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進化論~レベル式進化説  作者: ツタンカーメン
2章 りざーどまん
24/65

24 盗賊再び(非同一盗賊)

結局寝れなかった。そろそろ睡眠耐性スキルでも習得しそうなほど眠い。


(………狩りでもするか。おい、ホブゴブリンの………えっと、名前は?)

《ありません。名は野良の魔物にとって力の証、知性の証であるが故に。我は自ら名乗ることも名をさずけられる事もいたしておりませぬ》

(じゃあね呼びにくいしおれがつける。性別は?あと、魔法属性は?)

《雄、火でございます。魔法は習得しておりませんが》

(そっか、じゃあホムラね。魔法も練習しろ、脳筋。あと、ダンジョンで戦った時思ったけどお前と臭い。部下も臭い。俺の配下になるなら体はちゃんと洗え。従魔空間内でそういったことは出来るのか?)

《臭くないですぞ、我は。従魔空間は文字通り空間で、外部から隔絶されてはいますが内部で魔法を使うことも草木を育てる事も可能です………なんか我が知ってる従魔空間と違う…気も…致しますが…》


【ホブゴブリン種、ユニークモンスター(テイム済)をホムラと命名しますか?】


はい。


【命名:ホムラ。魔力を対価に対象に名を授けます】


臭くない、だとかそんなはずない、などとボソボソとしゃべり続けるホムラとの念話を切ったところで、最初の用事を思い出した。


(召喚、ホムラ)


《なんでございましょう。主》

(狩りしてくるから、その間こいつを守ってやれ。手ぇ出すなよ。そのくらいの自制心はあるな?)

《勿論でございます。主の獲物に手を出すなど》

(獲物じゃないんだけど……まあいいや。そういやゴブリンって雌もいるだろ。なんで人間の女攫うんだ?)

《?さあ、何故でしょうか……人間の雌でもゴブリンの女でも子を為せることに変わりはないのですが》


ゴブリンの雌、人間の女。

人間の雌、ゴブリンの女。


こうして会話をしてはいるが、やはりホムラとは根本的に種が違う。種が違えば、何もかもが違う。

種が違うというのに、何故意思疎通ができるのか。

種が違うというのに、何故ゴブリンは人間と子を為せるのか。そうしてできた子は、何故ゴブリンとして生まれるのか。


《或いは、そう在るように創造(つく)られたからなのかもしれませんな》


その言葉は、おそらく奇妙に核心をついていた。

生物学的にでもなく、物理学的にでもなく。

哲学的?宗教的?魔法的?そのどれとも違う、いわば神話的な考え方。


(世界)が違えば、何もかもが違う。

どれほど似通っていても、同じ進化の系譜にあるものも、それらは同じでは無い。

個人差だとか、個体差という言葉で誤魔化せない程の差がある両者を、同じく分類出来ないという意を込めて他種と表現する。


おれは今、魔物(ハイリザードマン)の身だ。

魔物と人間の差。

人と猿………?

その程度の差ではない。

他種族への変化(進化)を幾度繰り返せば、おれは人間になれるだろうか。


(……いや、こんなファンタジー世界なら、案外直ぐに……)


《時に主よ。臭い我らに護衛など本当に任せて良いものでしょうか。こ奴もいやがるのでは?なんと言っても、臭いですからな。我は》

(体洗え)


しっかり根に持ってやがる………。

ホムラはなんというか、どこか掴みどころのないキャラをしている。時々口調変わるし。


《主も大概でござるよ》

(ござる?)

《我のは使い分け、対して主はただのごった混ぜなキャラかと》

(そんなことなくね?)

《あの雌との会話と我との会話では口調が全然違うでは無いですか》

(あれは、ほら、初対面の人とはとりあえず敬語とかそういう系の奴だから。)


つまり我には心を許しておられると……!?ををを……


今度こそ念話を切って狩りに向かった。



「ふぁ……あれ?どこ……ここ」

《森の洞窟だ。ようやく起きたか》

「あ…」

《起きたなら食え。フォレストベアーの肉だ。食い終わったらここを出るぞ》


フォレストベアーの肉。調味料の類は無かったので丸焼きにし、大きな葉にのせたものだ。

大きめのスイカ位の大きささだが、内部までじっくり火はとおっている。

ひぅ……殺される…と呟きながら涙目で肉を口に運ぶタリア……………もしかして、多すぎたのだろうか。


《おい》

「ひゃい!?食べますよ!?全部!!余裕です。こんなの」

《多ければ残してよいぞ。残ったら配下のゴブリンに喰わせるからな》

「え?大丈夫ですよ!食べます!全部食べますから!!(喰わせる!?つまりこれは、残せば殺すということ…っ!!)」


試されているとでも思っているのだろうか。本当に変な女だ。


《無理せずとも………あ、お前ベジタリアンだったな……すまん。今野草でも取ってくるゆえ暫し待て》

「ドジタリアンですよ!?いや、認めてるワケじゃないけど!」


だんだんと話し方が『長く生きた高位の魔物が話す人語いめーじ』ぽくなってきているのは気になるが、久しぶりに人と喋ったからテンションが天元突破しているだけだと思いたい。


結局、タリアは半分ほど食べてギブアップした。


《では行くぞ》

「はいです………うぷ…」

《さっさと歩け。おれは今異様なほど眠い。さっさと送り届けて寝たいのだ》

「……どうして?どうしてあなたは私を殺さないばかりか、護衛に食事の用意までしてくれ……くださるのですか?」

《…おれはな》


人間に、為りたいのだ。


そういった時のタリアの表情は見物だった。目を見開いて驚き、眉を顰めて思案したかと思えば無表情に。


「人間に……なる?」

《ああ》

「そんな事が……できると?」

《どうだろうな。できぬとは思わんが》

「いやいやッ……!」

《毎年毎年……新種の魔物がみつかるだろう?新たな進化を為した個体が毎年見つかる。魔物の進化先……規定の数種だけでは無い。可能性は無限だ。ならば、その中に1つ………人間、或いは人間を騙ることの出来るものが在っても良いだろう?》

「でも…でも、そんな、前代未聞です」

《ならばおれが初めの1人だな》

「進化は……どうすれば、できるのですか」

《それは、―――を――ることで―――なるのだ》

「??なんですか?」

《――を、――だ》


【警告。禁忌教典に抵触する内容です】

【対象:人族・タリア】

【伝達不可】

【伝達を許可出来ません】

【人間に魔物のレベルおよび進化についての情報を与えることは出来ません】

【御了承ください】


は??……何故?


【回答不可】


(ん?お前、いつの間に話しかけたら答えてくれるようになったんだ?)


【ダンジョンクリア時に、十分な熟練度が確認されましたので、機能を拡張しました】


あ、そう………ではなくて、伝えられないだと?そういう制約が存在するのか?

この世界の全ての会話を見張る、絶対的な制約が。


《そうだな……強くなる事だ。それが進化を誘う》

「強く……」

《その種の中でも強さを極めた時、さらなる成長への道が開かれる》


それっぽいことを言っているが、ようはレベルだ。伝わらないとは思うが。


《強くなるには、経験を積むことだ。強敵と戦い――ことが我等を強くする。》


殺す、はダメか。そこまでいえば経験値を稼いでレベル上げすると言っているようなものだしな。



「それでは答えになっていません。戦うなら別に人間でも良いはず。なぜ…………あ、この坂を登りきれば見えてきます。私の村ですよ」


おかしい。ドジっ子キャラはどこへ行った。適当なことを言っておけば納得すると思っていたのだが。


「一日ぶりだぁ……みんな、心配してくれてるかな~」

《…………ん?》


風に乗って流れる喧騒。賑やかな村だ。すこし、賑やかすぎる。

一体何人いるんだろう。目を閉じ、魔力の感知で生命体を探査する。

220人程度の村。村としては小さい方だ。


《……おい》

「はい?」

《お前の村というのは……もしかしなくとも、あれの事だな?》

「私にはまだ見えませんが…方角的に、おそらく今御覧になっているのが私の村です」


ふむ。

ふむふむ。


《お前の村……襲われているようだが》




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