第三十五話、リルムちゃんは結構考えてる。
リルムの話を聞き、チカは思った。
アリアなら治せるのでは、っと...。
「ねえねえ、アリア。アリアならなおs!?」
「ちょっと黙ってなさい...」
アリアは速攻でチカの背後に回り、口を塞ぐ。
「はぁ...。治せるけど、それを治せる私ってなんなのってなるから治せないのよ」
「むむむ....じゃああの悲しげな表情のリルムどうすっとよ!」
「私はあなたを案内する為に来ているの....ここでエリクサーでしか治せない怪我を負った者を助けたら、他の者に不公平だわ。私が出せるのは一般的に広まっている、回復属性魔法だけよ…。」
アリアはチカの耳の近くで状況を話す。
「そして、このクスラを観光し終わったら、私達の案内は終わりよ。だから私達が神界に帰った後もし、同じような者を見つけたらどうするのよ?」
「そりゃあ、助けるっちゃけど?」
アリアはチカにこれが終わったら神界に戻る事を宣言てチカに問うと、チカがアリアだけに聞こえる声で答える。
「どうやって...?」
「うぐぐぐっ...。アリアの異能を再現して....」
「無理よ。私の異能は神級異能。チカちゃんの異能は同格かそれ以上の者は再現出来ない。」
「うううぅ...」
アリアはチカを問い詰めていく。
「ううっ...じゃあもうよかよ。」
チカは諦めたようだ。
「まあ、傷跡を見せなさい…。ちゃんとした診断くらいはしてあげれるわ。」
「い、いいのだ。どうせ、エリクサーがあれば治るのだ」
「そんな事、言わずに...翼を広げなさい...」
「ガァアアアァ....」
アリアはクロムに診断するつもりのようだが、主のリルムは何やら何かを誤魔化そうとしているようにも見える。そんな主の事も知らずにクロムは翼を広げる。
「......あら...これ、エリクサーいらなくない?」
そして、クロムの翼を見たアリアは言った。
「エリ、エリクサー必要なはずなのだ」
「だってこれ..........ほら?」
リルムは必死に誤魔化すがアリアは回復属性魔法を無詠唱で使い、治してしまう。
「おお、治っとるね!じゃあこれで町から出らんで良かね!!」
チカはそう言ったが、治ったクロムの主、リルムは地面に膝をつき、四つん這いになる。
「もう、終わりなのだああああ.....!!領主になってしまうのだぁ!!」
「えっ?」
「は?」
「どゆこと?」
「ふぁ!?」
...
リルムから話を聞いた一同は疑問の声を浮かべる。
「ううっ....せっかくいい町から出る頃合いだと思ってたのだ....!なんで失敗するのだぁ!?」
「どういう事なん?リルムちゃん?」
「リルムはエリクサーを集めることなどでなく本心から町を出たいと思ってたのだ。このままでは領主にされてしまうのだ...。」
なんとリルムはクロムの翼の怪我を治すためにエリクサーを手に入れる為でなく、領主になりたくないために町から出たいようだ。
「じゃあ、堂々と無言で出れば良かっちゃないと?」
「それだったら、父上に面目なくて合わせる顔が無いのだ。」
どうやら、父親を心配する思いと領主になりたくない思いが対立しているようで、父に領主になりたくない事を正直に伝えたくないようだ。
そしてリルムが選んだのは、父に直接言わず理由を作って町を出ることだったがソレはチカ達に阻止されるのだった。
「じゃあ、あの町の外に出て暴走してたのは偶然じゃなかったのね?」
アリアはリルムに町の外の出会った時のことを言う。
「ソレはたまたまクロムが外で遊んでたら急に暴れ出しただけなのだ」
「ええ?マジなのね?」
「マジなのだ」
「マジなのね....」
アリアはたまたまである事に驚いてもう一度聞いた。
「とりあえず、やってくれたのだ...これからどうすればいいのだ...」
リルムは考えが無駄になり落ち込む。そしてこれ以上考えが浮かばず何をすればいいか分からなくなったようだ。
「正直に言えばいいとよ!」
「でも...」
「とりあえず行ってきっ!」
「でもなのだ....」
チカは悩むリルムを後押しする。
「そのままじゃいっちょん。状況変わらんよ!」
「ふぬぬ....分かったのだ...ちゃんと言うのだ...!」
チカの後押しにリルムに火がついて、踏み出す決心がついたようだ。
「リルムここまで言わせたのだ。もちろん、手伝ってくれるか?」
「よかよっ!」
「そう言ってくれると思ったのだ!リルムと友達になってくれるか?」
「もちろん!」
「よかったのだぁ!」
リルムはチカを巻き込んだため、チカ以外の皆も巻き込まれることになった。
「早速、リルムの家に行くのだ。」
「分かったけん、リルムちゃんも馬車のらん?」
「乗るのだ!」
リルムはクロムから降りた為、チカ達が乗っている馬車に乗り込む。牧場から領主の館は近いため、すぐに付いた。
「ここがリルムの家なのだ!案内するのだ」
リルムは馬車から飛び降り、家のデカい玄関の扉を開けてこちらを向き言った。果たして、リルムの父の領主はどのような者なのだろうか。




