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進化論~レベル式進化説  作者: ツタンカーメン
3章 迷宮都市
48/65

48 ヴぉいど

話を合わせる……か。

あまり喋らない方がいいだろうか?

登場するのももうちょっと後みたいだし、さっきの昇降盤の仕組みでも見に行こう。

あの円盤はワイヤーで吊り下げられている訳でもないし、円柱の空洞の内部を上下する円柱の底面でも無い。

どのような姿勢制御システムが内包されているのだろうか。



あれ。来た道をもどってしまった。

どういう事だろう。試されているとかそういう訳ではなさそうだけど。


レイジが居ないのなら止める者はいないし、少し大袈裟に話させてもらおう。


部下達は大袈裟すぎる完璧超人ヴォイド像を抱くだろうが、その程度の期待に答えられないのなら彼はそれまでの男だったという事だ。


(あれほどの色と輝き……どれ程の才能力を持っているだろう)


戦闘力は先程見た通り。殺気だけで護衛2人と私の身動きを封じ、魔力もろくに使わず素手のまま1歩も動かずセアラを捕らえた。

彼女の胸の感触に一瞬動揺したが、完璧に隙を着いた3人の攻撃をいとも簡単にねじ伏せた。

しかも彼は、1日1度死んでも蘇る。

どんなチート野郎だ。


次に測るのは知力。

部下達に指示を出させ、その練度で智謀の程を測らせてもらおう。


「かの御方のによってもたらされた大いなる啓示により、私は知恵と智識、そして何より強さを頂いた!この組織でのお前達の立ち位置は変わらない。ただ、私の上にヴォイド様が着くだけだ。これは決定事項である。が、いきなり言われて戸惑う者も居るだろう。認められない者も居るだろう。そういったものは、この後ヴォイド様の元へ行け。余程の愚物でない限り、その偉大さを知るだろう。遠慮は不要。ヴォイド様は、お前達が自らの意思で、嬉嬉として、ヴォイド様の為に自らの才能を最大限に発揮することを望んでおられる!……この私のような、狂気にも似た忠誠とそれが生み出す圧倒的な才の開花を」


彼の言い分は正しい。人間は──少なくとも人族は怠慢でただでさえ効率が悪い上、脆くてすぐ使い物にならなくなるし、支配を強めれば直ぐに不平不満を垂れ流し、そういう時に限って謎の団結力を発揮する厄介な生き物だ。


自由にさせても駄目。

奴隷として強制労役につかせるのも駄目。

かと言って体罰や賃金等を引き合いに出して恐怖で縛ろうとしても駄目。


そんな人族を最も効率良く扱うには、只の忠誠心や愛では不足。

必要なもの……それは狂気の忠誠と狂おしい程の愛だ。


狂気が生み出す、常識外れの進化。


私の話術で深層心理に介入している今なら、ヴォイドへの忠誠を底上げできる。

理想が高くなり、生半可なものでは逆に失望が大きくなるが、彼なら大丈夫だろう。

というかどこまで行ってるんだ。さっきからずっとヴォイド様登場!な感じを出していたのに。


「ヴォイド様はこう仰られた!『商売、研究、開発、諜報、武力、政治、教育……なんでも出来る組織』。言うなれば小さな国である。それが、我々がそうあるよう求められ、そうあるよう務める理想の姿だ。そして、こう続けられた。『世界中の全てを支配しろ(とは言わないけど)』」


この時、52名の部下達が声を出さずに大きくざわついた。


「即ち、かの御方の望みは……『世界征服』」


そして、廊下の奥から白ずくめの不審者が現れた。


「これ以上は言う必要も無いだろう。これで解散だ。因みにヴォイド様の執務室は10階の私の執務室の反対だが、くだらない些事を持ち込むなよ……?」




解散早い!謎の魔法陣と内部を転がる金属球の位置によって水平に保っているらしいことだけは分かったが、使われない時は最下階に待機している昇降盤を呼び出す際に、どのようにして階を判定しどういった仕組みで魔力が転送されて動力となるのかは全くわからなかった。

最後の抵抗として透かし見して見たが、スマホやパソコンの内部構造を視認しても何がなにやら分からないのと同じで1ミリも理解できなかった。



「今日はヴォイド様の貴重なお時間を頂いている。質問だろうが模擬戦闘だろうが受けてくださる……御方の偉大さを肌に刻むと良い」


待て、聞いてねぇ!?しかもさっきから御方とか至高なるとか何なんだ一体。


……何を考えているんだあいつは……(頑張ってねてへぺろ☆)……か。

許さん。というかてへぺろとかリアルで言うやつ初めて見た。

追いかけてシバきたい。

しかし、こちらを射すくめる52×2の瞳を無視する訳にも行かない。

仕方ない…さっさと終わらせてシバくか。


「……ヴォイド様。私共の商会は、ジョーカー様の指示であまり発展させすぎるなと命じられておりましたが、今後はどのようにすれば良いでしょうか」

「まだそのままでいい。人が足りないからな」


現在のこの組織は、様々な大商会や商会連合を敵に回せるほどの規模ではない。

商売の駆け引きで勝てても、荷馬車や商会の襲撃や幹部の暗殺への対策が立たなければ意味が無い。


「ヴォイド様。模擬戦闘を」

「後でまとめてやってやる」

「ちなみに武器は何を使われるのでしょうか?」

「フッ……」


ボスが鉈や斧を使うと聞けば部下達はどう思うだろうか。

なんか微妙だな、格好つかないな、なんて思われはしないだろうか。


他の組織のボスが蛇鞭とかモーニングスターとか奇抜な武器を使う中でおれだけ鉈、とか。


「お前達がおれに徒手では分が悪いと感じさせることが出来たら……見せてやろう」


これできっと大丈夫。武器は今度探せばいいや。

インパクト強めでいくなら大剣かな。


「ヴォイド様、それでは──」

「こちらの企画ですが──」

「闇ギルド"アジ・ダハーカ"の拠点──」

「学術都市で発表された新型の──」


脳をフル回転させて最良の回答を絞り出す。


(──ッ!?不味い!髪色が……)


「ヴォイド様!我らがミレー商会は今後どのような経営方針でやっていけばよろしいでしょうか?」


仕方が無い……!

何か被るもの……できれば白……!


咄嗟に収納していた表面が白い兜を頭上に出現させる。

記憶にある中で、白くて髪を完全に覆える物はこれしかない。

ついでにでてきた長剣は、良い感じに床に刺さったのでとりあえず手を置いてみる。

確か黒冥剣みたいな名前だった。


「なるほど……!まずは、追い詰められた他の商会からの刺客へ対抗する為、裏の人間によらない幹部の護衛を組織する必要がある……。ミレー商会は表の顔なので……」

「黒い部分があってはいけない。だが、武力衝突になれば……いや、そうなる前に、裏の力が要る」


(腕輪の効力が1日3分しかもたないのは持たないのはなぜだ……?真っ先に上がるのは3分以上使えば壊れる、つまり持続時間の限界が3分で、再び使うには一日のインターバルが必要という事だが……それなら"24時間に3分"なはず。1日3分。つまり『午前0時』という時間に何らかの鍵があるか、或いは製作者が意図的に時間設定をしたと考えられる……)


「なら、結局はうちが商会に介入するってこと?」

「それでは、今後のうちの活動によってはミレー商会の信用問題に発展する恐れが……。勿論、バレなければいいという話ではあるが」


(どれだ……。エンチャント、つまり魔力の刻印な訳だが……これに付与された効果は[偽装]だけ。つまりこれ全てで偽装の完全体となる刻印……)


腕輪の内部にいくつも刻印された複雑な幾何学模様を注視する。


(魔法陣に似通った所があるな……やはり技術の根底は魔法陣学になるようだが……そもそも魔法陣学自体が廃れて僅かな記録しか残っていない上、それを知らないんだから手が出せない……)


「いや、ミレー商会を含めた主要商会の情報を盗むという形を取れば」

「だとしても──」


(魔法陣は全部で5つ。なら……『髪を白くする』『その色で保つ』『3分計る』『0時を知らせる』……と言ったところか。つまり、魔力を過剰に流さないよう3分で強制的に『髪を白くする』に魔力が供給されなくなる。その役目が5つ目?)


ここまでだって勝手な想像だ。この後さらにどの魔法陣がどの意味を持つかを推測しなければいけない。


(『3分計る』と5つ目は繋がっているはず。制限時間を過ぎた後、魔力を流した時5つ目が『髪を白くする』より前にある。5つ目と『0時を知らせる』は繋がっている、『白』と『保つ』は同時に機能しなければならないから、恐らくこの2つ。で、魔力が流れないようになっているコレが『0時』だとすると、5つ目と『3分』も決まる。魔力を通常通り流せる状態で、『白』と『保つ』魔法陣を調整しながら魔力を流せば……)


客観的に見れば神憑り的とさえ言えるほどの緻密な魔力捜査で、魔力を浸透させる。


バキン、と音を立てて腕輪が砕けた。


(くそ……っ)


続いて2つ目も、魔力回路がイカれてしまった。


(何故だ……これの仕組みは、5番目さえ切り抜ければ回路を破壊しない限り機能するはず……0時になれば復活するなら、5つ目にも穴があるはずなのに……ない。内部からしか魔力が通らない……?しかし、『0時』の起動の魔力をは……?まさか、残留魔力を使っている?そもそも5つ目は、『魔力を拒絶する魔方陣』?何だそれは。魔力を込める事で魔力を拒絶するするようになるとでも言うのか?)


しかし、実際に5つ目の魔法陣によっておれが操る魔力はあらぬ方向へ散っていく。


「つまり、ミレー商会は守りの人員に力を入れ、攻撃に関しては、商売で正面から攻める以外はこちらに任せる」

「問題は土地……。商売をするには商品が必要。どんな商品にしろ、原料を育てたり加工する為の土地が要る」


(まさか、こいつの役割は魔力の拒絶ではなく魔力回路……というか、魔力を循環させるという魔法陣の最も根本的な能力によって魔力を決められた方向に導く…………)


「……それだけか」


そう。たったそれだけの、簡単な話。


「「!!」」

「も、申し訳ございません──!」


(なら、いくら魔力を通しても伝わらない。3分と0時は5つ目を動かす為に存在している。退かすのは0時……はい、出来た。一応壊しておくか。『白くする』と『保つ』さえあれば十分だ)


魔力の過剰に流すことで……


(いや、間違ってたらどうしよ)


「悔しいけど、私には皆目検討がつかないわ……!」

「僕もです……」


(いけるはず!いける……いけ!いけ……いけたッ!)


兜を収納し、質疑応答に戻る。


(えっと……どこまで話したっけ?)


「申し訳ございません」

「我らには、ヴォイド様の深謀遠慮の淵に立つことさえ叶わないようです……」

「どうか、無知蒙昧たる我等に、貴方様の深淵の如き智謀を御教授頂けませんでしょうか」

「(は?)ならん」

「!しかし……」

「控えろ、ルイス!御方に意見する気か?」

「意見、か。それを咎める気は無い。私とて間違うこともあれば、お前達がより良い案を閃くこともあるだろう」

「ご謙遜を……」

「事実だ。先程の話に戻ろうか。(聞いてなかったけど)いいか、私はお前達に完全を求めている訳では無い」

「それは……ッ、我等が愚かな、」

「最後まで聞け。生まれながらに完全なものなどない。人間は、試行によって正解を導く出し、間違いを正すことによってのみ完全に近付くのだ。与えられる事に慣れるな。牙が落ちるぞ」


合ってるか……?この返しで正解か?


「「ははぁッ!」」


涙を流して平伏し……そのまま動かない。なにか間違えただろうか。


「もう質問は無いのか?なら、模擬戦だ」


つつがなくボコした。


組織の名前が無いので付けてと懇願されたので適当にヴァルハラとつぶやき、その後本命の城下をシバいてビルを出た。





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