17 ダンジョンクリア的な
ボスは倒した。
これ以上ここに留まる意味もないので階段を探そう。
時折出会うスライムに収納していた武器をぶち込んで、先を急ぐ。
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NO NAME
デュアルスライム HP 74/74
称号:魔法使い ダンジョンモンスター
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会敵と同時に、瞬時に水と風の槍を形成するスライム。
(いや、そういうのいいから)
攻撃が来る前に、濃縮マジックスピアで核を貫いた。
スペックを見る限り、実はこいつがボスだったのかもしれない。
だが、この程度なら既に不要だ。こいつ程度では到底強敵たり得ない。
(ボスって称号に出ないのかな)
レイジの迷宮攻略はまだまだ続く。
先の丸い矢、寸止めされる吊り天井、クッションが敷かれた落とし穴。
辺り一面に解毒草の生えた通路に毒の霧、毒蛾、毒蛇、毒蜘蛛。
ゴーレムの大軍。
レアモンスター(戦闘力はさほど変わらないが経験値が高い変異種。ただし俊敏で逃げ足が早い)の群れ。
トラップへの対処、ピンポイントで急所を射抜く練習、様々な状態異常への対処と耐性、レベル上げ、防御が極端に高い魔物の倒し方、魔法使い、ヒーラー、戦士、剣士、弓使い等の対パーティ戦。
鑑定に頼ることの危険性、水上、水中での戦闘、気配を断つ暗殺者への対処、指揮官が様々な部隊を指揮する軍の攻略、城攻め。
様々なコンセプトを持つ階層をクリアして。
15層。
階段を降りたおれを待ち構えていたのは、巨大な扉。それ以外の道はない。
直感で理解する。最終層だと。
むしろこれで最終層じゃなかったらなんなんだ。
動かせるか不安だったが、扉は自動ドアだったようだ。
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レイジ
黒蜥蜴
Lv.37
HP3827/3827
MP???/???
skills
=normal:[痛覚耐性][魔法耐性][状態異常耐性][瞬足][気配察知][危機察知][壁面歩行]
=rare:[鑑定][収納][真眼]
=legend:[世界の声][スケープゴート]
魔法適性:無
称号:転生者 ネームドモンスター 魔素の王 機動要塞
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血狼王
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NO NAME
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NO NAME
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HPや称号の鑑定はしない。種族は見ればわかる。
先入観を産み、思考を曇らせるからだ。
鑑定が通らない敵が居るかもしれない。ステータスを隠蔽、改竄する魔物も居る。
鑑定ありきの戦いでは、どこかでほつれが生じるだろう。
それに何より、未知なる存在と戦う方が楽しい。
極細の水レーザーが飛んでくるのを、真眼が捉えた。
認識能力の超強化、魔力での空間把握、正確な軌道の予測がスキルによって昇華される。
鑑定の欠点、視界の制限。
宙に浮くように鑑定対象の前に現れる文字列は視界を狭め死角を増やす。
放ったのは血狼王。
初めて見たが、ネームドか。
雰囲気からして、ユニークモンスターだろうか。
見ないけど。
種族はキングウルフだろう。
見ないけど。
取り巻きはどう見てもジェネラルですね。
この3匹に攻められればちょっとした都市でも壊滅するぞ。
(とはいえ、今までの育成プランからして絶対に勝てないという訳ではないんだろうなぁ)
この迷宮は、一言で言えばチュートリアルだ。
作ったのはあのオカマ神だろうか。
地球の神であるはずなのに異世界に干渉してレジェンドスキルと住民の記憶を届けてきたのだ。
迷宮くらい作れるだろう。
もしくはそのお友達とか。
(ああ.....そういえ強そうな敵に会うのっていつ以来だろう)
楽しみだ。こいつを倒せば更なる力が手に入る。
マナバリアが水レーザーを弾く。そのことに一瞬、意識が吸い込まれる。視線を戻した時、既に、血狼王は消えていた。
しかし、視界から消えた程度では俺の目は欺けない。
真眼で高速で右に回り込む狼をはっきり認識する。
真っ直ぐ突進して来た2体のジェネラルウルフの至近距離からの魔法、身体強化と魔力を込めた爪での攻撃を二重バリアで受け止め、濃縮ソードで切り裂く。
強靭な毛皮に阻まれ、深手にはならない。
バリアに血狼王の爪が叩き込まれる。正確には爪から伸びた赤黒いブレードが。
マナハンドとマジックハンドには、限界があった。
それは濃縮率。ある程度まで濃縮すれば、それ以上は魔力を受け入れなくなるのだ。
制御に問題は無い。魔力量にも問題は無い。
それでできないのだから、そういう性質だと考えるしかない。
この3体の攻撃なら、どれをとっても下手を打てばバリアを貫通する。今までとは違い、避ける必要がある戦いだ。
(.....遅いな)
収納から剣を取り出す。確か骸骨騎士が使っていたロングソードだ。
剣に魔力を通し、ついでにマジックソードで覆う。
それを6本。
現時点で、思い通りの起動で同時操作できる最大本数だ。
出し惜しみはしない。こいつらには自分の全力がどのくらい強いかを測る壁になってもらおう。
"黒蜥蜴"は、おそらくユニークモンスターや変異種等の極一部のモンスターが辿る、既存のどれとも違う新たな進化。
未発見かもしれない種族なので強さが分からない。
だがおれは、自分の強さが知りたいのだ。
強い敵を倒すという経験が、おれを強くする。
同時に彼等は強さの指標でもある。
ユニークかつネームドのキングウルフ、そして配下のジェネラルウルフが2体。
その器を満たすだけの強さを持つかどうか。
彼等はその問いにイエスかノーしか答えない。
だから、強さを確認するには、強い敵が必要なのだ。
魔王のいない時代の勇者と魔王を倒した勇者の違いはそこだ。
その小さな違いが、人気、憧憬、果ては民意までに影響する。
戦乱の時代の英傑は世界の宝だが、戦なき世界の英雄は、彼もしくは彼女がどれほど強くとも、ただの穀潰しにすぎない。
強さの確認は、ただの自己満足ではない。"認められる"為に必要なのだ。
爪撃を躱し、雨あられと撃ち込まれる水上弾を跳んで避ける。
マジックハンドで地面を押して飛び上がり、マジックバリアの足場を踏んで更に跳躍。
片方のジェネラルウルフの頭上から濃縮ソードで切りつける。
咄嗟に反応し、頭上へ噛み付くジェネラルの一撃を、足場にしていたマジックバリアが止める。
ボスともう一体は少し離れた場所にいる。2方向から、威力は落ちるが速度が早い矢の魔法が飛んでくる。
だが、それでも遅い。
魔法が届くまでの半秒~数秒の間におれのマジックソードがこいつを殺す。
確実におれが早い。一撃では毛皮に阻まれ倒せないが、その上から二撃、三撃と浴びせれば確実に倒せる。
その行為は完了するまで半秒も要しない。
バリアに顔ドンしたジェネラルウルフの魔力が微かに動く。
魔法か。使うとすれば発動時間が短いもののはず。数発程度なら切り離したバリアでも耐えるだろう。
だが、最初のマジックソードが毛皮を破り、無防備になった首筋に追撃の剣が叩き込まれても、魔法は発動しなかった。
瀕死の重症を置いながらも、魔法の構築は止まらない。
大きく後ろに跳んだジェネラルが放った炎のレーザーが下から振り上げられる。
その左右から繰り出される牙と爪に先程から待機状態になっていた剣を振るう。
レーザーが当たった石の地面が燃えている。天井まで届くほどの火柱だ。
右か、左か……どちらによければいいだろうか。
血狼王は左。
レイジは迷わず右に跳んだ。
魔法を撃ち終わり崩れ落ちたジェネラルウルフにマジックスピアを撃ち込んでトドメを刺す。
連携する味方が居なくなったジェネラルに、6本の剣で猛攻をかける。
王が戻る前に、こいつを殺す。
しかし、何故数の利を捨てるような真似を......
その時、監視していた血狼王の魔力が妙な動きを見せた。
炎の壁ができると同時に、体外に魔力を纏い、炎を無視して一直線に俺へと走ってくる。
3本の剣の操作を放棄して、限界まで濃縮したマジックスピアを作る。
炎を割って、火の化身が姿を現した。
炎の向こうは、気配が読めなかった。気付いたから良かったものの、この不意討ちはかなりきつい。
今後もこの魔法を撃つことを許せば、おれの移動範囲は大幅に制限され、前後左右から襲いくる気配のよめない敵を相手にすることになるだろう。
超高温の炎の鎧。マジックバリアとマナバリア2枚で止まるだろうか。
先程より手数が減り、威力が上がった連携攻撃を受ける。
手の形も槍の形もしていない、物質化しただけの魔力の奔流で血狼王と距離を取る。
流れるような連携が止まった瞬間に、マジックスピアをジェネラルに放つ。
刺さったのは先端の5、6センチ程度。
(十分だ)
わざと暴発するように操作をする。かつてのメタルスライム戦で起きたあの現象。
制御から逃れた魔力が、元の在り方に戻ろうとする。すなわち、濃縮される前の体積へと。
膨張の勢いが、ジェネラルの魔力で押さえ込まれる。拮抗は一瞬で崩れた。
バァン!!!
破裂音と共に膨張した魔力の塊が、内側から首を吹き飛ばした。
(これは……投げナイフ程度の大きさの方が良いか?いやでも、多少は貫通力が必要だし……)
押し寄せる波は、狼の王が纏う魔法の鎧に簡単に砕かれる。
毎秒何万という魔力を放出しているというのに、血狼王は確かに波に抗って近づいてくる。
槍を形成し、撃つ。何本も何本も。
バァンバァン!!
やがて戦いは当然の結末を迎える。
迷宮ボス撃破という輝かしくもどこか虚しい結末を。
血狼王の死という形で、最初の試練は幕を閉じた。




