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進化論~レベル式進化説  作者: ツタンカーメン
3章 迷宮都市
33/65

33 異世界の住民変人ばっかり

「たのもーーー!!」

「はいはぁーい、あ゛~………」


随分とだるそうな声だ。欠伸しながら……接客業なのに……大丈夫か?

ガサゴソ音を立てて出てきたのは、黒髪に黒目の男。

黒猫や黒狼の獣人などを除けば黒目黒髪は非常に珍しい。顔立ちもアジア系で、日本人にしか見えない。


「はぃ〜ご要件は……」

「宿泊だが……」

「はーい、5部屋しかないんでゆっくりみて決めてください~。全部屋空いてるんで」



案内された部屋は、全て和室だった。間取りや照明のタイプがそれぞれ微妙に異なる。

案内されている間、和室の様々なルールを聞かされた。知っているものもあれば知らないものまで、かなり細かく説明される。


「じゃあ一部屋目で」

「はーい」


取り敢えず2日分の金を払い、鍵を貰って1度宿を出る。

2日にしたのは宿の質を見極める為だ。

教えて貰ったおすすめの服屋や武器屋へ向かう為だ。

街に入って、1度足を洗った後からは足裏をマジックハンドで覆っているので足は汚れていないがいい加減靴を履きたい。





「お、ここか……」


冒険者風の男から貴族っぽい老婦人、平民顔の平民っぽい平民まで幅広い客層をターゲットにした巨大な店だ。


「いらっしゃいませ〜」


従業員も中々の数だ。


「すまない。初めて来たんだが、どこに何があるか教えてくれ」

「はい。1階では普段着を取り扱っております。左から子供服、男性服、女性服のスペースになっております。2階ではスーツ等の正装を揃えております。こちらは子供用はございませんので、子供用の正装は少々お高くなりますがオーダーメイドのみとなっております。三階は靴と帽子のフロアですね。因みに、2階で販売しております服は、全て帽子から靴まで1式セットでお売りしております。代金の精算は階段横のカウンターで行います」

「そうか……因みに、おれはアイテムボックス系のスキルを持っているんだが、その手の窃盗に対する対策はあるのか?見たところ、商品に特殊な細工を施してあるようにも見えないが。いや、別に盗む気は無いけどね。やってみる前に聞いてみたとかじゃないから」

「アイテムボックス系のスキルで収納するための条件に、大き過ぎないこと、重過ぎないこと、つまり容量をオーバーしないことともう1つ、所有権の有無がございます。これらの商品はご購入いただくまでは所有権が店側にございますので、窃盗の心配はございません……しないでくださいよ?」

「いや、しねぇよ」

「それに、ここにあるのは言ってはアレですがただの布の塊です。なんの能力もついていないので、厳重に警戒するに値しない……まあ、数はあるのですが。衣類の魔道具は全て、本店の方でのみ販売致しておりますが、そちらでは常時厳戒警備体制が敷かれています……盗まないでくださいよ?」

「しつこいようだがしねぇよ。いやしつこくもないわ。執拗(しつこ)いのあんただったわ。ていうか、こんなでかい店が支店か……凄いな」

「いえいえ……盗まないでくださいよ?」

「しつこいなお前なぁ。いつまでやんだそれ?何時までやる気だ?なぁ」

「本日はご来店ありがとうございます。当店は……」

「今更か!もういいよ。1回本店の方行くから場所教えろ」

「はい。この店の地下1階となっております」

「本店!いや、それならまとめて言えよ!」

「こちらが本店ですので」

「いえいえってそういう意味だったのね!謙遜してるのかと思ったけどな!」

「では、ご案内します」

「ああ……さっさと頼むぜほんとに」


途中、近くにあった服を手に取ってみたが、収納出来ない。

どうやら本当に所有権という曖昧な基準が採用されているようだ。

金塊を道に落とせば所有権を失う。反対に、本人の意思で何らかの考えに基づき、自信が所有するうまい棒を森に置けば(・・・)、彼もしくは彼女以外の何人たりとも、持ち去ることは出来てもアイテムボックス系のスキルで収納することは出来ない。


「少々お待ちください」


地下1階と言ったのに、何故かトイレで待たされている。

西洋風でどう見ても15~17世紀くらいの文明しか持たないような世界に、21世紀の日本と同じ様なトイレがあるのは魔法の恩恵か、はたまた過去の異世界人の知識によるものなのだろうか。


男子トイレの個室、いや、掃除用具入れか。

半開きの扉の奥で何やらゴソゴソと……

何をしているのか気になるが、今はトイレそのものの方が気になる。

何しろ異世界初トイレだ。下水道が通っているのだろうか。それともスライムを用いた洗浄法か。


「お待たせしました」

「おいちょっと待て」


いつの間にか掃除用具入れはエレベーターになっていた。


「はい?」

「え、掃除用具入れは?」

「こちらになっております」


カシャン、シャクン……


「こちら流し、モップ、雑巾、スッポンにトイレットペーパーまで1式、セットで大銀貨2枚と大変お安くなっております」

「あ、モップまで付いてるんだね、へぇ~……って、なると思った?もういいよ、さっさと行こうよ地下に」

「あ、こちら1階から3階までしか繋がっておりませんが……」

「じゃあなんで出したんだよ!いいからさっさと案内しろよ!」

「はい。ではどうぞ」

「上行きじゃねぇのかよ」


どうぞどうぞと手招きしながらエレベーターに乗り込む店員に殺意を覚えながらも後を追う。


「はいでは、下へ参りまぁーす」

「………………」


ウィーーン……ウィーーン……ウィーーン……


「はい、では行きましょう!」


エレベーターの奥の壁がスライドし、地下へと続く真っ暗な階段の入口が現れた。


「どうぞ」

「……」


ようやく着いた。高校の教室くらいの広さの部屋に、手袋やコート、帽子や鞄などが、展示されている。


「ようこそ、我が店へ。店長のラッセルと申します。本日は、何をお探しで?」

「お前、店長だったのかよ……」

「はい。ここでは限られたお客様相手に衣類の魔道具を提供させて頂いております」

「限られた…なら何故おれを?」

「商人のカンと職人と気紛れです」

「へぇ……じゃあ早速だが、履物を見せてくれ」

「はい。こちらになります。こちらでは限られたお客様に……」

「強調しなくていいから」


革靴、ブーツ、サンダル、ヒール……全て魔道具だ、


「お客さん和服が似合うから、この一本下駄なんか似合うんじゃないですか」

「いや、そんなもん履いてたら絶対戦闘中にバランス崩れるだろ」

「そこをなんとか……正直な話、全然売れなくて悲しいんです。丹精込めて作った傑作なのに…」

「あ、店長が作ったんだこれ」

「そうなんです。友達にヒモトの出身がいましてね、彼の為に和服とか草履とか作ってたんですけど、これは要らないって…」

「安くって、具体的には?まあ買わないですけどね」


因みに性能は[敏捷強化][体力強化][頑丈][清潔]という4つの能力が付与されている。

迷宮産では無い、人工のアイテムの中では最高峰と言っていいだろう。


「もう銅貨3枚とかで……」

「安っす!買お」


店長……そこまで切羽詰まっていたのか。


「これはね、売れないとはいえ我が子みたいなもんだから。もうほかの作品なんてどうでもいい!……ってくらいに大事だから。むしろ売れないでいいんだけど、それはそれで悲しいっていうか…やっぱり道具として産み落としたんだから使ってあげたいわけですよ」

「急にタメ口になったな。買うっていってるけど」

「でも、何処の馬の骨ともしれない奴の臭い足に踏まれるなんて我慢ならないじゃないですか。わたくしはね、ちゃんと自分が認めた人に買っていただきたいとね、そのように思っているわけですよ。それをね、──」

「買うって」

「……認めると言いましてもね、とりあえず人柄と足の匂いを──」

「やっぱりやめ……」

「お買い上げありがとうございます」

「…………予想外に安かったから他のも買いたいんだが……そうだな、顔を隠すための道具は?」

「それでしたら、帽子のコーナーにございます。行きましょう」


一応、目をつけていた革の靴を手に取って移動する。


一言に帽子と言っても色々な種類がある。まあ、帽子をかぶるのは正装の時か日射しよけのためなので、あまり売れてはいないらしい。


「こちらですね、仮面やアイマスク、包帯などございますが」

「仮面がいいな。アイマスクってそれ、何も見えないだろ」

「内側から見れば透過するタイプもございますが」

「いや、いい」

「そうですか。お客さん和服が似合うから、この包帯なんていいと思ったんですが」

「なんだそれ」


黒地に赤の文字を書き連ねた包帯。何かの封印用だろうか。


「こちら、何の能力も付与されておりませんので、タダで差し上げます」

「なんでここに置いてあるんだそんなものが……要らないって」

「ではこうしましょう。これを貰っていただけるなら、そして試着していただけるなら次の商品を1割引で提供致します」

「貰おう」


なんて商売上手な……いや、明らかに損してるだけじゃないか。

なんて商売下手な……


「では早速試着を」

「はいはい……これでいいだろ」

「やはり非常に似合う……ありがとうございます」

「ああ。んじゃこの仮面買うから……一割引よろしく」


最も日本と違い、値札がついていないので本当に1割引いたかは分からない。

上階の服には値札がついていたので、ここの品の代金は要交渉、ということだろう。


選んだのは白一色で、口元を除いた顔全体を覆う仮面。

能力は[吸着]のみ。魔力を流せば固定具無しで顔面にフィットするというものだ。

能力が他の仮面全てに共通して付与されている[吸着]のみということなので、安そうだから選んだ。

どちらも下級の付与術で、容量も食わなければ失敗も少ない量産可能なものだ。このくらいなら何処ででも買えるだろう。


「えー、そうですね、銀貨18枚ってところですかね」


コイツが店長で大丈夫だろうか。

ここの金の単位は分からない、というかないのかもしれないが、数え方は大〇貨と、端数の〇貨がある場合

〇貨幣に換算して〇貨何枚、と言う。端数がないならそのまま大〇貨何枚、と数える。

つまり銅貨2枚と大銅貨3枚なら銅貨32枚、大銀貨2枚なら大銀貨2枚と言うわけだ。


「大丈夫かこの店は」


……と、言う言葉を飲み込んで、店長をまるっと無視することに決める


「あの、声に出ておりますが」

「これは失敬……」


形勢逆転だな、と心で呟いて少し虚しくなる。オッサンと戯れて何が楽しいんだ。


「あれ、なんか心がこもっていない感じがすr」

「髪の色を変える道具はあるか?」

「ありますよ。こちらの腕輪ですが、ただいま黒と白しか在庫がございません一日に3分間髪の色を変えることが出来る道具となっておりますが、如何せん魔力消費が大きいのであまり実用的ではありません」

「白を貰う」


魔力を流せば髪色を変えることが出来る。ただし、制限時間3分。一日に1度のみ使用可能……か。


「1つ大銀貨2枚となります。2つ目以降は銀貨15枚で結構です」


コイツ複数個買わせようとしてやがる。


「……3つ買おう」

「ありがとうございます。他にも──────」



終始会話のペースを握られ、時々主導権を取り返すことに成功するが、それさえこの男の意のままに操られているのではないかとさえ思ってしまう。

いっその事魔眼を使うか、ということまで真剣に検討するぐらいには。

これが話術ってやつなのかな、なんて思いながら、次々と商品を購入してしまう。

勧められるものも購入を躊躇するような高価なものではなく、まあいいか、まあいいかと流されてしまう。



「はい。えー、以上11点で、端数を切り捨てて金貨32枚になります。次いらした時は白金貨がポンポン飛ぶようなものを買っていただけると嬉しいです。オーダーメイドも承っております。専属契約した選りすぐりの職人達と私が、あなたのご希望の品をそれ相応の値段で提供させていただきます」

「ところで端数を切り捨てると例の下駄は無料になった気がするな」

「そうですね、あの下駄も、本来大金貨数枚位はするでしょうな」


だからそれが無料になったんだって。


かなり質のいい素材を使い、腕のいい職人が作った下駄に、高度な付与がいくつもつけている。

仮面についている低級のものとは違い、付与出来る職人が限られている上、付与出来る対象も限られてくるのだ。

錬金術には詳しくないが、粗悪品にはちょっとしか付与出来ないが、高品質になればなるほどたくさん付与出来る、との事だ。


おれはきっと、またここへ来る。あいつもきっとそれが分かっている。

1階で出会ったのが偶然か必然かは分からないが、上客の匂いを嗅ぎとったのだろう。

今日の買い物は、この店の美点を強調するように誘導していのだと思う。


(武器屋……の前にご飯かな。腹も減ったしあとはスライムとウルフを召喚したいから1度街の外に……ついでに依頼でも受けて行くか)


帰りの階段を探すが、忽然と消えていた。


「……ん?」

「お帰りはこちらからどうぞ」


レジカウンターの横。店長が開けた、関係者以外立ち入り禁止っぽい雰囲気の扉の向こうは…………


「なるほど、あっちは入店専よ──」

「お、いたいた。作って欲しい魔道具が……」


外。まだ見慣れないフォリオの街並みのこちら側で、ちょうど冒険者っぽい革鎧のオッサンが店へ入ろうとしていた。

こっちから出入りできるんじゃねぇか。

そもそもフロア移動用の階段を隠してる理由がわからん。


「いや、最初からこっちで通せよ」

「それはできません」

「お?取り込み中だったか。すまねぇな」


トイレのくだりは必要だったのだろうか。

坂になっているので、地下1階から階段はなしで直接外に出られるようだ。


「またのお越しを〜」

「こっちから入っていいんだよな?」

「トイレからが宜しければ、お好きにどうぞ」


なんか面倒臭い店へ入っちゃったな。

やっぱり来るの止めようかな。






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