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進化論~レベル式進化説  作者: ツタンカーメン
3章 迷宮都市
55/65

55 襲撃 the end

「やるか……龍化、身体強化、マジックアーマー」


鱗や角、鉤爪が生えてくる際に少しムズムズするが、目や尾ほどは気にならない。

力を入れていないのに眼孔内で暴れる眼球と、ゴバアッと生えてくる尾。

尾自体はリザードマン時代からあったので違和感はないが、"生えてくる"違和感がヤバい。


「…………」


勿論、普通の着物に尻尾用の穴があるはずも無く、袴の隙間を押し広げ、裾から……と言うか、右足の隣から出現した。

黒かった。


[形状変化]で尻尾用の隙間を作り、意味も無く尻尾を振るって若木をへし折る。


「よし…いくか」


一本歯の下駄を履いておれの筋力で地面を蹴ると下駄が埋まって進めないので、地面を蹴る時は下駄に貼り付けたマジックハンドの位置を固定し、それを蹴っている。

この下駄は何故か脱げにくいので、これで問題の大半は解決。

というかそもそも、靴がなくなったところでマジックハンドで代用できるのだが。




龍化と身体強化で基礎ステータスを底上げし、体の表面にマジックハンドを纏うことでパワードスーツよろしく筋力と防御力を上げる。

襲撃地点に1番近いところに転移し、瞬足補正の超脚力で魔物の群れに突っ込む……が、効率が悪いので空中から全体を俯瞰し、マジックスピアの雨で数を減らすことにする。

二段ジャンプで人間側の上空に立つ。


「『魔槍・グングニール』」


北欧の主神オーディンが所有する、決して的を射損なわず、自然に手元に帰ってくるという万物を貫く不壊の槍。


イメージは完璧だろう。

細部にまでこだわる必要は無い。姿形は関係無い。

槍状で、絶対的な威力を持っていればそれで良い。


そのためのイメージ。


「いけ」


ちゅどどドドドドドドドドドドドドドどっッ!!


「……うん。爽快」


小さいゴブリンもでかいゴブリンも纏めて駆除できる。

範囲攻撃最高。


「……ん?やっぱりあの巨人硬くね?ゴブリン顔の……ん?」


エンペラー。


「っはーー……レベルアップ酔いぃ……で、エンペラーか……至近距離で直接叩き込むしかないか」




時折使うスキルはどれもゴブリンらしからぬ強さだったが、結局は少し動きが早くて大きくて硬いだけだった。


(よし。次は……まあ、さっきと同じくグングニルでいいか)


ドン、ドン、ドン……


(うわぁ……ゴジラかよ)


森の木々を薙ぎ倒して現れたのは、でかいトカゲ……翼がないからドラゴンってやつだろう。

目測だが確実に20メートルは超えている巨体が突進してくるのにはそれなりに恐怖を覚えるが……


「ーーーーー!ーーォーー!ォオオオーーーーーー!」


鳴き声が機械音?というか合成音っぽい。


ジャンピング噛みつきを躱し腕を落とす。


ズザザーと滑りながら着地したドラゴンは唸りながら油断なくこちらを伺っている。

着地ひとつ取ってもカッコイイ。さすがドラゴン。



ブレスをマナハンドで受け止める。

眩しくて目を瞑っている間に第2射が発射されて。まさかのハメ技か、コノヤロウ。


対処法も思いつかないので、マジックハンドで攻撃することにする。

魔法攻撃がマジックバリアをすり抜けるということは、マジックスピアも魔法障壁をすり抜けるという事だ。


最も、水と火、光と闇がすり抜ける事は検証済みだが土と風がどうなるかは知らない。


マナハンドが実体は持つが魔法によらないものをすり抜ける事を考えれば、マジックハンドは実態を持っていても魔法によるものならすり抜けるのかもしれない。

魔法で生み出された土と自然の土がどう違うかは分からないが水魔法がすり抜けたのだから土だってすり抜けるだろう。

なんとも不思議で意味不明な話ではあるが。


全力で濃縮した槍に回転を加え、ブレスの中を飛ばす。


ドッパァァア!


腹に当たったようで、内臓が飛び散る。

そのまま走ってドラゴンの上に立ち、新しい槍で心臓を貫いた。


何故か絶望したような表情で泣いているカグヤの元に走り、一週間ぶりの会話をする。


「大丈夫?」


2言3言話して、魔物の殲滅に戻る。


とはいえ、キリが無さすぎる。


「マジックシールド」


マジックハンドは魔法を透過し、マナハンドは魔法以外を透過する。


だから。


「マナシールド」


最近は、2つを同時に使うようにしている。

これがまた脳に負荷がかかる。


さて、閉じ込めたはいいがどうしたものか。


「魔法の1つも見せておけば"無属性"についてはスキルということで通せるか……」


数万、下手したら数十万居る魔物の群れを1匹ずつ倒す訳にも行かないので、超広範囲致死攻撃魔法が必要だ。


できればド派手なのがいいな……


マジックハンドで空中に浮上がる。理由は単純、目立つ為だ。


「ウォーター、ファイア」


水蒸気爆発は、効果範囲も込める魔力も分からないから置いといて。

熱せられた水は水蒸気に変わる。

この時点で弱いゴブリンは蒸し焼きになって死んでいく。

結界の上部だけマジックシールドを消せば、水蒸気に押しやられた空気が出てゆく。

水蒸気はマナシールドに阻まれて外に出られない。

このまま窒息を待ってもいいが……派手な演出を決める為に、


「ウォーター」


マジックシールドを戻して全力で固定し、マナシールドを上部だけ解除。

そこから水を降らせる。


「んぎきぎぎぎきぎがぎぐぐぐぐぐががぐ、ぅ、おおおぁあっ!」


水は同質量の水蒸気の体積の約1650分の1。

空間が広すぎて全体の温度が一定なはずがないと思うが、水と水蒸気が共存しているから多分100℃だろう。

100℃における飽和水蒸気量は1気圧、つまり結界内には水蒸気だけが存在する。

魔物の肺とかに少しくらい他の気体が残っているかもしれないが、全部が水蒸気と仮定すると、水で冷やされた水蒸気は凝縮し、真空になる。

最も、真空状態での水の沸点は下がることを考慮すれば、せいぜい100分の1気圧と言ったところだろう。


ボコッ

ベチャッ

パンッ!!!



脳がオーバーヒートし頭の血管がプチプチ切れて……

目や鼻からどろりとした液体が流れ落ちる。


(死んだ?)

【はい。1回】


マジックシールドの上部を開ける。


ゴッッオオォォォッッッ!!!


誰も巻き込まないよう、慎重に。


『『『『『おおぉおおぉおお!』』』』』

「なんだあいつ!」

「誰!?」

「強すぎだろ……」


いつの間にかカグヤの傍にロザリアが居た。


(フゥーー、レベルアップ酔いキツイィ……しかし……改めて見ると、凄いデカイな。顔だけで1、2メートルはある……2人を一口で飲み込めそうだ……流石ファンタジー。翼ないけど)


その時。

ドラゴンがピクリと動いたような気がした。


「──っ!」


気が、では無い。


実際に動いて……顎を開き……


(間に合わない!!)


走る。



なぜ?殺したはず。経験値は入っていた。間違いなく殺した。心臓を突いて。

1部の蛇はピット器官という、熱を感知する感覚器を持っている。ドラゴンも?知るか。何故?

頭を落とされた蛇が噛み付く事がある……ドラゴンも同じ?ふざけるな。スケールが違うだろ。


勇者パーティが邪龍を倒しました。龍は死にましたが何故か切り落とされた頭が勇者に噛みつきました、なんてあってたまるか。



でも……実際に動いているんだからしょうが無い。


(転移!)


グシュ


「え……?」


ボタボタと血が垂れ、草を濡らす。


く……不味い。限界だ。

渾身の力で顎を押し返し、収納。


(やっぱ死んでんじゃねぇか…………)


そしておれは、そのまま倒れた。


「レイジッ!?」

「あ、ぁあ……」


もう、意識を保つことも出来そうにない。


「レイジ!ねぇ!レイジ!」

「レイジ、起きてよぉ……」


俺を見下ろす2人の美女に心配をかけないように少し微笑む。

その動きだけで辛い。


全身が火照って、小さな動作が大きく響く。

その度に身体中が脳に痛みを訴えかける。




こんな……ことで……




まさか……



レベルアップ酔い(こんなこと)ごときで、身体が動かなくなるなんて。

今襲われたら死んでしまうじゃないか。


2人の声が遠く聞こえる。そしておれの意識は、闇に溶けていった。





「ん……」

「おう、起きたか?英雄殿」

「うむ。苦しゅうないぞ。で、どこだここは」

「ギルドだ。もう夜だぞ?お前は約半日寝てたからな。2人はずっと付きっきりで看病してたんだ……後でお礼言ってやれ」

「へぇ……そっか」


付きっきりで、か。

カグヤの好意には薄々気付いていたけど……ロザリアは、いや、言われてみれば依頼を受けていない日は大体2人で街を歩いていたような。


「おーい、起きろ」

「うみゅ……」

「んん……」

「……」


起きねー……まあ、疲れているのは俺のせいなんだが。

2人をそっとベッドに寝かし、部屋を出た。


「祝勝会じゃーー!」


冒険者ギルドの広い敷地に篝火やBBQセットが並び、冒険者や傭兵達が酒を飲み肉を食ってどんちゃん騒ぎを始める。肉と酒はちゃんと有料みたいだが。


飲み比べを挑んできた冒険者をことごとく返り討ちにして居るうちに、いつの間にかほろ酔い気分になる。



市民の一部も参加し、パリピ共が醸し出すその異様な熱気に包まれた元陰キャは夜風に当たるためにギルド最上階のテラスに不法侵入した。


(いや、別に友達とはよく喋るし。陰キャではないな……陽キャでもないけど)


「レイジ?主役がこんな所にいていいの?」

「いいんだよ。あそこはちょっと賑やかすぎるし」

「ふーん」


しばらく喋らずに星を見上げた。

日本の夜空の何倍もの星が綺麗に輝く空に、これまた地球のものの何倍も大きい月が輝いている。


「……ねえ」

「なに?」

「ありがとう。助けてくれて」

「うん」

「死ぬんだと思った」

「うん」

「ゴブリンエンペラーなんて出てきて……キングも10体以上いたし」


ちょっとでかいヤツが10匹くらいいたの、あれキングか。


「でも、助けてくれて……それがレイジで、嬉しかった」

「うん」

「……」

「……」

「……」

「月が綺麗だね」

「?そうですね」


通じないよな、そりゃあ。


「カグヤ。おれは……」

「ぅおーーいぃ!レイジじゃねえかぁー!そんなとこで油売ってないで降りてこい!飲み比べだ!」

「またアイツ……懲りないな」

「ほら。やっぱり主役が不在じゃ盛り上がらないって」

「……はぁ。分かった、行くよ。カグヤ、看病ありがとう」


ただのレベルアップ酔いだけど。


手すりを乗り越えて、下駄が地面に刺さらないようマジックハンドを使ってふわりと降り立つ。



「ちょ、飛び降り……うん、大丈夫そうね」

「なあ、奢りでいいだろ?なぁ!」

「そーだよ、俺今日金ねぇんだよ」

「嘘つくな馬鹿野郎。それに金ねぇなら飲みに来るんじゃねぇよ馬鹿野郎」


命を懸けで戦って、稼いだ金はパーっと使ってどんちゃん騒ぎ。

いつもより危険が大きくて、だからこそ乗り越えた時はいつもより騒ぐ。


「なくても来ねぇとだろ!?今日はよォ!」

「そもそもこういうのはジョッキ2杯持って1番活躍したおれの所に『奢らせてくれ!』つって来るべきだろ」

「その分稼ぐんだからいいじゃねぇかよー、てかさっさと奢れや」

「んー、そんなこと言っていいのかなー。奢るも奢らないも俺の気分次第なんだけどなー」

「「「「「「「申し訳ございませんでした、レイジ様」」」」」」」

「よしよし、素直でよろしい。奢ってやろう」

「おい!今日の肉と酒は全部レイジが持つ!どんどん持ってきてくれ!」

「待て待て。勝手に決めるな……"今からの分は"だ。夜明けまでだぞ」

「おっしゃァ!聞いたか!!破産させてやれ!」

「もし、仮に、万が一……頼みすぎてるやつとか片っ端からアイテムボックスに入れてるやつを見つけたら……」

「……見つけたら……?」


上空に槍を100本ほど作る。


「連 帯 責 任」

「うおぉおぉお!」

「どんどん持ってこーい」

「全員、隣のヤツを見張るんだ!」







「へぇ、そんな事が…………まぁ、いいや……こんばんは、カグヤさん」

「!!カーマ……」

「ぁあ……やっぱり、僕がいないとね……」


崩れ落ちた女を支え、男は姿を消した。



「あれ?カグヤちゃん……?おかしいな、来たと思ったけど……」




最近暑すぎる

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