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進化論~レベル式進化説  作者: ツタンカーメン
1章 始まりの迷宮編
10/65

10 死んだ……フリ?

ホブゴブリンが持ったのは、俺が放り出した武器のひとつの剣だった。


(しまった.....収納するべきだった)


今更悔やんでもどうにもならないので、勝機を見出すべくホブゴブリンの様子を観察する。

見た目は変わっていない。進化した訳では無いようだ。HPは63/82。

『支配』するゴブリンはいないので警戒すべきはコイツだけ。

武器は剣。槍に執着しないあたり、剣術と槍術両方のスキルを持っているのか。

若しくは両方持っていないか、馬鹿なだけかも知れない。きっとそうだ。


対するおれの武器は、短剣、ではなく無属性魔法。

物を動かす魔法。この魔法を念動力(テレキネシス)と呼ぼう。

『意思(非物質)によって、物体(物質)を動かす力』が念動力(テレキネシス)な訳だが、本来非物質である魔力で物を動かしても十分念動力(テレキネシス)と呼べるだろう。

傍から見れば魔力の手....これはマジックハンドでいいや。

マジックハンドは魔力操作が精密になればなるほど感知すら難しくなるだろう。

現時点でも半透明のマジックハンドは、戦闘中に位置を常に確認するのは難しいだろう。

しかし魔力を大量に消費するようで、10000つぎ込んでようやく50~60センチの腕くらいの大きさのものが出来た。

ホブゴブリンからも、短剣が突然宙に浮いたように見えている事だろう。


「グォォォォォァァァァ!!!!!」


ビリビリと空気を震わせるような咆哮とともに、ホブゴブリンが駆け出した。

幾度となく振るわれる剣を避け、短剣やマジックハンドで受け、なんとか傷を負うことなくやり過ごせているが、マジックハンドや短剣で攻撃を止める度に、マジックハンドの体積がゴリゴリ削られていく。

湧き出る魔素を吸い、魔力を回復してマジックハンドを創り出すが、キリがない。

いずれ集中力が切れて終わりだ。

ホブゴブリンの攻撃には、『記憶』にある剣術の動きが所々に見られる。

初見の槍よりは余っ程やりやすいが、この......殺気、か?

直に受けるのが初めてだからか、力量差が大きいからか、尋常じゃないプレッシャーだ。

右からの大振りな剣を潜り、追撃の横なぎを避けて間合いを潰す。

後ろへ飛びながら落ちていた棍棒を手に取って、二本に増えた武器を振り回す。

足を払うため地面スレスレに飛ばした半透明のマジックハンドを飛んでかわされ、いつの間にか拾っていた大小様々の石が投げつけられる。

慌ててマジックハンドを戻して防御するが、既にホブゴブリンは眼前に迫っている。咄嗟にマジックハンドで剣の軌道を修正し..........


(あ、別に1つしか出せないわけじゃない....かな?)


2つ目のマジックハンドが、持ち上げた短剣でホブゴブリンの左腕を切り裂いた。


「ギャォォォォ!!!!!」


叫んで、左手で背後を殴りつけるホブゴブリンを1本目のマジックハンドで左足を払う。

崩れかけた体勢を右手1本でぐるりと側転し、持ち直すと同時に強引に距離をとる。



「グギャ.......」


それは、最も初歩的にして無数の武技の原点。

身体中に魔力を通し、筋力、視力、回復力、耐久力......肉体の機能を底上げする武技。


グギャオル、ギァギ(身体強化)


次の瞬間、突然目の前に現れたホブゴブリンの剣が、マジックハンドの防御ごとおれを吹き飛ばした。


(は.....??おいおい、使えるのか....)


腕側を身体に固定したマジックハンドで地面を押し、それを推進力としてホブゴブリンへ突き進む。

マジックハンドと呼称してはいるが、その形状は自由に変えられる訳で。


針のように尖った魔力の槍が、ホブゴブリンを刺し貫かんと迫る。

剣の形にしなかったのは、単純に作れなかったからだ。

剣の形を取らせるほどの魔力操作が身についていないのだ。


びゅんびゅん飛び回る魔力の槍を躱し、剣を打ち付け、危なげなく対処する。


(じゃあ......2本!!)


飛び回る槍を2本に割り、個別に操る。

左右の手を別々に動かすようなものか。楽なものだ。

昔友達に言ったら驚かれたが。ゲームでも左右の手を別に動かすだろう、と言ったらそれとはちょっと違う、と返された。2本に慣れれば3本、3本に慣れれば4本と増やしていくと、


(え、)


一撃で1本の槍が霧散した。

剣に魔力を流した事で、一撃一撃で削れるマジックハンドの体積が急激に上がった様だ。


(しまった!残りの槍を........)


「ガァァァ!!!!」


地面を踏みつけ、直径2メートル程のクレーターを作る。

それに伴って噴出された魔力が、マジックハンドとの槍......マジックスピアを押し戻し、霧散させた。


(まさか.....魔力を伴った攻撃に弱いのか!!??)


ニヤリと笑ったホブゴブリンは、剣に魔力を流し、大地を蹴って突進した。


正面からぶつけて相殺するのではなく、違う方向の力を加えて剣を流す。

最小限の接触と最小限の回避で攻撃を凌いでいく。


これはマズい。どうしたものか........

湧き出る魔素が、枯渇しつつあった。


(無限、じゃあないのか)




八神零時は、集中力には自信があった。

定期テスト期間は徹夜で18時~6時まで勉強し、テスト中に寝てしまわないように6時~8時まで寝る。

8時に起きて、寝る前に準備していた朝食を食べる。

10分で食べて5分で着替え、鍵と筆箱を鞄に入れて、眠気覚ましのために走って学校へ向かう。

50分のテストを3つ、間に15分休憩を挟んで11時50分に終えると、12時までには学校を出て家に着くのは12時15分。

昼食を食べて5時半まで寝て、シャワー、食事を終えれば大体6時。

次の日のテストの勉強を始める。


友達にはよく、そんなん出来んのお前くらいだ、と言われるが、そもそも1度授業で聞いているのだからテスト勉強なんて本来必要ないんだ。

それなら一夜漬けで復習するほうが効率が良い。どうせ忘れるのだから。


それで2回学ぶことになるのだから、大学受験前の詰め込みは更に楽になるだろう。

流石に演習量命な教科は日々の積み重ねが大事だが。

やると決めたらカラオケボックスでも宿題ができるし、それは連れがアニソンで90点台を連発して喉を潰しても採点画面になった瞬間どこからか演歌を歌う老人の声が漂ってきても変わることは無かった。


星6キャラでもよく負けるようなクエストを、回避に徹して星2キャラ一体で攻略したこともある。

友達に言われて1度やっただけで、終わった後二度としないと心に誓ったことは記憶に新しい。



しかし。

徹夜で勉強、テスト開始まで12時間の時点でノー勉(授業以外で復習をしていない)であるという危機感と、1度でもミスをすれば死ぬ、という危機感は大きく違う。


赤点をとったとしても、進学は諦めなければいけないが、地球、その中でも日本という平和な世界では、たとえ学歴偏重主義が蔓延っていようが人生の選択肢は無数にある。

それらの進路の優劣を決める事はできないが………………彼らは、あるていど尊厳を守って生きていけるだけ幸せなんだろう。少なくとも、この世界の底辺に比べると。

どのルートも、バッドエンドしか選択できなくなるものでは無い。


対して、生きるか死ぬか。

1振り目:dead or alive

そこでaliveを勝ち取ったものには次が待っている。

2振り目:dead or alive


(aliveになる可能性が1より小さいってことは、極限は0なんだよなぁ…....ここで進学校生らしく数学的に考えていくぅー)


おれがdeadを選ばないなら、相手が諦める、もしくは死ぬまで終わらない。



そして、必然の結末が訪れた。


「キュィィィ.....」


ホブゴブリンの手の届かない場所まで逃げる為、壁を登っていたおれの胴に、錆びた剣がするりと潜り込む。


「ゴォォォォォォァァァ!!!!」


勝利の咆哮。


(剣を.....投げたの、か、)


壁に刺さった剣を回収しに歩み寄る"おれの仇"を見ながら、壁に縫い付けられたまま息絶えた。


HP0/57









呪!!!

進化論~レベル式進化説~、これにて完結!!!


皆様最後までお付き合いくださりありがとうございました!!



……………………………………………ウソダヨ?


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