手紙
ウェンデルへ
読んでくれるかわからないけど、とりあえず手紙を書いておきます。
ごめん、私強がってたわ。本当は死ぬのが怖いのに誤魔化すために、ウェンデルのことバカにしたの。ごめんね。
父さんは産まれたときからいなかったけど、母さんはずっと私と同じ病気だった。ツルが育っていくにつれて弱っていって、家から出られなくなる母さんを見てたし、死ぬその瞬間も見たわ。だから死ぬのは何よりも怖いの。
死んだら、私、どうなるのかな?真っ暗な穴に落ちて何も感じないのってどんな気分かしら。少しもわからないわ。
私はツルが育っても、あまり弱らなくて、毎日をもて余していたの。何をしても死がすぐそこで、すべて無意味に感じられたわ。死までの時間を数えるのは、あまりに恐ろしいから時間を埋めたくて、ピーチパイを焼いていたの。
あなたと出会えて良かったわ、少し遅すぎる気もしたけど、あなたのためにピーチパイを作るのは楽しかったわ。
それから、今日もあなたのためにピーチパイを作りたかったけど、間に合いそうにないからレシピを教えとくわね。お母様に作ってもらってね。
メアリより
ウェンデルが2枚目の紙を見るとそこにはピーチパイのレシピとコツが書かれていた。