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進化論~レベル式進化説  作者: ツタンカーメン
2章 りざーどまん
20/65

20 経験値ボーナス系盗賊

マジックスピアを数十本出現させ、おれ命名広範囲殲滅魔法〈ホーミングスピア〉を撃ち込む。

流石にこの数を濃縮し、それを維持して着弾と同時に破裂させられるほどの精密魔力操作は会得していないが、目標に向かって飛ぶだけならば十分に可能。

生き残ったのは10名に満たなかった。


「は!?………んだよおい、なんだ、コイツ……?」

「リザードマン、いやハイリザードマンか?それにしては体色が.........」

「まさか、ユニークか」


防御出来た数人の盗賊は、瞬時に戦闘態勢を整えた。ボサボサの髪、無精髭に覆われた薄汚い顔、ろくに洗ってもいなさそうな黒ずんだ手に比べて防具や剣は傷が目立つもののよく手入れされている。

元は冒険者か騎士だったのだろう。

迷い無く、澱みない連携で斬りかかってくる4名のおっさん盗賊を濃縮マジックスピアで貫くと、じりじりと下がりながら隊長格の盗賊が呟いた。


「槍を生み出す特殊能力……?聞いたことがないが厄介だな………おい!逃げるぞ。ダミル、バーカー、フール、魔術と矢で牽制しろ!アフォは荷台の女の鎖を解け!囮にす………ッ!?」


地面を蹴って急接近し、背後に回り込んで攻撃する。

一瞬で視線が追いついてきたので、殴るのを諦め、拳を引いて殴りつける動作と共に、足元からマジックスピアを放つ。

バックステップし、盗賊の頭は背後に控えていた槍に貫かれた。

残りはホーミングスピアのごり押しで退治する。


(やっぱり、ろくな戦いにならないな…せっかく対人戦闘訓練が出来ると思ったのに)


因みに、(……身体強化ッ)とか念じちゃったけど、ほぼ使わなかった。


無属性魔法をつかったのは、1人も取り逃さない為だ。


【経験値を426684獲得しました】

【Lv.7→Lv.27】


(は??)


42万。単純計算で1人4000~5000くらいか。


(なるほど、これは魔物が人間を襲うわけだ)


群れているだけの雑魚を100殺しただけで40万を超える経験値を得てしまった。

ちら、と、囚われた女達を見る。

巻かれた布に光を奪われ、盗賊共の断末魔とマジックスピアの着弾音だけを聞かされ、恐怖の極みに震えている。

ああ、確かハイリザードマンが居る、と言うことも聞いたんだったか。拘束されていつ殺されるかと気が気でないのだろう。頼むから絶望して自殺、なんてことはしないでくれ。

目隠しをされているが、おれやおれの魔法を見られたかもしれない。4人なら経験値が15000程度は得られるだろう。

殺すか、とは悩まなかった。

それは自分の正義に反するから。


洞窟に入り、盗賊の遺物を漁る。幅10メートル、長さ100メートルほどの横穴の左右に、石を削っただけの部屋がいくつも連なり、その最奥では、カーテンのように天井から垂らされた布で通路が区切られている。そこからさらに何部屋か過ぎたところに、ようやく見つけた。

宝物庫だ。金銀に輝く硬貨やマジックアイテム。選別する必要は無い。全て収納した。

その隣は魔道具を設置した簡易的なトイレや風呂の部屋。心なしかカーテンの手前に在ったどのトイレより若干豪華で清潔に保たれている。カーテンのこちら側は幹部用スペースと言ったところだろう。綺麗なのは単純に使用人数の差と下っ端の媚びや忠誠からだろう。

科学文化のない異世界は、こうやって生活水準を高めているのか。

異世界というと超絶不衛生な病原菌の温床、中世ヨーロッパのようなイメージを持っていたが、魔法の力は本当に偉大だ。あと歴代勇者の異世界産の知識。

盗賊でもトイレと風呂は作るのか。もっと野生的なイメージがあったが、一応人間の範疇ではあるのだろう。

更に隣の部屋では、虚ろな目をした女が5人鎖に繋がれていた。ヤリ部屋だ。胸くそ悪い。

目を見れば分かるが、こいつらはもう世界を諦めている。

尊厳を奪われた人生を嘆き、絶望し、生を諦めているくせに舌を噛む度胸もない。

やめて、ころしてとうわ言のように呟く生ける屍を、せめて苦しまないよう一太刀で首を飛ばす。


【経験値を4438獲得しました】


5人で4000程度。相当弱っていたのだろう。


洞窟の入口に戻り、盗賊の身ぐるみを剥ぐ。武器、防具、マジックアイテムを、折れていようと穴が空いていようと収納する。

馬車は荷台ごと収納し、残るは女4人が乗る馬車と盗賊の死体だけ。


(あーーー、どうすっかな、コレ)


こんな汚い死体を収納する気は無いし、かといって放置するとアンデッドになる。

アンデッドが大量発生すると、この心地よい魔素が汚染される……まあ、それは別にいいけど。ふと、馬の蹄の音が遠くに聞こえた。

この貴族令嬢を救出に来たのだろう。先に救出したのだから死体の処理を丸投げしても文句は言われまい。

最後にドレスの女の背後に忍び寄っていた猫型魔物チーピューマの脳天にマジックスピアをぶち込んで、おれは背を向けて森へ入った。

マジックスピアが掠り、ずり落ちた目隠しに気づかぬまま。


(ああ、せっかくいい住処を見つけたのに……………)


盗賊の頭から奪った銀の腕輪を指で回しながら、迫る蹄の音から逃げるように足を早めた。





私、オルトリア帝国第4皇女セシリア・オルトリアは、魔物氾濫(スタンピード)の起こった迷宮の近郊にある都市へ慰問へ行きました。

『皇女殿下、ようこそいらっしゃいました』で始まった慰問は、普段なかなか外に出られない私にとって全てが新鮮なものでした。

四六時中護衛が張り付いていたのは鬱陶しかったけれど、街の人は皆いい人でした。

そして、慰問に来たというのに商会や貴族の方、冒険者の方に色々贈り物を貰ってしまいました。


「これは……オーガの群れ、ですか。迂回できませんね。皇女殿下、決して馬車からお出にならぬよう」


わたしの護衛は、第四とはいえ皇女、つまり皇族の護衛ですので手練揃いです。冒険者ランクで言うとAが数名、Bが数名と言った所でしょうか。

世の中にはSランクを超える人間が、100人程度はいると言います。

その多くは秘境や魔境に住む一族だとか、獣人やエルフが9割とか言われていますが、そもそも100人という数字すら信憑性に欠けるので考える意味はあまりありません。

とはいえ人間の強さは、同じ種族でも天と地ほどの差がある事もあるので彼等でも相手が相手なら瞬殺されることもあるでしょう。

この世界には1人で大国間の戦争を終わらせる者もいれば、ゴブリンとタイマンで負ける人だっているんです。

昔父上が教えてくれました。強過ぎる人は、表舞台から姿を消すと。

単身で国1つ潰せるような存在が何十人かおり、あまり我が物顔で暴れ過ぎると目を付けられるのだとか。

もっとも、歴史の裏では、常にそういった最強達が人知れず暗躍しているらしいですが。

これも、信憑性はありません。


「ジェネラルがいるな………めんどくさい」


どうやらオーガジェネラルがいるようですね。まあ多分勝てるでしょう。

めんどくさい、と言ったのはオーガ系統の魔物は硬くて一撃が非常に重いからでしょう。

カーテンを少しだけ上げて、外の様子を盗み見ます。馬車からは出ていないので大丈夫でしょう。


オーガ。体長2メートルほどの鬼の魔物。

オーガジェネラル。オーガの上位種。体長3メートル。

オーガ系統の魔物の攻撃パターンは主に手に持つ武器を剛腕に任せて振り回すだけ。

ただし、武器以外の攻撃、例えばパンチや蹴り噛みつきや突進等でさえ非常に強力なので、一撃でも喰らうとそのダメージが致命的な隙を生み出す。

彼等には、剣や槍よりも魔法の方が効果的である。


聞くと観るでは大違いです。恐ろしい異形が、そこには居ました。

護衛騎士達は果敢に立ち向かっています。

そういえば、私の護衛には魔法が本職の人が少なかったです。

オーガ討伐のあとは、剣や鎧が酷く傷つく事もあるという事ぐらいは私も知っています。

B級上位のオーガジェネラルと、C級上位のオーガのが10匹くらい。

Aランク数名とBランク数名の冒険者では少し辛いかも知れません。

騎士のみなさんは大丈夫でしょうか。



オーガを討伐し終えました。騎士の皆さんは、素材を剥ぎ取って死体を焼いた頃でしょう。

しばらく進むと、賊が現れました。

70位の、多すぎワロタな一団でした。

この盗賊団はもしかして500人くらいいるのでしょうか。そうだとすればちょっとした軍隊です。

数に押され、騎士達は少しずつ数を減らしていきます。

中でも数人の連携がすざまじく、どんどん劣勢になっていきます。Aランク級が数人います。

護衛隊長の指示で、騎士のひとりが囲みを抜けて街へと馬をとばして行きました。

騎士達は命を賭して時間を稼いでくれましたが、救援は間に合わなかったようです。私とお付の侍女は目隠しと手枷をつけられました。


首領っぽい話し方の賊が、上玉じゃね?とかなんか貴族っぽかったね、とか言っています。

手下達は、よっお頭!だとか超絶技巧派がどうとか、親分天才!!なんてはやしたてています。

首領は、よせやいお前ら!!へへ、なんて言っていますが満更でもなさそうです。


というか、誰か皇家の紋章の入った馬車を襲ってそれに気付いていないことに誰も気づいていない事に気づけよ。馬鹿ばっかりじゃねぇか。

オホン、バカしかいないようですわね。

オーガの群れと山賊に襲われて壊滅する護衛団では、本職の殺し屋とか悪の組織に狙われたらひとたまりもありません。

もし生きて帰れたら、専属騎士が欲しいです。

お兄様にもお姉様にもSランクを超える実力者が専属騎士として着いています。もちろんお父様とお母様にも着いています。

死んでしまった護衛騎士達に心の中で謝りながらそんな事を考えていると、馬車が止まりました。

きっとこれから想像を絶する苦しみが待っているのでしょう。



次の瞬間、トス、トス、という謎の音が響きました。


「は!?………んだよおい、なんだ、コイツ……?」

「リザードマン、いやハイリザードマンか?それにしては体色が.........」

「まさか、ユニークか」


??この森にリザードマンが生息しているという情報はありませんでした。はぐれでしょうか。ユニーク??本当だとしたら大変です。


賊の声はすぐに聞こえなくなりました。

Aランク級数名を含む、おそらく100を超えるであろう盗賊を瞬殺。


………私はどうなってしまうのでしょうか。舌を噛みましょうか。


しばらくすると、遠くから馬の蹄が地面を打つ音が聞こえてきました。

早く来て、と願うと同時にきたら死んでしまうのでは、と思ってしまいます。

ここには今、恐ろしい魔物がいるのですから。


恐怖の瞬間はなかなかやってきません。

シュッ!!と風切り音とともに耳元を何かが掠めました。思わず漏れそうになる声と色々を抑えて、ギュッと目を瞑りました。

恐る恐る目を開けると、背中を向けて歩いていく漆黒のリザードマンと、頭の横で揺らめく半透明の......なんでしょう、これは??

半透明の何かはフッと消え、どさ、という音とともに何かが落ちました。

見ると、猫のような姿の魔物です。

まさか、いえ、きっとあのリザードマンが助けてくださったのでしょう。


「皇女殿下!!ご無事で!!賊に攫われたと……これは!?」

「ええ……私もよくわからないのだけど、誰かが助けてくださったようです」


リザードマンの事は言わない方がいいでしょう。捜索と討伐なんて話になれば向こうも迷惑でしょうしこちらも犠牲が増えるだけです。


「盗賊達がユニークのリザードマン、と言っていました」

「本当ですか!?」

(サリィィィィィイイイッッ!)

「殿下の目隠しは外れていたようですが……そのリザードマンを見ましたか?」

「え、ええ。見ましたわ。どなたかの従魔でしょう。首にスカーフを巻いていました」


私の思惑は秒で消し飛びましたが、咄嗟の嘘でなんとかフォローできたでしょうか。


「とにかく、金品や馬車は盗まれたようですが、殿下が無事で何よりです!!」


ん?……そうだ!!馬車と荷物!!

振り返ると、車輪の跡は忽然と途切れ、そこには何もありません。

ヒュウ、と吹いた風が木の葉を1枚運んできます。


(はっ!?現実逃避している場合じゃありません!?)


ふと、去り際にリザードマンが銀の腕輪を指で回していたのを思いだしました。


(………………………ぇえ……………………)







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