52 襲撃弐
「撃て撃て撃てェェエエ工!ハハハッ」
まずは、この攻撃で雑魚の数を減らす。
見た感じ、ゴブリンやオーガが多い。
いずれも群れで行動する魔物だが。
領主軍がゴブリンの軍勢を蹴散らし、そこに混じった数組のAランクパーティが上位種を屠る。
ゴブリン以外はうちの仕事だ。
「やはり流石だな。軍隊は」
「そうだろうそうだろう」
「だが、今回のゴブリンは見えるだけで万はいるぞ?まだまだ出てくるだろう」
「問題ないな。単体のゴブリンは非常に弱い。しかし、群れになると途端に脅威になる。だが……こちらだって、統率された1つの軍なのだよ。」
「とはいえ、一人一人が強い訳では無い」
「そう。つまり群れでは強いが個体値があまり高くないのはこちらも同じという事だ。」
「だが、上位種を冒険者が抑えれば……」
「…最強だ」
「フフフ……」
「ハハハ……」
((この感じ。上から見下ろすという快感と、何もしなくても敵が減っていくというこの感じ…))
「たまらんな」
「何がだ」
「お二人共!暇なら戦闘に参加して下さい!」
「おお、指名だぞ?レン」
「お前を指さしてなかったか?カミィ」
「お二人共!」
「仕方ない……少し、準備運動でもするか」
「仕方ねぇ……五分でどっちが多く倒すか勝負でもするか?」
「大剣ぶん回してS級が出た時に疲れて動けない、なんてことにはなるなよ?」
「お前がな」
「私は……素手!で、いくから」
戦い続けるということは普通にキツイ。
握力が機能しなくなり武器を落とす。
判断力も鈍くなり、身体能力も落ちる。
回復魔法も万能じゃない。傷は治るが体力を消耗するし、それは痛みや疲れを癒す、というか誤魔化す魔法も例外ではない。
S級の魔物なら、全力の状態でも私一人では倒せない。
それほど強い。
Sランククラスのカーマインと私という最高戦力を遊ばせる形になったとしても。
万全の対策をしなければ。
「多いな……まさか帝級が居るのか?」
私は258、カミィは216で私の勝ちだった。
「かもな……なんだって、私が倒した中には、3体の!ゴブリンジェネラル!が、いたからな」
通常、キングが従えるジェネラルの数は1~50。ジェネラルが従えるナイトの数が50~100、ナイトが従えるゴブリンの数が10~100程度。
つまりキング1に対して最大でジェネラル50、ナイト5000、普通のゴブリン50万が付き従う。
ただし、より上位の魔物が従える群れにおいては、それぞれが従える下位種の数は減る。……例えば、ゴブリンキングがトップならジェネラル40、ナイト3000、ゴブリン9万程度が上限と考えられている。
それでも十分多いのだが。
肥大化した群れは、食料を求めて人里を襲う。人間は殺して喰らい、畑を耕し家畜を繁殖させ、ゴブリンの王国を築くのだ。
「ああ。そうだな……。先程ゴブリンキングは確認されたが……もしかしたら、オーガも……。ゴブリンキングならまだしも、オーガキングとなると……厄介だぞ」
「一応王都の方にも正式な救助要請を送ったが……間に合うかどうか」
「全くだ。元老院のジジイ共は頭が固い。"似非予言師"が来るといえば、それは来るのだ」
「エセ……初めて聞いたぞ。そんなこと言われてるのか?」
「うむ。俺が広めた。[超直感]の予言にも似た察知能力から取って、予言師ニ似テ非ナル者という意味だ」
「お前、これ終わったら覚えとけよ」
「ああ。覚えておいてやろう。無事に終わればな」
そして。
ゴブリンキングが現れた。
「出るぜ」
「ああ。あいつを倒せば……ひとまず、この群れは散るか逃げるかするだろう」
「生き残ってるゴブリンは……大体2、3万ってとこだな。数が違いすぎる……やはり殲滅速度は遅いか。ここで必ず頭を潰すぞ」
「ああ。向こうでもA級上位が出てるみたいだし、ゴブキンはS級の中では下位。二人で殺るぞ」
しかし、ゴブリンキングを斬るには、まず3万のゴブリンの群れを突破しなければならない。
「斬り込むか?」
「死ぬぞ」
「うーん……とりあえず大砲とかで狙ってみるか」
「当たると思ってんの?」
「やって見なきゃわからんだろ?おい、それであのデカブツ狙って見てくれ」
ズドン!ズドン!ズドン!
「当たらねぇ……」
「あ、でも今ジェネラルに当たった」
「当てるだけなら、私の弓で何とかできますよ?」
「マジで?1500メートル位あるよ?」
「当てるだけなら」
ヒュッ!
「おおー……怒ってるね」
「もっといってやれ」
ヒュヒュヒュッ
「来る?来る?」
「お、来た。下っ端薙ぎ払いながら突っ込んでくるぞ」
「頭悪そうだし……20、いや10分だな」
錬金術とか土魔法とかで砲弾を作っている砲手が若干引いている。
先程からロザリアがドヤ顔でフフ……フフ……と呟きながら髪をファサファサかき上げているからだろう。
「……えっと、流石だなロザリア」
「フッ、当然よ」
満足げ。良かったね。
「ギャオォオオオォオ!!」
「来たか……下がってろ!!周りの雑魚は頼むぞ!」
大将同士の一騎打ち。(1対2だけど)
当然、敵味方戦いの手を止めて観戦、という訳には行かない。
前後左右、あらゆる場所で遠巻きにしながらも闘いは続いている。
「おぉおおお!」
「フンっ!」
キングの斧を避け、懐に入る。
膝蹴りを剣の腹で受け流し、上から斧の柄が迫ってくるので、1度下がる。
背後に回ったカミィが炎を纏う大剣を振り下ろす。
前へ飛ぶことで私への追い打ちと大剣の回避を同時に行い、額に生えた太い角で防御の為体の前に掲げた大剣を下からかち上げる。
そのまま私の首を狙って左右から迫る牙は、すんでの所空を切った。
しかし、私の体はすでに重心が崩れている。
「……クッ!」
バク転で距離を取ると共に、風を纏って速度を上げた蹴りで顎を蹴り上げる。
1番効率がいい動きだと思ったが……
流石に、戦闘中に敵から目を離すのは不味いな。
視界の端でなんとかとらえたゴブリンキングのパンチを大剣の腹で受ける。
逆立ちの状態で右手と左足で剣を支えるが、当然のごとく力負けして吹っ飛ばされる。
景色が高速で移動する中、先程蹴り上げた足に染みる鈍い痛み。
(……さすがに硬いッ…)
まるで鋼の塊だ。そこらの石なら容易く蹴り砕くのに。
手をつくと同時に抉りとった土を、キングの顔を目掛けて飛ばす。
風魔法の援護を受けて鋭く飛ぶ石混じりの土を顔を振って避けようとするが、私の魔法で軌道を弄っている土塊はその目を追尾する。
ゴブリンキングは一瞬、目を閉じ……
は、しなかった。
シュワッ!
水の盾。
私は空中で体制を整え、剣を地面に刺して減速。
即座に地面を蹴って走る。
「水…単属性か?ゴブリンなら複属性は無さそうだが……」
盾が消えた時、そこにあったのは……
水の鞭に足をとられて体勢を崩した親友と、これでトドメと言わんばかりの大ぶりの斬撃。
咄嗟に風の槍をゴブリンキングの右脚目がけて飛ばす。
間に合わない…………ッ
「バァァアーーーーニングッ!ソォォォオオウルッ!」
炎を纏い、噴射して斧を躱す。
同時に、大量の魔力を糧に激しく燃え上がる大剣を振り下ろす。
トドメのつもりの大振りの一撃が仇になったな。
完全に重心が崩れている。
避けようとして身を逸らすが……
「翠嵐の矢」
ザシュッ!
ロザリアの矢だ。見事に右目を射抜いている。
少し遅れて俺の魔法が着弾する。
「ほいよっ!」
よろけるゴブリンキングの右腕を華麗に斬り飛ばす私。
カッコよすぎ。
「カミィ!」
「おうよ!」
((畳み掛けるッ!))
右眼ごと矢を引き抜き、眼孔と右脚を水で覆う。
水属性の回復魔法だろう。
当然回復の暇を与える気は無い。
と言うか──
これで決める!
「旋 ッ 風ッ……」
「破 山 灼 焔 斬!」
「おい!熱い!私がトドメさそうとしてんのに邪魔すんな!」
「倒したからいいだろ!」
「今の斬撃の余波で死ぬとこだったんだよ!しかもなんだよ破山って!山壊したことなんてねーだろが!」
「フッ……皆の者!ゴブリンキングはこの俺、カーマイン・フォリオが討ち取ったぞ!」
「「「「おおおおお!」」」」
「あ゛ーー!!!うぜーー!」
大将を打ち取ったことでゴブリンは統率を失い、瓦解する。
大半は背を向けて逃げだし、それに釣られて周りの魔物にも逃げ出すものが現れる。
だが、襲撃は始まったばかり。




