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進化論~レベル式進化説  作者: ツタンカーメン
1章 始まりの迷宮編
18/65

18 哀しみの転移

ドサッ………


崩れ落ちる血狼王を、おれはどこか冷めた目で見つめていることだろう。

こんなものか。王級のユニークでも、この程度か。


(はぁ…~)


初めは楽しかった。敵の強さが、嬉しかった。

完成された連携とはこれほどまでに脅威となるのかと。

だが、つまらない結末だった。だって瞬殺だったし。

自分がどの程度強いのかは分かった。

自分は強い。

それは嬉しいことで、楽しいことだから、気分は良い。


終わり方が問題だった。

おれは無属性魔法に限界を感じた。


成長の阻害という、限界を。


おれの使う無属性魔法は、あまりに強い。

それを使えば、都市1つ滅ぼすような魔物にも勝てる。

ネームドでユニークな王級と将軍級が2体。討伐にはAランククラスの冒険者パーティが幾つか、もしくはSランク冒険者が必要だろう。


それは紛れも無く自分の力で、アイテムやドーピングによらない純粋な力なのだから、その力が強いことに不満はない。

むしろ嬉しい。


しかし、それに頼りきってしまうと俺はもう成長出来ない気がする。


(これはあまり使わない方針でいこう………咄嗟の時に使えるように、訓練はする。レベル上げの時も使う。でも強敵と戦う時は温存する。死にそうになったら使う……これでいこう)


【経験値を46678獲得しました】

【Lv.37→Lv.66】

【ユニークモンスターの討伐を確認しました】

【討伐したユニークモンスター:キングウルフ種を召喚可能になりました】

【付与されたネーム:血狼王が解除されます】

【それに伴いステータスが減少します】

【現時点での召喚は不可能です】

【階層ボスを撃破しました】

【宝箱が出現します】

【ダンジョンボスを撃破しました】

【宝箱が出現します】

【迷宮:ちゅーとりあるダンジョンを攻略しました】

【経験値を189934獲得しました】

【Lv.66→Lv.100】

【レベル上限に到達しました】

【余った経験値を貯蓄します】

【規定値以上の魔素が検出されました】

【進化が可能です】

【進化先:ハイリザードマン 黒闇蜥蜴 リトルドラゴン ダークベビードラゴン 】


(ハイリザードマン)


【ハイリザードマンに進化しますか?】


(はい。リザードマン)


【ハイリザードマンに進化します】

【貯蔵経験値を使用ます】

【Lv.1→Lv.7】

【迷宮攻略者にレアスキルが授与されます】

【①転移②アイテムボックス③ステータス増加(大)】

【1つ選んでください】

【制限時間は1分です】

【制限時間をオーバーした場合、ランダム抽選により決定します】

【まあどうせ[世界の声]持ってない人には聞こえないんですけどね】

【聞こえてないから実質ランダムなんですけどね】


(あ、[世界の声]熟練度上がった)


ハイリザードマンは身長170センチ位の二足歩行の蜥蜴だった。


(うぉぉをを……歩きにく!!)


二足歩行とはこうも難しいことなのか…

おっと、早く選ばないと。


アイテムボックスと収納は別物なのだろうか。


(転移で)


【レアスキル:[転移]を授与します】

【称号:攻略者を獲得しました】

【階層ボス撃破により、迷宮入口前へ繋がる転移陣が開設されました】


そしてようやくアナウンスは止まった。

ゆっくりと宝箱に近づき、自分が匍匐前進をしていた事に気付く。


(こりゃ重症だなぁ)


こんな進化が戦闘中に起こったら……と考えたところで、最近戦うことばっかり考えてることに気が付いた。


目の前の宝箱。ボスから出たし、開けても大丈夫だろうか。

正直言って宝箱にはいい思い出がない。

1層で初めて見つけた時は馬鹿みたいに舞い上がっては中のアイテムで俺TUEEEE出来んじゃね?おれこそが世界の中心とかおれの時代来たわ〜ww、なんて思っていたらトラップで。

その後数回出てきた宝箱も、全てトラップか空箱、1つはミミックだった。

宝箱を見る度に開けるか開けまいか、脳内会議を開くのはもう疲れた。


1番最近の宝箱では、周りを10分くらい回りながら


(まあどうせ罠だし?期待してないし?でも一応開けてあげようみたいな?万が一、いや億が一罠じゃなかったらあれだし。あーハイハイ開けるよー。どんなトラップでしょうねー、いや、知ってんだよ、トラップってことはね。でもほら、虎穴に入らずんば虎子を得ずとかって言うし?)

(でも、今までの全部中身無しかトラップだったんだから。なんて言うか確率的にさ、当たる確率が高くなってるんじゃない?)

(ないない。でもそこまで言うなら一応開けるよ。戦闘準備してるし。なんたって絶対トラップだからねコレ。ビンビン感じるよトラップの気配。まあトラップの種類を知るっていうのも大事だしね。むしろ全種類コンプリートしたいっていうか、新しいトラップを探してるっていうワクワクが止まらないっていうか)


なんて考えていた。


色々理由をつけているが本当は開けたかったのだ。毎回毎回、次こそ出るかもと思っていた。

これもどうせトラップなんだとか、トラップ上等!ていうかむしろトラップがいいよ。うん。なんて思っていたのは上げて落とされるより低いところから落とされる方が(心の)ダメージが少ないからだ。

ついでに言うと物欲センサーも意識していた。


目の前に鎮座する宝箱は、金と銀に彩られ、今までのどの宝箱より美しかった。


(おれはもう────自分にウソは吐けない)


自分を騙せない。偽れない。


開けたいんだ────────宝箱を。



久しぶりの二足歩行で、ふらつきながらも宝箱の蓋に手をかける。

直に触る宝箱は、こんな感触がするのか。こんなに美しいものが、トラップなはずが無い。


自分の手で作業をするのは初めてだ。


ここまでき来てトラップでしたは流石にやめて欲しい。

真のボスはミミックでしたとかいうオチは期待していない。


音もなく空いた金色の箱の底では、濃紺の布が「罠じゃないよ〜」とアピールしている。

銀の方からは謎の皮袋。


(アイテムだ.......)


思わずほろりと涙を流す。

これが感動で泣くという現象か。

痛みで泣いた事はあっても、感動や喜びで泣いたことは無い。

初めての嬉し涙は、泣いているというのに気持ちの昂りを増幅し、どこか心地よいものだった。


手を伸ばしかけて、寸前で止める。


(…ハッ!?まだ罠じゃないと決まったわけでは…そうだ。きっと手を入れた瞬間に噛み千切られるに違いない)


マジックハンドの素を噴出し、バリアだろうが槍だろうが瞬きする間に形成できるように備えておく。


そろりそろりと伸ばした手は何にも阻まれることなく、布を掴んだ。

流れる水のような触り心地だった。広げてみると、どうやら布ではなく服だったようだ。


-----

NO NAME

服。形状を選択してください。①和服②洋服③漢服④民族衣装(アケイ族、ハツル族、ケアン族、マサイ族……)

性別を選択してください 男/女

[自動修復][快適気温][形状変化(小)][認識阻害]

[使用者固定]

使用者:レイジ

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無限水袋

魔力を込めると水を生み出す。(水魔法適性がなくても使用可能)

[水生成][水温調節]

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(使用者固定!?あと、どうせなら無限ほうじ茶袋が良かったな)


初代勇者の聖剣に代表される使用者固定アイテムには、付喪精霊と呼ばれる精霊が宿っている。

そのアイテムは、無くしても自動で使用者の元に戻る。歴代の勇者たちが持っていたアイテムだ。

使用者が死んだ時どうなるのかは知られていない。

歴代勇者や超高位の冒険者等、使用者固定アイテムを所持していたという逸話や伝説を持つものはただの1人も死に際が知られておらず、そのアイテムが見つかったという記録も皆無だからである。


と、アレンの記憶にあった。


ここ数百年の間、新たにダンジョンが攻略されたという記録は無いので、この超希少アイテムがダンジョンクリアで確定ドロップなのか、ランダムもしくは他に条件があるのかは分からない。

分からないがこれからも迷宮に潜ろう、と思うレイジだった。

レアスキルは確定で貰える上、3択で提示されるのだから潜らないという選択肢はない。


服のカスタムは必要になったらするという事にして収納し、二足歩行の身体に慣れる為一度浅い層で狩りをする。

数日経って完全に身体が馴染んだ頃、迷宮を出る為、転移陣へ向かった。


残念ながらボスはリポップしていなかった。

二足歩行になっても消えなかった[壁面歩行]で意味もなく壁を駆け上がって転移人の上に降り立つハイリザードマン。


【ちゅーとりあるダンジョンから転移します】

【転移先は1層、迷宮入口前です】

【迷宮の入口が見つかりません】

【それっぽい転移先を探します】

【検索終了】

【同座標の地上に転移します】

【ちゅーとりあるダンジョンは消滅します】

【ちゅーとりあるダンジョン産の全アイテムが消失(ロスト)します】

【名無しの服と無限水袋は消失(ロスト)されません】

【転移を開始します】

【ご武運を】


そんな声を聴きながら、俺の視界は無に染まった。


その胸中を占めるのはただ一つの感情。


(アイテェェェェエエエッ厶!!!........!!!......)


多い分には困らないという考えで日々手間を惜しまず採取した薬草、苔、石、吸魔結晶、魔石や戦利品の武具の消失。


(やめてぇえぇぇー………)


悲哀。


儚く消え去ろうとする努力の結晶に、届くはずも無い手を伸ばす。

あんまりだ。大したものはなかったとはいえ、長い間所有していて、そろそろ愛着が湧いてきたものを奪うなんて。


どんなゴミみたいなものでも、長い間持てば愛着だってわくだろう。

小学校の時に何故か集めた数年前の時刻表とか、財布に入れ続けてきた去年の学生証とか。


最近で言えば、3年くらい使い古したお気に入りのシャーペンを奪われた様な悲しみと共に、始まりの迷宮攻略はようやく幕を閉じた。




この前バスでボールペンを亡くしました

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