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進化論~レベル式進化説  作者: ツタンカーメン
2章 りざーどまん
28/65

28 アンデッドは経験値

執事が一匹執事が2匹………執事が349匹執事が350匹。


「……そろそろか。」


木々生い茂る暗い森で、小さな呟きが風に溶ける。

不意に、ボコボコと地面が蠢き……骨の手が、腐った手が、あるいは足が突き出される。

あるものは掌で地面を押し、あるものは土を掻いて。

偽りの命が姿を現した。


「ふっふっふ………」


現れた死者達は、獲物を求めて周囲を睨め回す。


「はっはっは…ははははははっ!!…ぁ」


おっと、雲が流れて明るくなってしまった。

闇夜の晩に暗躍する黒幕の雰囲気を楽しんでいたのに。

今日は満月。最もアンデッドが力を増す日。


さあわがめいやくにしたがいわがてきを。


呟いてみるが、効果はない。

カタカタ音を立てながらスケルトンが、ぐじゅぐじゅ地面を踏みしめてゾンビが押し寄せる。


アンデッド作成。

ネクロマンサー系のスキル無しでそれをなす手段はただ一つ。

それは、言うまでもなく自然発生に頼るもの。


死体は魔素を出す。過剰に魔素を含んだものを食べると体を壊すので、人間が食べるには、ある程度干して魔素をぬく必要がある。

魔素を放出し切った死体は、再び魔素を吸収する。ある程度原型を留め、尚且つ魔法的に清められていない死体は、アンデッドとなる。


通常その過程は数週間から数ヶ月かけて行われる。

放出は1、2日で終わるが、吸収がとてつもなく遅いからだ。


ただ、ネクロマンサー系のスキルを持っていなくてもアンデッド化を促進する方法はある。

まず、魔素を吸い取る。

次に、ありったけの魔力を放出する。放出された魔力は膨大な量の魔素となり、周囲を覆う。

その魔素を適当にグイグイ押せば、アンデッド化は一気に進む。


欠点その一。消費魔力がヤヴァイ。

億?兆?数値がバグって確認は出来ないが。


欠点その二。産み出されたアンデッドは支配下にない。

ネクロマンサーではないので。

だが問題ない。もとより狙いは戦うことなのだ。


しかし、

利点その一。死んだはずの魔物から新たに経験値を得られる。


利点その二。多くのアンデッドを放置すれば、アンデッドの自然発生数が増える。


彼らの持つ魔力は、アンデッド化に最適だ。少量で、尚且つ短時間でアンデッドが産まれる。

ただしその場合、器となる死体が必要。

さらに、魔素から生まれるアンデッドも増えるのだ。

アンデッドと亜人系の魔物は、見つけたら見つけた分だけ殺すことが推奨される。増殖率が高いからだ。


さらに、多くの魔物がそうであるように、巨大過ぎる群れが出来れば、上位種が生まれる。


「さて、今日もこのまま放置して…と、いきたいところだが。最近森の浅い所でも結構見かけるからなぁ…ちょっと間引くか。そろそろ群れを纏められる上位種ちゃんが欲しいなぁ」


その後、夜の森に「だらっしゃあぁー!!」だとか「ぅおらぁ!」という叫び声が響き渡った。

主にリザードマン語で。



「……では、定例会議を始めます。司会は私、秘書のケルンが務めさせていただきます」


巨大な円卓を囲むように座った10人の男女。時計の長針が真上を向くと同時に1人が立ち上がった。


「ついに来ましたねー」

「はい。長かったです…非常に長かった」

「では、始めるとしよう…通算第500回、冒険者ギルドフォリオ支部定例会議を…な」

「いやあ、ギルドマスター。記念すべき500回目。月に一度、即ち41年間と8ヶ月の歳月を経て、ようやくやって参りました。平穏とは程遠い40年間、ようやくの500回。何か思う所もあると思います。一言、お願いできますか?」

「えー、そうですね。やはり、辛い事、悲しい事…共に立ち向かい、共に乗り越えた仲間がいたからこそ。支え続けてくれたからこそ、成し遂げられたんだなと、心から感謝しています。そして、ひとつだけ言えること…それは、人を強くするのは、愛。ということです。親愛、友愛、恋愛………あと、………気合…試合…」

「続けます」


都市フォリオ。通称『迷宮都市』。

冒険者ギルドの一室。

重厚な筋肉の鎧に身を包んだエルフが、 力無く椅子に座り込み、ギシィと音がして頑丈そうな木の椅子が震えた。


「まず今月の冒険者登録数から報告させていただきます。お手元の資料をご覧下さい。…登録希望者は105名、新規登録者は67名。新人冒険者の死亡率を考慮すると、登録試験の難度調整、新規登録者への講義、登録から一定期間の討伐依頼(クエスト)の禁止策を求める声も上がっております。が、今のところ前述のような制度を設ける予定はありません。」

「んー、確かに新人冒険者の死亡率は問題だよねぇ。登録者…先月ば52人?だっけ?増えたのはいいけど死んだら意味無いもんねー」

「新人は力量を見誤って格上にホイホイ挑むからのう」

「ゴブリン討伐でも、油断すれば簡単に死ぬ。新人はそこら辺の意識がたりんからな」

「……ん。討伐クエは、初めての時と慣れてきた頃が1番危険」

「かと言ってランクが強さを表す訳では無い。強者が新規登録することもあれば、堅実に依頼をこなし、戦闘面以外の点での評価で高ランクに上がる者もいる」


新人冒険者の死亡率の高さ。何時になっても解決しない、ギルド幹部の頭を悩ませ続ける難題の一つである。


「その議題、毎月出てるけど…」

「500回出ています」

「色々試しはしたのですが。先程述べた案も、過去に似たようなものがいくつも出ましたが、結果的に全て廃止されました」

「死ぬやつは死ぬ、生きるやつは生きる。それでいいんじゃないかなもう」

「そうですね。では、次の議題ですが」

「あ、ほんとにそれでいいんだ」

「まずはここ1ヶ月の冒険者たちのランク変動です。除名が3名Dランクへの昇格が12名。Cランクへの昇格が3名、降格が1名。Bランクへの昇格が1名です。パーティでは、Dランクへの昇格が2、Cランクへの昇格が1。」

「AとかSは出てねぇかぁ」

「Sは4年前以降出ていませんね。Aは数ヶ月前に1人。AはともかくSは才あるものが努力して努力して、ようやく辿り着ける強さの極地。そう簡単には出ませんよ。S級認定は政府への報告義務も有りますしね」

「ありゃぁ大変だったなぁ。皆面倒臭いから行きたくないってゴネて……」


会議は続く。時計の長針が何周か周り、日が高く登り切った頃、ようやく本題に入った。


(面倒くさ……定例会議……)

「……では、最後の議題ですが。およそ2年前からタリスの森で不自然に発生しているアンデッド、及び『謎の魔力的なトラップ』、関係性は不明ですが、魔物の出現数の低下。調査に言った冒険者によると、『浅層から中層まで調査したが、"何も分からない"』とのことで──」

「トラップは初耳なんだが?具体的にどんなものだ?」

「仕掛けられた空間を通ると体が2つに別れるとか。迷宮のピアノ線トラップに近いですが、不可視の上生半可な魔力感知では存在すら看破出来ないようです」

「そりゃまた……厄介というかなんというか」

「鉄壁のギリルさんの時は斬れはしなかったが『身体強化の上魔力を込めた鎧に傷がついた』そうです。氷瀑さんの警告で『直ぐに止まったがそのまま行ってたらヤバかった』と」

「え、それもう立ち入り禁止にするしかなくね」

「2年前と言えば、あの森の盗賊達が姿を決した後ですね」

「皇女殿下を襲った奴は魔物にやられたと聞いたが」

「黒いリザードマンですね。彼は人間に友好的で念話によるコミュニケーションが可能らしいですが、真偽は不明」

「…ん。会ってみたいね」


会議は続く。

一欠片の手掛かりも無い以上、あまり真剣な議論にならなかったのは仕方がない。


「よっしゃぁぁぁぁい!」


意図形態もだいぶ慣れてきた。

細く、丈夫にという無理難題のせいで同時に出せる数も操れる数も1桁前半で燻っているが。

全力で作り全力で維持しているものを2本、木々の間にかけている。

休憩中や睡眠中に、時々経験値が入ってくるのはそのおかげ。

太さや張力等、自由自在に用途に適した糸を出せる。

今までの剣や槍に使っていた魔力が塵芥に思えるほどの魔力を使用するわ制御が大変極まりないわで散々な目にあったが、その便利さ、強さは他を寄せ付けない。

どうやら細かい物を作る事や材質、性質に手を加える事が超絶魔力消費の原因らしい。

だが、創造と維持に手一杯でも十分だ。


全速力で何も無い空間を駆け抜ける。何も無いように見える場所で1度身を屈め、ゴロッと転がった勢いを利用して再び駆け出す。

背後にオークの群れを引連れて。

数歩歩いた所で止まって、残心。まだ倒していないが。

ぷごぷご賑やかな豚顔野郎の体に線が走りずり落ちる。


「げ。。」

「グォォァォォォァッッ!」


索敵範囲に入ったとおもったら、次の瞬間には茂みを引き潰し、木々をなぎ倒して目の前に。

タイラントグリズリー。


「あ……」


記憶の中で1度、殺された。

命が1つしかなかった記憶の中で、最初で最後の命を奪われた。


「おおおおおおっっっしゃぁぁぁぁああ!!」


もちろん殺す。死者の尊厳を踏み躙る邪法でアンデッドに堕として、経験値をいただく。

そもそもおれは、君達に尊厳など認めない。

敵として現れた以上は。


「げ……」


(あれー、おっかしーなー。森の奥にいるはずのアンデッドがこっち来てるぞー?)


移動速度は非常に遅い。が、この分だと5分後にはここを通る。


(……ん?てことは、森の奥からここまで1日くらいかかったんじゃね?)


5分後。鍛え抜かれた聴覚が、『フハハハハッ我こそが不死族の頂点にして世界を統べるもの!』という声を捉えた瞬間、混迷を極めた乱戦が始まった。



使用制限:身体強化→あり。無属性魔法→『糸』のみ。その他スキル→なし。ただし、1度目の死以降は解禁。







【経験値を226588獲得しました】

【Lv.197→Lv.200】

【限界レベルに到達しました】

【規定値以上の魔素が検出されました】

【進化します】

【進化先:エンシェントハイリザードマンエンペラー 不死龍ノ王(ノーライフキング) 龍魔人】


湖の淵で膝をつき、全身に水を掛ける。

こびり付いたゾンビの腐肉や匂いを洗い流すためだ。

ハイの次が古代で高位で皇帝ってどういうことだとか、いきなりアンデッドって何故、と問い質したい気持ちを抑えて龍魔人を選択する。未知の種族ではあるが、消去法で残ったのだからしょうがない。

本当によろしいですか、という問いにはいと答えると、例の霧が……


シュヴヴヴヴウウウウゥゥゥ!!!!


中華料理店でお馴染みの騒音と共に、周りが見えなくなるほどの霧に包まれた。


鍛え抜かれた痛覚耐性を貫いて。


『進化についての考察と推測

その一。進化はレベルが種族限界に達した時発生する。

その二。何故か霧が出る。

その三。取得済みのスキルや称号は残る。特定の種族にしか使えないものや相反する存在については不明。

その四。戦闘中は進化できない??

その五。新たな種族に創り出せる??進化は、無限にできる??

その六。大幅に体の構造が変わるような進化は、激痛を伴う。』


激痛が意識を遥か彼方へ吹き飛ばした。


【ご愁傷様です】

(うっせぇぇええええ!!ぁぁああ!!あ、湖……)


ぼちゃん。


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