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進化論~レベル式進化説  作者: ツタンカーメン
3章 迷宮都市
40/65

40 飯

10時半か。

朝っぱらから飲み比べとはさすが自由業。

いい感じに時間が潰せたし金も増えたしでおれにとってはいい事ずくめだったが。


おれとジンの飲み比べのせいでほかの冒険者達もテンション爆上げで酒を飲みまくったらしく、ぞろぞろと酒場から出ていく。

ギルドに行くのかと思いきや皆帰っていった。

まぁ、酔いは判断力を低下させるから正しい選択かもしれないが……

正しい選択が出来てる時点で言う程判断力が低下している訳では無いはずなので、ただ面倒くさがっているだけだろう。


「……帰るか」


どうせカグヤさんも家に居るだろう。早く着いたなら早く出ればいいだけの事。


「ただ〜いまぁ」

「あ、おかえりなさい」

「おーカグヤさん。オッサンは?」

「酒飲んでくる!って言ってギルド行ったわよ。あ、緑茶でいい?」

「うん、ありがと」


~その頃ヒュウガ~

「誰もいない……寂しい」




「でもやっぱり最低でも大金貨はするご飯奢ってもらうなんて……やっぱり申し訳ないよ」

(まあそうだろうな……だって100万だもん。でもここの貨幣制度に触れたのがついこないだの事だし、日本では小切手とかを除けば1の最高額紙幣でも1枚で1万なのに……大金貨1枚で100万って言われても現実感ないしな……)

「大丈夫だよ、今ギルド行って白金貨3枚稼いできたから」

「ブフッ…!…あーー、ゴメンなさい!」

「あ、いや全部避けたから大丈夫」


数時間で3000万稼いできたって言えばそりゃ驚くか……。

一般的に討伐依頼の方が採取依頼より報酬が高い傾向にある。

さらに、討伐報酬の他に素材売却金が手に入る為、採取系は人気が低い。

夢見る冒険者達は採取なんて地味だ、と考える。

採取依頼を受けるのは調子が悪い時か臆病なヤツ、という認識が出来あがり、冒険者達は滅多に採取依頼に手を出さない。

そして、彼等は自分の装備に関しては割と繊細だが、それ以外に対してはぞんざいだ……まぁ、男に関しては。

つまり、採取してきたはいいが状態が悪いとして査定額が低くなるという事を幾度となく経験してきたので採取依頼が嫌いなのだ。

これは"王国"の常識だが、ここでも大して変わらないだろう。


「なに、今の変態的な動き……」

「え゛、そんな変だった?最低限の動きで避けただけなんだけど」

「いや……ゴメンなさい。それより白金貨3枚って……なにしたの?」

「ドワーフとの飲み比べで自分に白金貨賭けたんだけど……イイね。賭けって。ハマりそう」

「ダメです!その考えは!多分!」

「まーいいや、風呂入ってくる」

「またですか?」

「好きなの。風呂。暇だし」

「いってらっしゃい……?」


湯を張って身を沈める……アルコール摂取後の風呂は危険だと聞いたこともあるが、別になんともなかった。


「お待たせ〜………………ぇ?カグヤ、さん、であってる?」

「合ってますよ?」

「いや、そういう服も着るんですね」


黒を基調とした、美しくも派手すぎないドレス。

会って2日目でそういう服も着るんですねはなかったかな。


「着ますよそりゃ……」

「非常にお似合いです」

「なんですかその敬語は……いや、緊張しちゃって。っていうかおれもなにかちゃんとした服買ってきます。あと5分あるんで」

「あ、それだったらお父さんのがありますけど、着ます?」

「サイズあうかな?」

「大丈夫だと思うわ。体格似てるし」

「じゃー着て来る」

「それ数年前にお父さんが皇帝陛下に謁見した時に着たんだけど、いまだにちょくちょく自慢してきてウザイのよねー」

「勝手に着ていいのかな……」

「まあ、服そのものに価値を見いだしてるわけじゃなさそうだし……大丈夫よ、多分」


黒い燕尾服……黒ばっかりだな。さっきのドレスといい、この服といい……黒髪だからか?



([自動修復]も[快適気温]も[形状変化(小)]も[認識阻害]も[使用者固定]もついてないのか……勝ったな)


着方は単純。


「終ったよ」

「あ、レイジさ、……レイジさん?ですか?」

「そうだけど」

「いや、あの……なんでもないですっ!!」

「え、顔赤いけどどうしたの?」

「大丈夫ですっ!」

(なるほど……きっとおれがイケメンすぎるから)

【そうでしょうね】

(お、おう……なんか調子狂うな。オマエが素直に……)

【は?何言ってるんですか気持ち悪い。私は常に正しいのです。貴方が間違えば否定し、あなたが正しいことを言えば肯定します】

(……そ、)

【チャンスです。ココで一気に畳み掛けましょう】

(なんのチャンスだよ)

【一気に口説き落としましょう】

(……ん?は?何言っちゃってんのオマエ)

【ハーレムメンバーを確保しようと】

「大丈夫なのか?」

【イヤですか。イヤでもせめて脳裏に焼き付けるように、ほら攻略対象は手で顔を覆って俯いていますので手を退けて下から覗き込みあわよくばそのまま唇を】

(……………………よし、覗き込むところまではやろう。心配だもんな。ほんとに大丈夫か心配だもんな)

「ほんとに大丈夫?」

「わきゃぁぁぁっ!?」

(やめといた方が良かった……)


攻略対象って、ここは恋愛ゲームの世界じゃないぞ。




「すいません、お騒がせしました」

「何故敬語……まいいや、行こうか。空いてなかったらどうする?」

「空いてなかったら……折角ですし、買い物とか……付き合って頂けると……」

「うん、いいね。そうしよう」


建物を出て鍵を閉める。手を握る勇気はない。


「……なんか、めっちゃ見られてない?カグヤさん」

「いや、レイジさんも大概だと思いますけど」







「えぇぇー!?レイジクン!?」

「なんでそんな驚くんだ、店長」

「こ、この方が……」

「店長なんて言わないで!アタシにはキャサリンって立派な名前があるの!」

「そ、そうか……」

「それで、来てくれたってことは彼氏になr」

「ヨルムンガンドのステーキとかない?」

「あるか!」


キャサリンって言うのか、このオカマは……

カグヤさんは食い入るようにメニューを見ている。

メニューには料理のイメージ絵が書いてあるが値段は書いていない。


「じゃあ……リヴァイアサンの」

「"海神"が討伐されたことは無いわよ」

「え、じゃあ何があるの」

「何があるのって言われても、なんの話よ?もうちょい範囲絞ってちょうだい」

「まあいいや、オススメで」

「じゃあなんで聞いたのよ!」

「カグヤさん……カーグヤさーん」

「あ、はい!私はこのおむらいす、をお願いします」


相変わらず名称手抜きだな。何処々々産のなんたらかんたらのなんちゃら風ナントカみたいな長い名前は好きではないが、もうちょっとアピールした方がいいのではないか。


「出来たわよー」

「はっや!」

「今日の注文は、面倒な下ごしらえとかなかったから」

「お、美味しそうな匂い…………!」

「おまちどうさま〜〜おむらいす2つよ。コカトリスキングの卵と肉、最高級のお米と最高級のトマトと最高級の色々を使って最高のシェフが作った逸品よ」

「自分で言うか」


おむらいすか……正直もう少しガッツリ食べたかったが。

それなりの量があるし満足するかは食べてみないとわからない。


「えへへ、お揃いですね」

「料理ってお揃いって言うの?」

「ちょっとちょっと、誰よこの子。なんか良い雰囲気だけど、ロザリアちゃんとアタシの事忘れてもらっちゃ困るわよ」

「いや、ロザリアとは付き合ってないって言ったじゃん。それにアタシさんに心当たりはないな」

「むう、いけずぅ」

「うっせー」

「美味しい!これ美味しいです!」

「ありがとう、えっと……」

「あ、彼女はカグヤさん。冒険者ギルドの受付嬢」

「かぐやちゃん、モタモタしてると取られるわよ?」

「へ?」


オカマ、こっちを見るな。こっちを意味深に見るんじゃない。


「ちちち、違いますよ!?」

「なァんだ、違うんだ……にしても、レイジクン昨日より魅力的に見えるわぁ。これはアタシも本気でアタックしようかしら」

「!ですよね!いきなりイケメンになりましたよね!」

「そうよね。きっとアタシを意識してるのね」

「(そんなワケあるか……)あぁ、それ多分、昨日の服は[認識阻害]ついてるからだと思うよ」

「そ、そうなのね……それにしても、普通の靴履いたらアタシと同じくらいの目線なのね」

「ああ。あれは単に性能がいいってだけじゃなくて、自分の印象が変わるようにって意味があって」

「どうしてかしら?コンプレックスでもあるの?低身長って訳でもないのに」

「いや。おれは有名になりたいんだ」

「へぇー。やっぱり男の人はそういうものなの?」

「うーん……有名になりたい、チヤホヤされたいって気持ちも当然あるけど、有名になるのは……なんと言ったらいいかな、()()()()()()()()()()()()有名になりたいんだ」

「どういうこと?有名になればなるほど、むしろ締め付けられる傾向にあると思うけど」

「うん。例えばおれは黒目黒髪、和服に刀、高下駄を履いているると身長は大体185センチくらいだ。そうしたら、今ここにいる燕尾服を着た身長175位のおれが、仮面を被り髪を染めて斧を持って暴れ出す。そうすれば、誰もおれに気付かない(・・・・・・・・・・)


捕まえ初めて、おれに気付く。

まぁ、大量殺人だとか帝城襲撃みたいな大きな事件を起こすつもりならその程度のキャラ、その程度の変装ではまるで足りないだろうが。

魔法があるこの世界では、誤魔化す側のレベルもも見破る側のレベルも、はっきり言って地球より断然高い。

それでも、"先入観"は使える。

特に武器や魔法。

剣士が剣以外を振るう事はまず無いし、弓士が弓以外を持つことも無い。


「変装時の自分が有名になって、色々捜査されない限りはね」

「なるほどね。ちょっと出歩いたり色街に行ったりするくらいなら、むしろ元の自分が有名な方が変装の効果が高いってこと?」

「そうそう。というかいつまでいるんだ。もう食べ終わるぞ」

「他に客がいないからイイのよ。ね、かぐやちゃん?」

「あ、はい!いいんじゃないでしょうか」


悪いオカマじゃない事を見抜いたのか。

予め言っていたとはいえ、店長……キャサリンの異様な風貌を見ても驚きを露わにしなかったし、まさかこういうの大丈夫系だったか。


「「ごちそうさまでした」」

「お代は、そうね。大体大金貨2枚ってところね」


腕は超一流、使う素材も超希少品なのに、金額設定もネーミングも適当すぎる……

職人気質というヤツだろうか。


「はい。大金貨2枚」

「毎度あり〜また来てねぇ」


ちょっと大きめのオムライスが100万……


「だ、大金貨……すいませんすいません」

「へへへ、これは体で返してもらわねぇとなぁ」

「……何言ってるんですか。全然危機察知反応しないんですけど」

「危機とし認識していなければ……そう例えば、満更でもないとおもってたり」

「……」

「すいません」


美人にジト目で睨まれるのは……意外と悪くないッ!


「話は戻るけど、ホントに何かさせようとか思ってないし、奢るって言ったのおれだし気にしないでいいよ」

「でも、それじゃ……実際にお金払うまでは浮かれてて頭に入ってこなかったけど……ホントに大金貨1枚のお昼ご飯なんて……」

「それなら査定額をチョイチョイ水増ししてくれれば」

「何言ってるんですか!?クビになっちゃいますよ!」

「はいはい」

「はぁ〜〜」

「あ、そうだ!それならさ、今日仕事入ってないんでしょ?買い物でもしながら街を案内してくれる?昨日来たばっかりでさ」

「勿論です!私でよければ」

「君がいいんだよ」

「……なんですかそれは」


ジト目ありがとうございます。


「言ってみたかったセリフNo.4位の」

「レイジさんが言うと様になるのでやめてください」

「レイジでいいよ。敬語も無しで」

「じゃあ私もカグヤでいいです。敬語は……元々使ってませんでたね」

「言ってみたかったセリフ」

「はいはい。いきましょ……行こ、レイジ」


可愛すぎる……これが幸せか。

今日はリア充陽キャに擬態して街歩きだ。








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