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進化論~レベル式進化説  作者: ツタンカーメン
2章 りざーどまん
27/65

27 マジックハンドに頼りきりもよくないと思うんです

三日目の朝。

この村を出ることにした。

道行く人々に別れを告げて歩くが、そんな…と言ってうずくまったり号泣したりはするものの、もっと居てくれと言うものはいない。大人に限れば。

村長いわく『使徒様のご意向に逆らうなど…』

ただの魔物にここまで心服するとは。解せぬ。



そんな訳で、さようなら。別れを告げて


「ちょっと待ったァァ!!」

《チワ…騎士の長か。》

「今ちわわと言おうとしたか?」


ちわーーっす!って言おうとしたんだよ、という言葉を飲み込んで、言った。


《どうしたチワワ》


ムキーーと唸る。

からかいがいのあるやつだ。

一悶着あったが、要件は聞き出せた。


「黒いリザードマン…お前の事だな、たぶん。調査依頼が出てるんだよ」

《そうか。じゃあな》

「ああ。気を付けて行って来い。…………じゃねぇよ!調査依頼が出てるんだって!」

《具体的には?》

「住処、食料、行動範囲、行動理念、強さ、弱点、特殊能力、魔法適性、人間に害が有るか否か、とか……大体100項目くらいだな。ここまで多いのは珍しい。冒険者ギルドではなく、騎士団に依頼が来るのもな。あと、最後の方に可能なら捕獲、あるいはテイムをし……ヒィ!!!怒るなよ!私の考えじゃないんだよ!!」

《捕獲………するか?》

「しません!!助けてぇー!」

《んじゃテイムは?》

「しません!絶対しません!じっちゃんの名に懸けて!!」

《色々アウト……いや、大丈夫か。ここなら》

「待て!!殺すのか!?止めろ!」

《煩いぞー。下郎》


なんだあれはー、と背後を指差し、振り向いた瞬間に転移する。


「おい、何も無いぞ………あれ?」



よし。レベル上げだ。

効率を優先して魔法を解禁するか、体術や剣術の修練のために封印するか。

出会う敵全てをマジックハンドで叩き潰せば効率はいいだろう。ただしその場合、一体一体から得られる経験値は減少するだろう。

マジックハンドの殲滅力を考慮しても、『多く倒せる』効率と『取得経験値を減らさない』という効率……どちらをとるべきかといえば後者だろう。


強力な武器やスキルに頼った『有利』は、取得経験値を減少させる。

しかし、武器を持たない、魔力を使わない等の縛りを課せば、その『不利』によって取得経験値は増加する。

鉄の剣を使うより石の剣。石の剣より素手。万全な状態の素手より状態異常時の素手。

不利になればなるほど経験値の増え分は大きい。


まずは、身体強化も魔法も無しで闘おう。アクティブ系のスキルも使わない。

常時発動するものに関しては仕方が無いので存分に使おう。



森を歩く。

たったそれだけの事がこれ程心細いとは。

どこから敵が飛び出してくるかわからない。今も後ろで剣を振り上げているのかもしれない。


ひゅん、と音がする。

ばっっ!と振り向く。

ゴチン!!


(うおぅ……なんだ!?なにが……)


頭に強烈な痛み。目の前がチカチカする。


(投石か)


ガサガサと茂みを押し分けて現れたのは、コボルトの群れ。

Eランク。亜人系の魔物で、群れる習性がある。手先が器用で罠を作る。

数は15。いや、多分もっと居る。見える範囲では15。

囲まれると辛い。木では不安だ。壁を背にしたい所だがそんなものは無い。

飛び道具が来る。その隙に近接戦闘員が来る。

当たればダメージはでかい。脳が揺れて立てなくなるかもしれない。脳出血が起こるかもしれない。

石ならいいが、短剣だったら?矢だったら?当たればそれこそ、一撃死する可能性もある。

狙撃は一方向のみから?否。多方向同時波状攻撃に決まっている。

撃ち落とす?避ける?

必然、大きな隙となる。

斜線上に別のコボルトを…ダメだ。ここは森。三次元的に散開していると見るのが妥当だろう。

それに、矢や石は銃弾と違い放物線を描く。

1対多、か。

Eランクの魔物が群れただけでこれだ。


ステータス上では、彼ら全員の合計値を軽く上回るだろう。

群れというひとつの生物に、ステータス上は負けていない。

負けているのは手数と技術(わざ)

おれが便利魔法で補い、依存していたものだ。

思えば今までの敵は全てマジックハンドで屠ってきた。


数の暴力とその強さ、連携の脅威、それに単身で対処する技の存在。


ならば、自分も数を満たそう。従魔の群れを率いて。

ならば、自分も仲間をつくろう。奴隷の方が好都合か。

ならば、自分も学ぼう。技を。武を。


せっかくの転生。せっかくの2度目。

好きな事をして好きな風に生きると決めた。

そのために必要なものは数え切れないほどあるが、その全てを代替できるものがある。


戦闘能力。


権力も知力も財力etc........全ての『力』とは戦闘に関する能力の低さを補うものでしかない。

支配できないから組織の力を使う。

太刀打ちできないなら工夫をする。

奪えないから買う。


人倫や道徳を抜きに見れば、暴力ほど純粋な通貨はない。


五感を極限まで研ぎ澄ませ、敵の位置を探る。


葉擦れの音、弓弦の音、呼吸音、声。


投擲された石や矢の位置、方向、速度は……?


耳を凝らせば、風を切る音がある。

方向…速度…距離…


(………ダメだ。全くわからん)


そもそも素人の手に負える状況ではない。

1度死んだらマジックハンドで蹂躙する、と決めて。


「おぉぉぉぉぉおお……らぁぁっ!!!!」


戦い始める。

動き続けることで命中精度を落とし、群れの内部で暴れることで誤射を恐れての狙撃の躊躇、もしくは誤射による敵戦力の低下を図る。

無茶な扱いで剣はすぐにダメになった。

倒した敵の尾のを奪い、投げる。地面を転がって矢を避け、石を拾って投げる。

不用意に接近しすぎた一匹の首根っこを引っつかみ、背負い投げの要領で反対側の敵に叩きつける。

瞬間、矢が飛んでくる――問題ない。背負った状態のコボルトで受けきれる。

矢を防いでくれた盾と、巻き込まれた2匹にトドメを刺す。

喉を掻っ切る?頭を潰す?否だ。そんな悠長な事をしていると命が3つあっても足りない。


踏みつけ。


首を踏めば首が折れる。首が折れればコボルトの生命力では生きられない。

腹を踏めば内臓が破裂し、死なない迄も闘うことは出来ない。

が、この世界には回復系のスキルや魔法があるので油断は禁物。

足を踏み砕いても手を砕いてもいい。何もしないより遥かにマシだ。


そういえば、柔道か何かの競技でで地面に背を着いたら1本となる理由で、『実戦では直後に踏みつけがくる。そしたら戦闘不能になる』……的な理由があった、ハズ。

漫画の知識なので信憑性は微妙だが、この様子を見ればわりかし的を射たものかもしれない。


3匹のコボルトが同時に飛びかかってくる。


他と比べて体格もいいし装備も上等。レベルが高い個体か、上位種だろう。

鑑定?しません。


先程倒した雑魚ならば左右の1太刀で2匹を瞬殺し、余裕を持って3匹目を対処できるが…

無理だな。瞬殺は無理だ。

武器は右手に長剣、左手に短剣。

3匹全ての攻撃を同時に止めることは出来ない。避けるか、退がるか。


(―――あ゛あん?)


背後に一匹。血塗れた長剣の刀身に写るそいつは、既にナタを振り上げている。

回避不可。


確信した。

ああ、やっぱりおれは、ピンチで成長するタイプだ。


だって、退屈で平凡な日常の中で、何かを為そうなんて思わねーーもん。

モチベあげるには刺激がいるよなぁ。


バックステップで振り上げられたナタの内側に入り、前のコボルトの脚、踏み出した方の膝に短剣を投げる。

つんのめったところにちょうど、ナタが吸い込まれ。

頭から口元までが、2つに裂ける。

左右からの剣と斧には、横からちょいちょいと力を加えてやれば互いに火花を散らしてぶつかり合う。

手の痺れで得物を落としたコボルト2匹の死が確定した。


よく見て対処する。対処法はある程度パターン化して体で覚える。


逃げるコボルトはどうしよう。


「ははははははっ!!あははははっ!!」


なんだか可笑しくて、なにがそんなに可笑しいかわからなくて笑いが込み上げる。

全く痛みを感じないが、全身の生傷は鈍い痛みを脳に伝えていることだろう。

アドレナリンが切れたらまた感じるようになる。

その前に、もう少し狩りをしよう。

食べる為でも生きる為でもなく、求めるままに。


悪を討つ行為は善で、魔物は悪なのだからおれは善だ。

俺のような例外があるかも知れない。人間を襲わない魔物がいるかもしれない。


だからなんだ。

それがどうした。


信じられるか?『私は人を襲いません』――

――信じない。信じられない。

もし居たとしても、本当に襲わないのかも分からなければどれがそうで既に殺した中にいるかいないかさえ分からない。


だから仕方ない。殺してしまっても。

そう割り切らなければやっていけない。

魔物を殺す。これは善。


善を為す欲求に自制心は要らない。


悪ってのはこうやって産まれるのだろう。

各々が信じる正義、善悪についての見解の相違が悪を生む。


【Lv.46→Lv.49】


最大レベルは幾らだろう。100か、150か、200か。1000なんてことは無いだろう。





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