるから国の偉い人の馬車にさられるかもしれない。

偉い人の馬車なら持ってるけど。皇家の馬車らしいねあの紋章。

帝都に行くんだからついでに返しておくか。


「ならいっか。取り敢えず調査を急ピッチで進めて…レイジ、帝都に着くまでには新ダンジョンの調査を終わらせるから、通信したらそっちの公爵に通信石を貸してやってくれ。カーマイン公爵、新ダンジョンの詳細もついでに皇帝陛下と向こうのギルドマスターに伝えておいてくれるか?」

「もちろんだ」


即座に立ち直るあたりさすがと言ったところか。

まあとにかく、こうして総勢100名弱で帝都に向かう事になった。



「おおレイジか!今日はどうした?……って、なんか多いなおい」

「帝都に向かう事になったんだ。後ろは全部連れだな」

「……戦争でもしに行くのか?」

「まさか。世界を平和にするための旅だよ」


門衛にはものすごく不審がられた。


おれが商品を収納した為フリーになった15台ほどの馬車に乗ってすすむ100人。


半分は真っ白のスーツにも似た服のミレー商会の人達。なんで白かは聞かないよ。

残り半分は冒険者らしく何もかもバラバラだ。


「はいはーい!そういえば、帝都まではどのルートで行くんですかー?」


弓を持った女冒険者が、馬車の音に負けじと声を張る。

それを聞いて、いつの間にかリーダーっぽいポジに着いていたおれは皇室騎士の眼鏡に声をかける。


「帝都までどう行くんですか?」


敬語で話すべきかどうか迷った時は、取り敢えず悪い人じゃなさそうなら敬語。


「小さな宿場町を辿って行くつもりでしたが、この人数では……」

「じゃあみんなで決めようか。はーい今からアンケートとるよーー!あ、ラッセル、この拡声器買います。の前にいくつか選択肢を出して欲しいんだけど。帝都まで、どのルートで行きたいですかーー!?」


すると直ぐに学園都市コース!だとかシーレコース!といった言葉が飛び出してくる。


『取り敢えず、あまりにルートをはずれたものは事前審査で落しまーす。それじゃあ候補は4個!①学園都市経由のコース。提案者のイスファさんのお子さんは現在学園都市の学園に通っているそうです!②シーレを通るコース。歓楽街シーレですね。娼館目当てでしょうか『翼の無い鷲』リーダー、バードンさん!③どの街にもよらず野宿。提案者は『鉄壁』のギリル!野宿中の一行の盾となり時には矛になり皆様の安眠を守るでしょう!④死の山脈を探検しながら行く!提案者はーー……「領民を守る、それに理由はいらない」!カーマイン公爵ッ!危溢るるかの山脈でも我々領民を守ってくださることでしょー!あ、ちやみに俺は投票しないよ。それではシンキングターイム!多数決は2分後から!』


おれが投票したら過半数を占めるヴァルハラのみんながおれを支持して手を上げる可能性があるからな。


ヴァルハラ。主神の宮殿、戦死者の館、戦士の魂(エインヘリヤル)の集う場所。

我ながら変な名前付けたな。

ヴォイドのヴに引っ張られたか。



①の学園都市にも興味があるし歓楽街というのにも行ってみたい。娼館以外の娯楽施設も豊富な場所らしいし。

③は面白いかもしれない。リザードマン時代のやり直し感は否めないがこの人数でやれば修学旅行的楽しさも出るかもしれない。

④は……大丈夫なのかコレ。死者とかでないよな?


さて、そろそろ2分だな。


『はーい、それじゃ多数決とるよー!ルールは挙手制、1人1回まで、手をあげないのもアリ。じゃあまずは①!』

「はーい!」

「前から学園都市に行ってみたいと思ってたんだ!」

『バードンさんは娼館に行きたかったんじゃなかったですかねー』

「ち、違う!だから!ちょ、やめ、殴らない!」


あー、2分かけて誤解を解いたのにまた殴られて……


『じゃあ②は?』

「ハイハイハイ!俺は②だぜ!あの街には色んな酒があるからなぁ!」

』はい、③の人〜!』

「皆よく考えろ!火を囲んで、自分でとった獲物を食うなんて最高だぞ!?しかも料理人はこの方だ!彼……彼女のは1度食べたら忘れられねぇ!でも別に④でも可!」

「あらあら、うふふ」

『あーなんかこれヤな予感するなぁ……』


①7人②16人③20人。


残りの50名以上はどこいったんですかねー。



『④!』

「「「「「「「はい!」」」」」」」

『何故だ!』


案の定だよ!


「フッフッフ……説明しよう!Sランクなら何度か言ったことはあるかもしれない『死の山脈』!強大な魔物!珍しい薬草!当然行きたいだろう。だが……俺じゃあ多分死ぬから行けない!だがこのメンツを見ろ!ミレー商会のヤツらも商品運んでなけりゃ歴戦の傭兵の風格だぜ。こいつらは結構できる。残りはフォリオトップ級の冒険者達に彼等のお墨付きばかり!今なら行ける!今だから行く!英雄の戦いを近くで見れるかもしれない!……行きたい!と、そう思ったわけだ。俺らは冒険者だしな。それにこんなイベント楽しそうじゃないか。学園時代を思い出すぜ」

『フッ仕方ない。このおれの戦いを間近で見たいと申すか』

「あ、ああ……申す」

『よし、ルートは死の山脈コースで決定だ!』

「「「「「「うぉおおお!」」」」」」

『あ、嫌だって奴は強制しない。護衛は……いらんとして馬車もやるし食料も提供する。もちろん死の山脈ではちゃんと高ランク冒険者達が守ってくれる。ちなみにおれはE』

「お前が守れー!」

『誰だ今自分よりランクが低い冒険者に「ボ、ボク怖いよぅ、助けてよぅ」なんて言った奴は!名乗り出ろ!』

「ランク詐欺すんじゃねー!」

「上等だオラァ!」

「ちょっと男子うるさーい!」

「暴れないでー!」


うるさいよぉぉぉ!魔物がよってくるよぉぉぉ!

修学旅行じゃないんだよォォォオ!


「フッしかし、あのレイジが……親切にも色々教えてやった俺に対して『そうか、では冒険者ギルドの場所を教えろ』とか言ってたアイツが……成長したな」


黒歴史やめてッ!


「昔はこんな感じだったし。てか、あの時はすまんかったな。人と喋るのが数年ぶりで」

「オゥ……大変だったんだな」



しばらく待ったが、脱退者はいなかった。


『よーしッ!そろそろ馬車の揺れで舌を噛む奴が出始めるから、馬車を走らせながら道を整備しよう!』

「どうやってだよ!」

『遠距離攻撃で道の表面を削って、土魔法で整地して押し固める!火と水は基本使用禁止!』

「出来るか!」

『出来るし。つーか無理なら黙っててくれませんー?ww』

「そんなんお前だけだわ!」

『えーじゃあいいよ、S級救世主(メサイア)たるレイジ様がよちよち歩きしかできないボクちゃん達をキャリーしてあげるからww』

「なんだとてめー!」

「おいおいィ」

「喧嘩売ってんのか?」

『せーの』

「「「その喧嘩買ったァ!……合いの手入れんなぁ!」」」


なんでも息ぴったりの三つ子冒険者。


「せんせー、男子たちが槍で枕投げしてますぅ」


ミス氷爆も煽り性能高いね。


「お前もそのモード止めろやぁ!!!」


あぁ、こういうのっていいねぇ。


勉強は大変だったけど、またあの頃に戻りたいもんだぜ






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